木村花、鷹野日南、三浦春馬…、若い著名人の自死はなぜ? 専門家に聞いた
TABLO / 2020年7月25日 5時30分
写真はイメージです。
女子プロレスラーの木村花さん、女性アイドルグループ「KissBee(キスビー)」の初代リーダー・鷹野日南さん、俳優の三浦春馬さんのご冥福をお祈りします。まだ、お若く、才能に恵まれていらしたのに本当に悔やまれます。
三浦春馬さんの訃報を知り、仕事が手につかなかったという男性ファンの方は、厚労省の自殺予防ガイドラインが業界で守られていないのが問題だと怒り心頭でした。
社労士の意見は
そこで、特定社会保険労務士の中島啓吾先生に自殺予防するための留意点をうかがいました。
「厚労省の自殺予防ガイドラインは、どちらかといえば、メディア向けですね。なので、プロダクションが順守するというものではなく、報道機関向けのガイドラインになります。また、ストレスチェックは過重労働を図るためのものになります。プロダクションが気を付けるとしたら、売れっ子に対して過重となるスケジュールで仕事を入れてしまい、そこで、うつ病を発症させてしまうようなケースが考えられるかと思います。
なかなか、芸能という業務請負の世界は難しいですが、スケジュール管理やタレントの面談を通じて、しっかり課題や悩みをとらえなければならない点では労働者を管理する観点と一緒だと思います。アミューズくらい大きいプロダクションでも三浦春馬さんの自殺は止められなかったわけですから、理想論になってしまいますが」
精神科医の観点
次に、豊島区にあるライフサポートクリニックの山下悠毅先生に精神科医療の観点からお話をうかがいました。
「自殺の予測や危険因子の研究はなかなか進みません。それは、自殺の既遂者に質問をすることができないからです」(山下悠毅先生)
そこで、精神科医療では「心理学的剖検」という方法で自殺の研究を行っているそうです。これは、「自殺をされた方と親交の深かった方から、当人が自殺される直前の様子を聴取し統計を集める」という研究手法だそうです。
参考記事:「博学でストイック」 三浦春馬さんの素顔を仕事仲間たちが語る 器用なタイプではなかった 年末にはミュージカルの主演の予定 | TABLO
「平成 21 年度厚生労働科学研究(こころの健康科学研究事業) 『心理学的剖検データベースを活用した自殺の原因分析に関する研究』によると、自殺のサインでは、死について口に出すこと、過去1ヶ月の身辺整理、不注意や無謀な行動、身だしなみを気にしなくなることが自殺のリスクと強い 関係にあった、とされています。ただ、この度の著名人の自殺報道にもありますが、自殺される方の直前の様子や行動はケースバイケースです」(山下悠毅先生)
―ーうつ病の人が自殺をしないようにするためには、周囲の方はどのようにするべきなのでしょうか。
「人はうつ病という疾患を患うと『死んだ方が楽、と考えてしまう症状が出現しうる』という事実を伝えておくことが大切です。その上で、もし、そうした症状が出た際には必ず行動する前に相談をして欲しい。私は、人は『感情は約束できないが、行動は約束できる生き物』というゲーテの言葉を案内することが多いです。相談を受けた人は、ただ、やみくもに止めるのではなく、『この人は、死にたい、と表現してしまうほどのレベルで人生に絶望している』と相手の発言を翻訳し、『あなたがとても辛いことは理解できました』と気持ちを受容し、専門医療へつなげることが大切です」(山下悠毅先生)
関連記事:訃報 KissBee初代リーダー鷹野日南さん 「取締役アイドル」として一世を風靡 | TABLO
―ー抗うつ剤を飲んでいる人が、アルコールを摂取するのは危険と言われていますが、周囲の人がそれに気づいた時にはどのように接したら良いのでしょうか。
「抗うつ剤に関わらず、薬とお酒の相性は悪いです。なぜなら、薬とお酒を混ぜると、お互いが化学反応を起こすからです。ただし、抗うつ剤を飲んでいる方がお酒を飲んでしまう理由は不眠であったり、不安であったり、多くが、精神科の治療が上手くいっていないケースが多いのです。つまり、そうした方は自己治療としてアルコールを自己処方しているのです。そのため、もし、そうした状態の方がいたならば、『薬にお酒を重ねるな』ではなく、『主治医の先生との相性はどうか』『精神科にもセカンドオピニオンという制度がある』などと話し合って頂きたいです」(山下悠毅先生)
―ー金銭的に逼迫して自殺する方も多いですが、周囲からどのような声かけをするのが望ましいでしょうか。
「『金銭的に困り自殺をした』とありますが、多くのケースでは、人は、お金がなくて自殺をされるのではなく、うつ病を発症した結果、『自分はお金がないので死ぬしかない』という妄想(貧困妄想)にとらわれて、自殺をされてしまうのです。うつ病の初期サインで多いのは、睡眠障害です。特に、『明け方に目が覚めてしまう』(早朝覚醒)はうつ病の症状として特徴的ですので、『ひょっとして、夜中に何度も目が覚めたりしてるのでは?』『朝起きても、寝た気がしていないのでは?』と尋ねてあげることが大切です。その上で答えが『イエス』であったなら、専門の医療機関へ繋げて頂きたいと思います」(山下悠毅先生)
「コロナうつ 」という言葉も報じられていますが、一人で苦しまずに、命を大切にして頂きたいと思います。(文◎霜月潤一朗)
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