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自称天才編集者・箕輪厚介氏のセクハラ・パワハラメッセージを解読 女性ライターは必死に抵抗していた|能町みね子

TABLO / 2020年5月22日 8時45分

写真

写真はイメージです。

 

天才編集者が恋愛・性愛じみた関係を求めてきたとき

箕輪厚介がついにボロを出したか。――幻冬舎の自称「天才編集者」・箕輪厚介のセクハラ・パワハラ報道を知ったときの率直な感想は、これだった。私は報道を読んで、箕輪氏本人に対して「やっぱりな!!」という気分になってしまったため、つい流出した彼のひどいFacebookメッセンジャーの文章を茶化すようなことをツイッターに書いてしまった。この点については反省している。茶化してネタにするような話ではなく、これは権力を利用した悪質なハラスメントであった。

決して有名ではないと思われるライター女性Aさんに対し、箕輪氏は原稿を生かすも殺すも可能な有名編集者という立場である。

彼はAさんに対し、敬語すら使っていない。箕輪氏とAさんは仕事を発注・受注する関係であるはずなのに、当たり前のように指導者的な立ち位置につこうとしており、意識的に主・従の関係を作っていたことが見て取れる。Aさんの立場としては、彼の機嫌を損ねれば仕事がなくなりかねないし、そうなればクライアントである松浦勝人氏にも迷惑がかかってしまう。こんな状況のなかで、家に訪問することを求められたり、性的接触を求められたりしたわけである。

文春オンラインの報道では、箕輪氏とAさんのメッセージが詳細に暴露されている。一見、Aさんもくだけた感じで応対しているため、「かなり親密なのでは」「心を開いて受け入れているのでは」と思う人もいるかもしれない。しかし、私はこれについて明確に否定してみようと思い、この原稿を書いている。

 

おそらくAさんは、箕輪氏のことを当初編集者として尊敬していたはずだ。そして、大きな仕事をもらい、途中までは成果をほめられてもいたため、当然「仕事での関係を切られたくない」という強い気持ちがあっただろう。彼女が箕輪氏の口調や態度に行きすぎた親密さを感じていたとしても、それで仕事がうまくいっているならある程度は受け入れるだろうし、尊敬している以上、自らその雰囲気に合わせることは自然である。

だから、そこから箕輪氏の好意がグラデーションを描いて濃くなり、明らかに恋愛・性愛じみた関係を求めてきたとき、拒絶したくても「やめてください」「そういう関係じゃない」「好意はありません」などの強い言葉ではねつけることは通常以上にしづらい状況にある。ここまで仕事を積み上げてきたのだから、ここで彼の機嫌を損ね、関係を切られることがあってはならないという危機感があるうえに、「尊敬すべき人のはずだから、彼の行動は悪いことではないのではないか」という逡巡の気持ちも芽生えてしまうはずである(広河隆一事件はまさにこのパターン)。

 

参考記事:起業後最大の危機か 幻冬舎・見城徹氏の発言に日本を代表する作家たちが反論 謝罪するも論点ずらしと指摘 | TABLO

 

必死にバランスを取りながら箕輪との肉体関係を拒否する女性ライター

以下は、実際に文春オンラインに載ったメッセージとその心理を、私が勝手に推測したものである。Aさんは一貫して「重要な仕事相手である箕輪氏の気持ちを少しでも損ねてはいけない」「しかし、彼が関係を求めてくることだけは絶対に拒否したい」というバランスを必死で取りながら返信をしている。一連のメッセージにAさんの瑕疵など一切ないことを、私なりに説明してみたい(Aさんがこのメッセージを公開した勇気に甘えて丁寧になぞる形になるため、フラッシュバック的な意味で気分を損ねる方もいるかもしれず、その点については申し訳ありません)。

なお、文春オンラインは、画面のスクリーンショットで会話が載っている部分と活字のみの部分が混在し、途中のメッセージが不明の箇所もあるため、会話を部分的に略していることはおことわりしておく。

箕輪「明日Aちゃんち行きたい。家じゃなくてもいいし、何時でもいいから!」

A「遊んでください(顔文字)」(略)「他の予定は仕事優先で断ってたんですが、みのちゃんとお話なら、感覚を研ぎ澄ませられそうだから!」

箕輪(略)「屋内の部屋みたいな場所でも大丈夫?」

A「www」「カフェみたいな場所で、お茶みたいなもの飲みたいです。」「ご飯屋さんみたいな場所で、ご飯みたいなもの食べるとか。」

Aさんは、断りの態度を見せないよう気を遣っている。会うことは了承し、むしろこちらも積極的に会いたい、と共感を示すようにしつつ、文中で家に来ることだけは一貫して了承していない。会う場所をAさんがごまかして返信したにもかかわらず、「屋内の部屋」を再び提案しはじめた箕輪氏を苦笑で受け流し、とにかく彼女は家以外の場所で会おうとしている。この時点で当然、Aさんはかなり警戒している。

箕輪「お茶はもういっぱい飲んだし、お腹もいっぱい。」「絶対変なことしないから!」

A「あ!それ!」「風俗で培った、なし崩しの技ですね!」

箕輪氏が完全に家に来る気でいるため、「風俗」という露骨な下ネタを持ち出し、相手のはやる気持ちをどうにか萎えさせようとしている(男尊女卑男性は「清楚信仰」が強いため、Aさんは露骨な下ネタでなるべく雰囲気を台無しにしようとしている)。やはり部屋に来ることは了承していない。

箕輪「Aちゃん、ほんとお願い。技とかじゃなくて、ただゆっくりしたいだけ!」

A「私が変なことしちゃうんで!!だめです!wこの年になってヤリマンとか、自分で自分が好きじゃなくなります笑」

ここでAさんが自分を下げているのをそのままの意味で取るのはあまりにも浅薄であると思う。箕輪は「ゆっくりしたいだけ」であるわけがなく、一貫して関係を持つつもりである。しかし、ここでそんな彼の欲望を露骨に指摘して拒めば、彼の気を損ねてしまう。Aさんはここで、自分を押し下げ、「箕輪さんが『ゆっくりしたいだけ』であることは信じます。でも、<私が>ヤリたくなっちゃうから、そしたら自己嫌悪になるから、<箕輪さんが悪いわけじゃないんだけど>来ないでください」と言っているのである。相手を下げないために、自分を「ヤリマン」だと言い張り下品に見せてまで、本当に断りたいのである。屈辱的だったろうと思う。

箕輪「お城みたいなとこあったからそこ行こう!あとは入ってから、話そう」「なんか色々遊べるし、DVDとか見れるし!」「お願いします。心から優しくします。」

A「優しくしてください!」「カフェで。」

 

部屋にはとにかく来てほしくないために、話が進まない。ラブホテルまで持ち出してきたため、牽制して「カフェで」と念押ししている。しかし、仕事相手からの頼みをずっと断りつづける気まずさから、彼女は少し折れてしまう。

A「ほんとに、お茶だけでもしてくれるんですか?」「もしみのちゃん暇できたら、お茶でも笑」

部屋に行きたいという希望について結果的に100%断ってしまっているので、妥協点を見出さないと、次回会うときに関係性が悪化しないか不安である。そのため、「暇できたら」と時期を遠くに設定しつつ、自分から「お茶」を提案してバランスを取ろうとしてしまう。しかし、そこにまた箕輪氏がつけこむ。

箕輪「Aちゃんちで?」

自分から「お茶でも」と提案してしまったため、ここでいよいよ、断るという行為をしづらくなってしまう。

A「家で出前食べてます」「家別にいいんですけど、本気で狭いし何も起こらないですよ!w話し相手欲しさ。」「セックスなしでよければ、仕事しにきてください!笑ひとりぐらし寂しくてつまんなくて死にそうw」

断りづらいが了承もしたくないため、一旦「家」の話を出しつつお茶を濁して返信をためらう。細かく言えば、「出前食べてます」も、色気のない感じを出したいのかもしれない。しかし、立場が上の仕事相手を断り続けることがいよいよ負担になり「別に(来ても)いい」と言ってしまう。とはいえ、そのあとも必死でその先の行動は防ごうとしている。「セックスなし」とストレートに言い放って釘を刺し、さみしいから来てもらうのだ、と明記している。この部分については、こんな人の訪問を許してしまった理由について、自分を納得させようとしている要素もあると思う。

箕輪「いきます!下心がまったくない」

A「すごい散らかってて私仕事してるけどよいのですか?」「(略)冷蔵庫ないです」「てか!テレビもまだないしDVDは実家にある。つまんないかも。いいんですか?」「こんな汚い部屋に笑」

あまりにも雑な箕輪の言い訳に対し、不安が募るAさんは「すごい散らかってる」「私仕事してる」「冷蔵庫ない」「(来ても)つまんないかも」と連発し、相手の欲望を抑えさせようと抵抗をしている。

箕輪「つきます!」

A「人が家に来るの初!みのちゃんの安心感ヤバいw」

本当に何もないと安心している関係性なら、あるいは仮に女性側が好意を持っていたら、「安心感ヤバい」なんてことは絶対に書かない。これは牽制である。あなたには安心感があるって(少なくとも見せかけ上は)信じているんだから、何もしないでくださいね、という意思表示である。

この後、箕輪氏は実際に家に入りこみ、「『触っていいですか?』『キスしませんか?』とくっついてきて、いくら拒もうと強引に体を触ってきたのです。本当にやめてほしくて、『無理です、もう帰ってください』と強引に家から追い出しました」(文春オンラインより)という流れになってしまう。

セクハラ後のメッセージも痛ましい。「当時は松浦さんの自伝本を仕上げるために関係を悪くするわけにはいかなかったので“ネタ”にしてやりすごしました」と彼女は語っている。仕事を続けるには、接触を断ってしまったという「マイナス材料」をフォローしなければいけないため、彼女は「『ネタ』なので気にしていませんよ」というスタンスのメッセージをする。

 

A「無駄足でしたか…?笑」「でも私は楽しかったです!」「わざわざありがとうございました(絵文字)」

このメッセージはおそらく箕輪氏を部屋から追い出してから一時間も経っていない(タイムスタンプが同日の22:52である)。「あの女、やらせなかったな」と気を悪くしているのではないかと不安に思い、彼女は自ら「無駄足でしたか」という問いかけをしてしまう。さらに、自分は不快ではなかったという態度を重ねて示し、どうにか機嫌を損ねないように気を遣っている。

箕輪「いや幸せでした。またいきます笑」

箕輪氏の返事がやや素っ気なく、また行くと言い張っていることもあり、やはり少し気を悪くしているのでは?とAさんは心配したのではないかと思う。焦ったかもしれない。

A「よかったです笑。最近男性とこんなのばかり!老いて落ちついてしまいました、、wお話が一番楽しい」

あくまで箕輪が悪いのではなく私が<老いて>その気になれなかったのだ、と自虐するスタンスを取り、相手に非がないことを示している。このあとにも、場を取りなすため、長文で返信を連発している。

箕輪「今日握手しかできなかったのは○○(注:店名?)の呪い」

A「握手しか!?(涙の顔文字)」

箕輪「あと楽しい会話できました」「幸せだった!」

A「みのちゃんほんと癒やされますわぁ笑」「にしても、変な日でしたね笑」

「握手しかできなかった」の言葉に、やはり最初から会話や仕事よりも肉体的接触を期待していたのだと改めて実感し、恐怖したあと、「癒やされる」という言葉で「人として不快ではない、でも仕事の関係であり恋愛などの対象ではない」ということをやんわり伝えている。さらに、あくまでも人を部屋にあげたことが「変な日」=異常事態である、と言って共感を求めるが、箕輪氏には伝わらない。

箕輪「いつでも話しに行くから!」

A「こういう意味不明な感じ、すごく好きなんです」「小説っぽい笑」

執拗に今後も家に来たがる箕輪に対してAさんは真正面から答えず、「意味不明な感じ」=家に招いたけど恋愛・性的関係ではないという感じ、が好きである(というか、その先の関係は困る)ということを伝えている。そして、それを「小説っぽい」と表現して現実から離れ、箕輪の欲求を煙に巻こうとするが、伝わらない。箕輪はなおも執拗である。

 

箕輪「でもキスしたい」

A「〆切ました」「ボディを使うコミュニケーションは、〆切ました。。」「処女にもどりそうです」

具体的にキスしたいとまで言われて不快さが募り、Aさんはさすがにしっかり断ろうと思うが、ここに及んでも少し表現をユーモラスにして相手を傷つけないよう、自虐の雰囲気を強く織り込みながら返事をしている。

――このように、私から見ればAさんは最初から最後まで、ずっとずっとずーっっっと断っているのだが、コミュニケーションが断絶している。セクハラもパワハラも社会人として論外なのだが、箕輪氏はこのメッセージを経ても「Aさんに家に誘われた」と本気で思いこんでいるのかもしれない。こういった会話の真意を読み込めないことも編集者として致命的ではないかと思う。

また、5月19日に箕輪氏は「トラップ。よろしくお願いします。」と、ハニートラップであることを仄めかすようなツイートもしている(のちに消去)が、そもそも既婚者である彼が独身女性の家に行きたいとしつこく言いつづけた証拠はメッセージに残っており、無茶な論理である。

 

関連記事:【えらいこっちゃ】箕輪氏がフィリピンにまで行って、トークショーを行ったのはなぜか……!?【スタッフ無事か】 | TABLO

 

自著『死ぬこと以外かすり傷』のタイトルは初出ではない疑惑も

なお、箕輪氏の自伝的著書でありキャッチフレーズとなっている「死ぬこと以外かすり傷」は、少し検索すると、マルチ商法やネットワークビジネス界隈でさかんに言われている言葉であることが分かる(少なくとも箕輪氏が初出ではない)。

知人の協力も含めて調べた結果、この言葉は、おそらくボートレーサーのビル・マンシーの名言“We figure anything less than death is a minor accident”を、実業家・ロッキー青木が著書『人生死ぬまで挑戦だ』(1989)にて「死ぬこと以外は軽傷である」と訳したのが初出であろうと思われる。ロッキー青木氏はネットワークビジネスにも深く関わっていたため、その後その界隈で広まるなかで「かすり傷」という言葉に変わっていったのだろう。

箕輪氏本人は格闘家の青木真也からもらった言葉だと別の場所で説明しているが、なんと自身の著書にはその説明さえも存在しない。この言葉に著作権があるわけではなかろうが、自身のキャッチフレーズの言葉がそもそもオリジナルのものでないうえに、その出典すら調べていないというところに彼の仕事のいい加減さがよく現れている。(文◎能町みね子 一部敬称略)

 

あわせて読む:能町みね子×吉田豪 対談『ヘイトとフェイクニュース』を語る|第一回 「あなたの正義」を疑え | TABLO

 

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