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鳥取連続不審死事件 死刑囚・上田美由紀が住んでいたゴミ屋敷に入って―― |八木澤高明

TABLO / 2019年2月26日 15時0分

「臭いはすごいわ、蠅のわき方は尋常じゃなかったんね。窓がおはぎみたいに真っ黒になっているから何かと思ったら、全部小蠅だったんだよ」

 鳥取市内のスナックでホステスとして働いていた女を取り巻く男たちが謎の死を遂げるという事件が明るみとなったのは2009年のこと。逮捕された後、死刑が確定した上田美由紀が暮らしていて長屋に私は足を運んだのは、彼女が逮捕されてから半年ほどが過ぎた頃のことだった。

 冒頭のコメントは上田美由紀の長屋の隣に暮らしているという男性が事件発覚前の上田美由紀の長屋について語ってくれたものだ。

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 長屋へは鳥取市内から車を走らせて向かったのだが、世界遺産として知られている鳥取砂丘から近い場所にあった。周囲には畑が広がり、民家が点在する向こうにラブホテルが数軒建ち並んでいた。田舎で見かける景色と言ってはそれまでだが、ラブホテルの存在が男たちを次々と籠絡していった事件の概要と相まって妙に頭にこびりついた。

 長屋の前に車を止めると、目の前の駐車場には、家財道具やゴミ袋がうず高く積まれていた。ちょうど上田美由紀が暮らしていた長屋からゴミを出す作業が行われていたのだった。

 ひとりの男性がその作業を見守っていたので、話しかけてみたら大家さんだった。

 犯罪者の家を覗くことができる機会というのはそうあるものではない。大家さんに中を見せてくれないかとお願いすると、了承してくれたのだった。

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 玄関から部屋に入ると、家の前にも既にかなりの数のゴミ袋があったはずだが、まだまだ部屋の中はゴミ袋で埋まっていた。

 ゴミ袋とゴミ袋の間からかろうじて見えるタンスの中には、レディースコミックが無造作に入っていた。部屋の片隅に鳥かごがあった。その中ではハムスターが無残にも干からびて死んでいた。そうしたゴミにまじって子ども用の玩具があることが、何とも痛ましい気持ちにさせる。


 この部屋というか、ゴミ溜の中で上田美由紀と5人の子どもたち、愛人が暮らし、さらには犬や猫までも飼っていたという。

 果たしてどうしたら、このような場所で生活を営むことができるのか。私の想像を絶する闇がこの小さな長屋の中に広がっていたのだった。(取材・文◎八木澤高明)


※『鳥取連続不審死事件』
スナックのホステスをしていた上田美由紀の周辺で6人が謎の死をとげた。うち2件が上田による殺人と認定。殺人容疑を一貫して否認したが、最高裁によって上田美由紀の死刑が確定した。5人の子どもと住んでいたアパートは当時マスコミによってゴミ屋敷として有名になった。

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