安倍政権は政治とカネの問題噴出でもタカ派路線を邁進する|岡留安則コラム
TABLO / 2015年3月16日 16時0分
元「噂の真相」編集長・岡留安則の編集魂
国会では、政治とカネにまつわるスキャンダルが続発している。第一弾は、西川公也農水大臣で、辞任に追い込まれた。TPPやJA改革という難題を仕切る政治能力に疑問符が付いたのだろう。
しかし、西川大臣の辞任だけではおさまらず、望月義夫環境大臣、上川陽子法相、下村博文文相、就任したばかりの林芳正農水大臣らに続いて、安倍総理や菅義偉官房長官にも波及。民主党代表・岡田克也にも飛び火した。いずれも、国民の税金である補助金を受け取った企業や団体から政治献金を受け取っていた疑惑である。
しかし、政治資金規正法は天下のザル琺として以前から悪名高い法律だ。安倍総理を筆頭として、補助金を受け取った事実は知らなかったとして違法性を否定したり、早々と返金したりして逃げの体制だ。
●自らの首を絞めるような政治資金の法改正は見て見ぬふり
野党からは政治献金の全面禁止の声も出ているが、それが実現する可能性は限りなく低い。自民党内からは、政治はカネがかかるので、全面禁止など不可能という声が多い。当の安倍総理本人も、地球儀を俯瞰すると称する外交で、経済人を引き連れて国策的・営業を続けている。この安倍外交の恩恵を受けて巨額の利益を得た企業からは、安倍政権に対して見返りの献金も提供されるだろう。安倍総理は企業の法人税の減額を提唱しており、企業からの政治献金受け入れに積極的な姿勢を打ち出している。
鼻っから、政治献金の全面禁止など考えていないのだ。この政治とカネという日本政界にはびこる長年の課題は、抜け穴だらけの政治資金規正法を根本的に見直し、厳しい法的規制を強めるしか解決策はない。その事は政治家の多くが理解しているはずだが、自らの首を絞めるような法改正など見て見ぬふりをするしかないのだ。国会でやるべきと判断されている小選挙区の定数是正や議員定数削減もいまだに放置されたままである。自分たちがリスクを負わされるようなことに対してもなるべく先送りしようというのが、政治家という人種の習性なのだ。
それはともかく、国会で政治とカネにまつわる応酬が続く間にも、自衛隊の海外派遣を恒久的に行うための法改正も着々と準備されている。この法案が狙うのは、いつでも戦闘行為を可能にする自衛隊の海外派遣である。連立与党の公明党の平和主義にかすかな期待を寄せる向きもあるが、日々の報道を注視していると、公明党は安倍政権の勢いに押し切られる可能性が強い。まもなく福島第一原発のメルトダウンから4年目を迎えるが、高濃度放射線水の海への流出も続いている。自宅に戻れなくて仮設住宅暮らしを強いられる住民も多い。除染で大量に出た放射性物質の処分のメドもついていない。
廃炉まで40年のスパンで見れば、原発事故の後処理は遅々として進んでいない。にもかかわらず、安倍政権は原発再稼働の方針を打ち出しているのだから、信じがたい政治感覚だ。
その一方、沖縄では県民意志を無視した辺野古新基地建設が着々と進められている。巨大なコンクリートの塊を海中に投下し、サンゴ礁が壊される事態も発生している。反対派の運動に対しても、沖縄防衛局、沖縄県警、海上保安庁の強引なやり口が日常化している。反対運動をリードする沖縄平和運動センターの山城博冶議長を逮捕するなど、政府の強権的な姿勢も強まっている。国会で政治とカネにまつわる論戦が交わされている間にも、安倍政権は自らの政策を確実に進めているのだ。政治とカネの問題が論議されている間隙を縫って、安倍政権によるタカ派路線が着々と進められていることを見過ごしてはいけないということだ。それは、国民もそうだが、メディアのチェックも不可欠という事である。
最後に、最近出た本を一冊紹介しておこう。青木理氏の「ルポ国家権力」(トランスビュー)である。「権力に対峙すること」、「事実を伝えるということ」、「問うべきを問うこと」の三章で構成され、警察、法務・検察、政治家、メディアなどの現状を広範にわたり取り上げている。本のコピーには「批判を拒む権力は必ず腐敗する。」という筆者のスタンスが明確に示されている。おススメの一冊だ。
Written by 岡留安則
Photo by jonathan.leung
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