鉄筋コンクリート造のアパートを池に近いギリギリの所に建設した結果……

写真はfacebookより

何の変哲もないアパートに突然起きたハプニングの瞬間を複数の監視カメラがとらえていました。

このアパートは鉄筋コンクリートの3階建て。場所はタイの首都バンコクの西隣サムットサーコン県です。近くの工場で働く労働者中心に50人ほどが居住していました。

8月のある夜、突然建物全体が沈下したのです。外の監視カメラには沈下した瞬間に土煙が派手に上がっている様子がとらえられていました。アパートは地面から1メートルほど支柱でかさ上げした上に1階部分がありましたが、そのかさ上げされていた高さ分が丸々沈んだのです。

アパート前に前向きに駐車してあった住民らのバイクの前輪が巻き込まれて何台も無残に潰れています。

アパート内の1階に設置された監視カメラには、土煙が充満した直後に住民が慌てて出口から外へ避難する様子が映っていました。ドアが開かなくなった部屋は、外からドアを蹴り破って住人を救出しています。

いったいどうしてこんなことになったのでしょうか。アパートは築5年で建築基準を満たしていました。

 

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タイ工学会会長は、建物が池に隣接して建てられたことが原因で、池の水位の変化により徐々に土砂が流れ出した結果、強度を保つ臨界点に達したのだろうと語りました。

そうなのです。このアパートの真裏には池があります。地形からはアパートは池の一部を埋め立てた土地に建てられたことも窺えるのです。

建設を請け負った業者も、この種の建物を何百棟と建設してきたもののここまで水辺に隣接した場所に立てたのは初めてだったとあっさり白状しています。

そもそもこの一帯は海に近く、周囲を広大なエビ養殖池に囲まれた場所。建築基準を満たしているとはいえ、軟弱地盤に普通に建ててしまったのが原因でした。

 

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しかしケガ人が一人も出なかったことが幸いです。アパートのオーナー女性（67）も「ここは支柱の長さが21メートルしかなかったからね。でも支柱が30メートルあるアパートをもう1棟持っていて、住人にはとりあえずそっちへ移ってもらったよ」とあっけらかんと答えています。

住人も移転先が提供され、しかもオーナー女性から飲食物の差し入れと1人400バーツ（約1,300円）の見舞金を貰って不満はないようです。

裏の池側に傾いたアパートはその後も24時間で8ミリ以上沈下が続き、2階の天井には亀裂も見つかったことから、県と町は建物の取り壊し命令を出しました。

これが日本だったらマスコミに叩かれて住民からも訴えられること必至ですが、とくに誰も困っている人がいないことから、タイ人気質の「マイペンライ」（気にしない・大丈夫）で早くも一件落着してしまいました。そういうところ、ちょっぴり羨ましく感じなくもありません。（文◎赤熊賢）

 

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沈下前の建物

沈下した瞬間

アパート内。逃げまどう住民

アパートは無残な姿に…

巻き込まれたバイク