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安田純平氏拘束ともう一つの日本人拘束事件 民族派・蜷川正大氏が「自己責任論」に答える

TABLO / 2018年11月16日 19時30分


 安田純平氏人質事件はいまだに、尾を引いています。ワイドショーもどちらかと言えば「ジャーナリストがジャーナリストをかばっている」と言った論調が多いようです。果たしてそうでしょうか。

 ネトウヨを中心に「自己責任論」「安倍政権をチキンと言っていたくせに」といった論も散見されます。そして、「故野村秋介先生がフィリピン反政府ゲリラに捕らわれていた日本人を救出したのとは大違い」という論もみられます。これは、1985年にフィリピンで、反政府ゲリラに日本人カメラマン、石川重弘氏が拘束された事を指します。
 
 野村秋介さんは言うまでもなく、右翼民族派の重鎮であり、右翼思想に多大な影響を与えた人です。1993年10月20日朝日新聞社内で壮絶な自殺を遂げます。没後25年。DVD「群青忌」が製作されました。内容云々は僕などが軽々に語れるものではありません。

 今回、野村秋介さんの門下生であり、二十一世紀書院蜷川正大代表に、今回の安田純平氏拘束事件とフィリピン日本人拘束事件について聞いてみました。(編集部・久田将義)



蜷川正大(以下・蜷川) 石川氏のときは、フィリピンっていうことで距離的にも近いし、英語圏だからある程度言葉も通じることもありました。フィリピンに野村先生の盟友のヒロ・ヤマグチさんって方がいたのです。その人からの接触でした。その人は自分で事業をやってて、サルタンっていうイスラムの王様と親しくしてましたので、ゲリラとコンタクトが取れました。
 今回の安田純平さんの拘束は、民族派が行ってやらなきゃいけないようなことかもしれないけど、しかし拘束されたのは気の毒ですよ。自己責任っていうけど誰だって捕まりたくて行ってるわけじゃない。それを言ったら何もできない。いつから自己責任って言葉が出てきたか知らないけど、あんまりいい言葉じゃないですね。

――自己責任論はキーワードです。

蜷川 同じ日本人なんだから、思想が右だろうが左だろうが。ただ彼の安倍政権を批判してたことがクローズアップされてしまいました。でもフリージャーナリストであんまり右翼的な人って知りませんよね。
 それはそれとして、ああいうタイミングで捕まったことは、われわれはいつも野村先生のことが頭にあるから、批判するなら、「貴方だったら、戦場取材が出来るのか」と。批判するだけでは世の中は動かないっていうのが私たち野村一門のスタンスですから。


「じゃあ君たちがやってみろと思います」(蜷川正大代表)


――安田さんが、安倍政権を批判していたと言う事もありました。

蜷川 安倍政権批判したからってどうのこうのっていうのは、安倍政権が100パーセント正しいかっていったら、良いところも悪いところもあるわけですから。民族派の全てが安倍政権を支持している訳ではない。

――安倍さんのことを批判するとネットで「お前は反日」みたいな。「反日」って言われるとビックリするんですよ。何故、そのような反応になるのか。

蜷川 ネットで自分の身元を明かさないで批判するっていうことは良くないです。

――「文句言うんだったら、じゃあ1対1で会いましょう」って言っても来ないじゃないですか。

蜷川 安田さんに関しては、「じゃあ君たちがやってみろ、自分が現地に行って写真撮ってこい」って思いますよ。

――基本的には同じ日本人なのですから。

蜷川 だから助けたことに対する批判と、もしあそこで安田さんが殺されていたら、助けなかったことに対する批判とどっちに甘んじるかっていったら、やっぱり助けてよかったって普通は思いますよね。相手が誰とか関係ない。

――ネトウヨについてはどうお考えですか?

蜷川 匿名で人の批判なんかするのは、右左にかかわらず人間としてどうかと思いますね。

――在特会っていうのがありました。

蜷川 お付き合いがないので、詳しいことは知りませんが、私は個人的に、人間は親や生まれるところは選べないわけだから、単に生まれた国や国籍が違うからとかで、批判する気にはなれない。横浜で生まれて育っているので、国籍の違う友達が大勢いる。そんなこと気にしてたら生きていけない。

――先日蜷川さんも旧知の、元ボクサー・カシアス内藤さんにインタビューしたんですけど、顔は黒人ですけど......。

蜷川 日本人ですし、大和魂の持ち主で、尊敬しています。

――人間としての資質の問題ですかね。

蜷川 うん。残念だよね、本当に巷間で言われているように「ヘイト・スピーチ」なるものを公言しているとしたら、同じ範疇で見られることが残念ですね。

――彼らが、デモをするときに日の丸掲げますからね。

蜷川 これは野村先生から聞いたんだけど、かつて府中刑務所に有名な厳しい看守がいた。その人が懲役囚が一生懸命作った植木鉢をその人たちが見ている前でトンカチでぶっ壊し、「おまえらに憩いの場はいらないんだ」と。
 運動会のときにその人が台の上に立って懲役が行進する。そうするとその人のうしろに日の丸の旗が翻っている。すると野村先生は「俺の胸の中にある日の丸と、あの日の丸は違う」って。だから俺たちはそういう事をずっと思っています。そんなこと言ったら警察だって日の丸を掲げていて、そこに俺たち捕まってるんだから(笑)。だからいろんな思いの日の丸があるんだよね。

――オリンピックで日の丸が揚がれば感動しますからね、これは抗えない思いなんで。

蜷川 うん。もしも日の丸の旗立てて「外国人は出て行け」なんて言ってる日の丸に感動するかって話です。やっている人はそれなりの考えを持っているのかもしれないけど、俺たちは違うってことだよな。日本が満州国を建国した時の理念は、五族協和。その五族とは日本人・漢人・朝鮮人・満洲人・蒙古人。私は、この理念は今でも正しいと思っている。

――ホントに残念ですよね、僕もゆっくり話してみたいぐらいですけど。

蜷川 ひとりずつ話せばわかってもらえるんじゃないかなって気はするよね。ただ、みんなといるからつい集団心理で過激なことを言ってしまう。日本語は美しくあるべきと思っているから。

――保守とも違うし、民族派とも違うと思います。

蜷川 ネット右翼と呼ばれる人たちが、もし民族派運動の主流だって言われるようになったらもう俺たち民族派をやめるね(笑)。引退しますよ。

――さすがにネットでもちょっと規制が入るようになって。オリンピックが始まるのにそういうこと言ってたら恥ずかしいですよね。

蜷川 話は飛躍するけど、刺青の問題があるよね。アメリカのスポーツ選手が和彫りしてるわけ。たとえば俺たちがオリンピックの水泳の試合を観に行くとき、夏場で暑いからって刺青出して観てたらさ、警備の人は何も言わないのかな? 刺青が悪いって言ってるんじゃないんですよ。それは宗教的なこともあれば文化的なこともある。でも風呂も入れないとか。こないだヤクザの人が刺青お断りのサウナに入ったら捕まったっていうわけ。じゃあオリンピック選手も捕まえるのかなって言いたい。反対にお客で、刺青している人が観客席でランニング姿で観てたらどうすんだって聞きたいよな。


「同じ日本人」


――最近、プロ野球選手も入れています。地上波で映っていますよね。

蜷川 そういうことの曖昧さっていうのかな、安田さんに対する報道となんか似てるんじゃないかなって気がするんですよ。安田さんの問題と直接関係ないかもしれないけど。
 やっぱり人間って要は好きか嫌いかなんだよ。物の本質が正しいとか悪いじゃなくて、こいつのこと好きか嫌いかでだいたい論調は変わる、残念ながら。本来、日本人は判官びいきといって弱い人、負けた人に同情するもの。安田さんのようにああやって人質になって無理やり何か言わされてる人に同情しない日本人って何かな? と思うときはありますね。

――安田さんは3年以上拘束されて、それは想像を絶するというか。

蜷川 多分、安田純平さんと会っても話が合わないかもしれないけど、そういう問題じゃないんですよ。まず同じ日本人だし。「よく帰って来たね」って言わなきゃダメですよ。で、反省は本人が一番してると思う。会見でもめちゃめちゃ反省してるじゃないですか。

――笑顔もまったく出ないですしね。

蜷川 腹、据わってると思いますよ。普通の人だったらあんな状態で何年も拘束されていたら、頭がおかしくなっちゃう。自分の仕事で危険な目に遭うことが、自己責任って言うなら、ソマリア海賊に襲われる船の乗組員は自己責任なのかっていうことになりますよ。 

――登山家やF1レーサーが亡くなったりするのもそうなります。

蜷川 それを自己責任だって責めてたらキリがない。海賊がいるのになんで行ったんだって。やっぱりその現場で何が起こってるかを、きっと安田さんを責めてる人たちだって知りたいと思うんです。フリーのジャーナリストは多少危ないようなこともしなかったら、ニュースも取ってこられないわけですよ。

――知人のライターがウイグルに行ったのですが、そこまで危ないところは行かなかったらしいですけど心配でした。何があるかわからないので。でもそういう人たちがいるから映像が観られるわけですからね。

蜷川 帰って来たら僕らもそのライターの話を聞きたいよ。石川重弘さんの事件を大手メディアが取り上げないことをフリーのジャーナリストが行って初めてわかることもあるだろうし。

――大きなメディアは社員を行かせないですからね。

蜷川 大手メディアは戦場取材なんてほとんど記事を買うだけであって。残念なのはシリアの政府軍が正しいのか、反政府が正しいのかよくわからない。両方言ってることは正しいし。ボスニアなんかもそうだったでしょ、どっちが正しいんだか。

――どっちかというとアメリカ寄りの報道が入ってきて。

蜷川 湾岸戦争でカモメが石油まみれになってるのだってフェイクニュースだったわけでしょ?

――あと大量破壊兵器はなかったっていう。だからホントわかんないですね。

蜷川 彼がどっちの側に立つかは別としても、こういう事実があるっていうことはフリーのジャーナリストの使命だと思いますよ。(聞き手◎久田将義)

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