【ＴＨＥ ＭＡＴＣＨ２０２２】「招待芸能人」に現役格闘技選手からも痛烈批判

東京ドームに五万人以上集客した「THA MATCH2022」。

6月19日は格闘技の、エンターテイメント業界の伝説となり得るでしょう。那須川天心vs武尊の世紀の一戦。何10年経っても語り継がれる死闘は判定5-0で天心選手の勝利。その他のアンダーカードも、メイン級のものばかり。PPVでは50億円を売り上げたという報道もありました。

その世紀のリングでは、実況アナウンサー曰く「豪華な観客」がせいぞろいとのこと。彼らが席に座る度に、カメラが芸能人たちを抜くのですが、Abemaで視聴していた僕は、YA-MAN選手vs芦澤選手の試合の際、開始のゴングが鳴り終わらないうちに芦澤選手が突っ込んでいったのか、いかなかったのか確認出来ませんでした。
余計な事をしてくれました。

また、ツイッタートレンドに入っていましたが、東京芸人のトップを極めたと言っていいでしょう有吉弘行さんは人気ラジオ番組「Sunday Night Dreamer」(TOKYO FM日曜20時～)では「俺も見に来ますか?」と招待されたとのこと。因みにチケット代200万円と思われる最前席です。

有吉さんはテレビに映るのが嫌でキャンセルしたのですが、その理由が「自分が試合見てても、芸能人の映像映るじゃない(略)。解説とか裏方のリポートとか仕事があって端の報に座っているならいいけど(略)ちょっと恥ずかしいよ」。

さらに「俺がジャッキー・チェンとか(略)だったら堂々と座って」「有吉がさ、キックボクシング(略)最前列で真面目な顔して座っていたら(略)見てる人は思うよ。『ジャマなんだよ!　リング映せよ!(略)』って。外国だとアル・パチーノだけどね。日本だと『有吉か』って反感買うだけだよ」。

このセンスがあってこそ、芸人のトップに上りつめたと言っていいでしょう。僕は、この発言に乗っかる訳ではなく、試合中に同じような違和感と嫌悪感を抱いていました。ツイートしたものを再録しますと……。

【「リングサイドの著名人を紹介します」って、中堅・若手の俳優ばかりじゃん。横綱とか国民栄誉賞とかが来るのかと思いました】(2022 6/19 20:43)

【リングサイドのゲストを誇らしげに写すたびに。ラスベガスでやる、パッキャオ、メイウェザー、カネロ戦との違いをまざまさとさせられるので、もう良いです。あと、それで芦澤選手がゴング前に攻撃したのかどうかも神明出来ませんでした】(2022 6/19 19;15)

【で、皆んなキャップ、グラサン、マスクなのでわからないから尚更要らないです】(2022 6/19 19;16)

それに対して、あるフォロワーさんが「選手たちと200万円席の芸能人・著名人たちの友情には関係ないです」というリプライがありました。

もちろん、友情はそのままでしょう。

違うのです。

この男の試合にハズレ無し！　ＹＡ‐ＭＡＮ選手ロングインタビュー　６．１９「ＴＨＥ　MＡＴＣＨ」の「裏メイン」の呼び声高し | TABLO 

有吉さんが言っているのは(僕もですが)、芸能人としての自身の嗜み・美学のようなものを披露しているのです。
また、アル・パチーノやジャッキー・チェンのような世界的スターの名前を出したのは、「俺はそこには及ばないから200万円相当の席は遠慮しておく。何より格闘技ファンに悪いから」という気遣いに他なりません。

全く同感で、例えばラスベガスやマディソンスクウェアガーデンで行われたボクシングの興行は、覚えている限りではデンゼル・ワシントン(アカデミー賞主演男優賞)やマイク・ウォールバーグ(アカデミー賞助演男優賞などノミネート)やバスケットボールのスター(バスケ、詳しくないのですみまません!)らが客として席に華を添えていました。

そして、テレビで彼らが抜かれる度に観客がどよめいていました。本来、「メガイベント」とはこうあるべきだと思っていたので、僕は人気はあるけど中堅・若手俳優ではなく、アメリカ並みに国民栄誉賞受賞者などを呼ぶのだと思いました。

有吉さんがアル・パチーノ(アカデミー賞主演男優賞受賞)やジャッキー・チェンの名前を出したのも、こういった心情からだと思います。

「このくらい有名になり、認められてから招待席座れよ。格闘技ファンに失礼じゃないの」と有吉さんの言葉を意訳しておきます。

現に、格闘技選手からも

【「格闘技界に精通していますみたいな顔をして偉そうに座っているの何回も映されて不快。その人達がいなきゃ他で前で観たかった人もいるかも知れないのに失礼】というもの。

また、これはかつて弊サイトでインタビューした総合格闘家平本蓮選手のツイートですが

【あと、気軽に天心(絵文字)武尊(絵文字)みたなやっている芸能人クソほど腹たつわ。お前らと次元が違うからな】(2022 6/20 12:29)

【モニターに一瞬映る芸能人目当てで格闘技見るようなやつはそもそも格闘技好きにならんぜ。意味のない広告】(2022 6/20 12:39)。

200万円席に招待するのは百歩譲って良いとしましょう。また、芸能人も興味があったり友人格闘家が出ていたりするのもあるのか、観に行くのも分かります。で、あるならばもう少し、殊勝な顔をして座っていてはどうでしょう。アカデミー賞俳優たちでさえ、自腹でチケットを購入しています。そして画面で抜かれると、超大物俳優を目にした客は湧きます。俳優も画面に向かって笑いかけます。客、選手、運営が一体となった興行です。

それに引き換え、これだけ招待芸能人に批判が出るのは、「何か」自覚をしていないからでしょう。

因みに、横浜流星さん、市原隼人さんらはきちんと第一試合から観戦していたため、格闘技ファンからもおおむね好評に見られていたようでした。招待される側も、かくあるべしと思います。(文＠久田将義)