メディアはもっとゲリラ的になるべきでは 当事者に取材すると見えてくるもの│プチ鹿島
TABLO / 2021年11月11日 6時30分
当事者に取材する価値とは何か(写真@編集部)
前回、「TABLO」で四聞ネタを書きました。四国新聞は平井卓也議員の一族経営で、平井氏のライバル・小川淳也議員には取材しないで批判的な記事を書くことが多い。それが本当に不思議だと。
そのあと私は4泊5日で「香川1区」に行って選挙戦や投開票日の様子をじっくり見学しました。四国新聞の記者さんもいたので「なぜ取材しないで記事を書くのか」と質問してみた。そのくだりを「文春オンライン」に書いたら、「TABLO」の久田編集長から「当事者に取材する『喜び』みたいなものを今回(TABLOで)書いてみては」とご提案いただきました。
衆院選直前 四国新聞はなぜ小川淳也氏に当てないで報道したのか | TABLO
そもそも久田編集長と言えば3・11以降に原発作業員にずっと密着取材して「呑んで本音を聞いたりしました。当事者に話を聞かないと意味がないと思ったからです」という方です。また、ある人に「出会い系BAR通い」という記事が出て勝手な言説があったときは店に行って調べて”風評被害”だったことを証明していました。まさしく当事者に取材する喜びのプロです。
私の場合、当事者と言えば「新聞」でしょうか。読み比べが趣味なのですが、同じ風景を見ているのこんなに視点が違うのかと「当事者(=新聞)」の気持ちや行間を勝手に読むのが好きなわけです。取材というよりのぞき見と言っていい。だからこそ四国新聞の記事のつくり方は「読者」としてどうしても聞いてみたかったわけです。
そういえば最近は記者やメディアにも野次馬精神があってもいいのになと思うこともあります。たとえば8月の広島の原爆死没者慰霊式・平和祈念式のあいさつでの菅義偉首相(当時)の「原稿1ページ読み飛ばし」事件です。
あのとき政府関係者は原稿に「のりが予定外の場所に付着し、めくれない状態になっていた」として「完全に事務方のミスだ」と釈明しました(共同通信)。え、のりが付いていた?そんな言い訳ある?誰にでも間違いはあるけどこういう物言いにこそ政権の体質が出ていないか。そう思うと本当に「のり」が付いていたのか気になって仕方なかったし、なんでメディアは言いっ放しにさ
せてるのだろうと不思議でした。ツッコミどころなのに。
すると遂に広島在住のフリー記者、ジャーナリストの宮崎園子氏が調べた。広島市に公文書開示請求をして「原本」を確認。その結果「のり付着の痕跡は無かった」ことがわかったのだ(オンラインメディア「インファクト」に調査報告を発表)。これぞまさに「当事者」に取材した傑作ではないでしょうか。ジャーナリズムであるのはもちろん、私のような野次馬の期待にも応えてくれた仕事でもありました。
菅義偉首相は言葉を持たない政治家だった 「広島・原爆死没者慰霊式・平和祈念式読み飛ばし事件」は深刻 | TABLO
そうそう、今年は東京五輪・パラリンピックがありましたがメディアのねじれ現象を感じた。新聞にとってあれだけツッコミどころが多かった五輪は格好のネタ対象だったはずでしたが、大手紙はスポンサーになったせいかおとなしい印象でした。その代わりにゲリラ的立場であるはずの週刊誌やタブロイド紙や週刊誌が生き生きしていた。週刊文春の五輪スクープ連発は記憶に新しい。ゲリラが王道を制したように見えた。でも、メディア全体がもっとゲリラでいいんじゃないですかね?(文@プチ鹿島 連載「余計な下世話」)
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