【大人恋学ストーリー】恋と罪 第1話 「恋人ごっこ」

恋学 / 2014年7月8日 15時54分

抱きしめる 骨が折れるほど乱暴に
キスする 跡が残るくらい強く
あたたかい身体はここにあっても
心が遠くにあることを
今だけは 忘れたくて
20140709

 マンションの部屋に灯りがついているのを見て、仕事の疲れが吹き飛んだ。
修也はエレベーターが待ちきれず、3階までの階段を駆け上がる。合い鍵を持っているのは真由子だけだ。
金曜の夜に来るなんて珍しいじゃんか。なんだよ、連絡くれたらもっと急いで帰って来たのに。

 呼び鈴を押すと、思った通り真由子がドアを開けてくれた。
キッチンから、うまそうな匂いがしている。
「おかえり。遅かったんだね」
彼女がいるだけで部屋がワントーン明るくなったみたいだ。だが、
「何つくってんの?」
我ながら、ぶっきらぼうな口調になった。
「シチューだよ。すぐ用意するね」
声を背中で聞きながら部屋着に着替え、手を洗う。
その間に、テーブルに料理が並べられた。
真由子は、修也のスウェットを当たり前のように着ている。
――――「修ちゃんといると一番リラックスできるんだぁ」
いつかそんな事を言っていた。それが嬉しかった・・・少し前までは。
 「おいしい?」
おいしい。それより何より会えて嬉しい。でも・・・黙々と食べていると、
「ごめん。急に来て。私もう嫌になっちゃった」
真由子はシクシク泣き出した。やっぱりか。
「彼氏と何かあった?」
聞きたくないけど仕方ない。
「奥さん具合悪いんだって。ドタキャンされちゃった」
真由子には恋人がいる。前の職場の上司で、妻子ある人。お決まりの不倫。

 真由子とは高校の同窓会で10年振りに再会した。互いに男子側、女子側の幹事を受け持った縁で、連絡を密に取り合い、何となくその後も二人で会うようになった。
派遣社員である彼女の職場と、インテリア雑貨を扱う修也の会社が近かったせいもある。飲みに行ったり、二人で食事をするうちに、同性には言えない恋の悩みを相談するようになった。彼女は不倫の恋を、修也は年上の彼女に振り回されていることを。そして・・・
「彼女がなかなか会ってくれない」修也と、
「彼に会えない土日が死ぬほど辛い」真由子との、
“ともだち付き合い”がはじまった。もう1年近く続いている。
恋人のように飲みに行ったり、家に来たり、時には同じベッドで眠ったり。
どちらかが、淋しくて本命の人に会えない時、
恋人みたいに過ごす“ともだち”―――    
本当の恋人にはならない約束の“ともだち”―――

 「泊まってっていい?」
真由子の方から唇を重ねてくる。
夢中で受けとめながら、修也は心の底で叫んでいた。
反則じゃん。ベッドで抱き合ってキスしてる時に他のヤツのこと考えてるなんて、いくらなんでも酷すぎるって!
「修ちゃんも・・・いいんだよ」
見透かしたように、喘ぎながら真由子は言う。
「私のこと、彼女だと思ってくれて」
彼女なんかいない。とっくに別れたんだ。他に好きな人が出来たから・・・。 
 言えない言葉をぶつけるように、彼女を乱暴に抱きしめた。

                                  つづく

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