15年のオーバーステイをしていた不法就労目的の韓国人男性 それでもやはり彼は「クズ」ですか?
TABLO / 2019年1月13日 16時0分
世の中には「韓国」という国の話題になると、何故か異常にヒートアップしてしまうタイプの残念な方々がいるようです。
作家の百田尚樹先生はその残念なタイプの代表格とも言える方ですが、先生は先日もツイッターでこんなことを発信していました。
「はっきり言います!
韓国という国はクズ中のクズです!
もちろん国民も!」
百田先生が何を根拠に特定の国籍の人をクズだと断じているのか知りませんし知りたくもありませんが、誰でも閲覧できるSNS上でこんな差別的な発言をする方の方がクズなのではないかと思ってしまいます。
とはいえ、このツイートは10000以上の『いいね』を集めています。理解はできませんが共感する人は多くいるようです。
さて、韓国国民とはどんな人たちなのでしょうか。先日、韓国人男性のオーバーステイ裁判を傍聴してきました。この一例を持って韓国国民全体を論じるつもりはありませんし、たとえいくつ例を挙げてもそんなことは不可能だと思います。しかし違法に在留していた犯罪者で韓国人である彼が「クズ」だとはとうてい思えませんでした。
李泰均(仮名、裁判当時52歳)が来日したのは平成12年末、短期滞在の資格で、初めから不法就労目的での来日でした。
彼が逮捕されたのが平成29年4月なので、15年以上不法滞在していたことになります。その間、ずっと韓国でもやっていたカバン製造の仕事に就いていました。情状証人として出廷した、彼が「東京のアボジ」と慕う仕事仲間の日本人男性は、
「真面目で、不良品を出さない優秀な職人です。国内で技術を継承していくことにこの国は熱心じゃないですけど、被告人は日本の若い人に熱心に技術を伝えてくれていました」
とその仕事ぶりを評していました。
また、15年以上の付き合いの中でその関わりは仕事だけのものではなくなっていました。
「よくプライベートでも呑みに行ってました。国が違うことは意識しませんでした。義理がたい友人だと思っていますし、また日本に戻って来てほしいです」
証人は裁判所に出廷するだけでなく、警察署にも入管にも何度も面会に行っていました。
法廷で交わした彼と証人の会話
逮捕のきっかけになったのは、彼の友人が突然倒れたことでした。
その日、その友人と一緒にいた彼はすぐに119番通報しました。通報者であり第一発見者である彼は病院で話を聞かれるであろうこと、その際に身元の確認をされるであろうこと、そうすれば不法滞在もバレて逮捕されること、すべてわかっていました。
「そんなことより、命が大事だから」
そう思ったそうです。
その後、彼は病院で逮捕されました。弁護人が彼の接見に訪れた時、自分のことより真っ先に友人の安否を尋ねていたそうです。
「不法滞在が悪いのはわかってました。でも日本が好きで、韓国に帰ろうとは思いませんでした。急に捕まってしまったので、優しくしてくれた人たちにあいさつも出来ませんでした」
彼は通訳人を介することもなく、流暢な日本語で話していました。日本人の友人も多くいるようです。
「いつかまた、今度は不法でない形で日本に来たいと思っています」
オーバーステイで検挙されて強制送還された者は原則として5年間は再入国が出来ません。それでも彼はまた日本にやってくることを決めているようでした。
閉廷後、刑務官に連れられていく彼に傍聴席にいた「東京のアボジ」が笑顔で声をかけていました。
「韓国行くよ! 会いに行くから!」
彼は振り向いて、やはり笑顔で頷いてから法廷を後にしました。
日韓両国の間に様々な政治的な問題があります。韓国の、または日本政府の対応に不満を抱くこともあるかもしれません。
しかし、それは国籍によって人間を差別し見下す理由にはなりません。
今回取り上げた彼は韓国人です。それも不法滞在をしていた犯罪者です。では、彼は百田尚樹が言うように「クズ中のクズ」なのでしょうか?
彼と「東京のアボジ」が法廷で交わしていた笑顔がその答えだと思います。(取材・文◎鈴木孔明)
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