だからエロ本は潰される! 見えないものが見えちゃう人々の"斜め上から"のクレーム|春山有子
TABLO / 2018年10月14日 11時53分
10月2日、NHK公式サイト「ノーベル賞まるわかり授業」という解説ページにおいて、解説キャラクターに採用されたVTuberキズナアイ氏が炎上に巻き込まれました。
発端は弁護士の太田啓子氏がツイッター上にて、以下のような不快感をあらわにしたこと。
<NHKノーベル賞解説サイトでこのイラストを使う感覚を疑う。女性の体はしばしばこの社会では性的に強調した描写されアイキャッチの具にされるがよりによってNHKのサイトでやめて。このサイトで女性受賞者は少ないの? とか書いてるけどこれじゃ理由わかんないんだろう>
キズナアイ氏は、萌え絵界隈では言及するまでもないほどごく一般的だと思われるノースリーブで脇の下と推定Fカップ乳を多少強調したお姿。
......といった認識は、
「トンでもないGカップ乳の持ち主の女優X。そんな姿で今宵も"ホールインワン"をキメているかと思うと......まぎれもない性豪マスターズ優勝者!」
などという原稿を普段から書いているような筆者だからこそなのかもしれません。
太田氏をはじめとする、性にうぶっ娘な方たちには、キズナアイ氏は、「透け乳首でくぱぁして糸引きまくったアヘ顔」に見えたのかもしれません。
いや、もしかしたら太田氏ほかは、漫画『まじかる タルるートくん』が持っている「みるみるー」と呪文を唱えると壁や服がスケスケになり、伊代菜ちゃんの素っ裸が丸見えに、本丸くんが豪快鼻血ブーしたスケベなゴーグル「見Hん」(みえっちん)を普段からかけているのではないでしょうか?
だからキズナアイ氏がアヘ顔くぱぁしたように見えたのです! そうに違いありません。だって「見Hん」をかけていない筆者には、ただの服を着た女の子にしか見えないのですから......残念。
「見Hん」をかけているなら、その目に見える景色は、そりゃあ筆者たちと同じとはかぎりませんよね。だからこうした、認識の違いが生まれるのではないでしょうか。
同様の"「見Hん」の悲劇"は、過去にもたくさん起こっています。
・昨日までOKだったのに、ある日突然、所持が犯罪になった栗山千明の『神話少女』。
・区役所の人にたまたま見つかったばかりに有害図書指定される少年コミック。
・営業の社員に、表紙に踊る「女性器」の文字はスルーされたのに、「え、『膣』ですか......? 『膣』はダメでしょう」と指摘される週刊誌。
そんななか、筆者が間近で見た、"「見Hん」の悲劇"があります。
10年ほど前、筆者がとある実話誌の編集部員だった頃のこと。営業部の社員が、編集部に烈火のごとく怒鳴り込んできたのです。
「ちょっと! どういうことですかこれ!!」
尋常ではない勢いに、編集長もたじろぎます。
「なにかありましたか?」
「なにかありましたか? じゃないですよ! これですよこれ!」
営業社員がバシンと編集長のデスクに叩きつけた初校は、SM界の巨匠・S氏の連載ページ。S氏は緊縛師としても活躍する偉人で、飼い慣らしている奴隷女性との愛と調教の日々を写した記録を、弊誌に提供してくれていました。
初校に大写しになっているのは、奴隷女性が開脚し、その股間を隠すように立つ、S氏の後頭部。
もしかして、性器にモザイクをかけ忘れた箇所があったとか......!?
編集部に緊張感が走りましたが、モザイクは外れていないようです。
「え、これ、モザイクも入っていますし、もちろんどちらの性器も見えていないし、なにか問題が......?」
わけがわからない、といったように聞く編集長に、営業社員は青筋を立てて応戦するのです。
「だから! このおっさんの! 黒光りした後頭部が! 卑猥なの! ここにも! モザイク! 入れて!」
なんと、人の後頭部をわいせつ物呼ばわりするではないですか。S氏の後頭部は亀頭ではなく、れっきとした後頭部なのに、です。
こんなことってあるのーー!?
と編集部は大爆しょ......いや、おおいに震え上がりつつ、S氏の後頭部半分にモモザイクを入れ、結果モザイクの帽子を被っているみたいな変な絵面になりましたが、今ならわかります。営業社員は、「見Hん」をかけていたのですね。だからS氏の後頭部が、いきり立った亀頭に見えたのでしょう。
ところで、筆者のこの「今日の天気は曇りです」レベルの原稿も、「見Hん」をかけている人が読んだら、とんだお下劣極まった文章に仕上がるのでしょうね。筆者もほしいな、「見Hん」。(文◎春山有子)
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