【恋学 読み切りショートストーリー】恋愛カウンセラー日記「恋愛アドバイス」

恋学 / 2014年11月7日 11時12分

あなたの為を思って 言うんだけど・・・

20141107

 もし珠美がいなかったら・・・? と思うとゾッとする。
26年間の人生、もっと失敗して、悩んで、もしかしたら自殺とか?・・・そこまでいかないにせよ、結構ヒドい目にあってたんじゃないかなって思う。
特に恋に関して。

 中学からの親友。少女の頃はお互いの家を行き来し、お泊まりもした。
珠美に彼が出来たのは中二の春。ファーストキスはその彼で、初体験は高二の時、私も憧れていた部活の先輩だった。
彼女の事なら何でも知っている。奥手の私と違って、珠美には次々恋人ができ、その彼との詳細を事細かに話してくれた。私は興味津々で、ドキドキしながら耳を傾けたものだ。
 やがて・・・私にも彼が出来た。

 大学の階段教室で出会ったOクンを、別の女子大に通う珠美に真っ先に紹介した。珠美は、 「ミキの為を思って言うんだけど・・・あのタイプは、優しそうに見えて優柔不断だから苦労するかも」、とアドバイスしてくれた。
なのに、舞い上がっていた私は珠美の言葉に耳を貸さなかった。
何事にもハッキリしない0クンと2年も付き合い、なにかある度、珠美に泣きついて相談したものだ。最後には、珠美に言われた通り、
「私と別れたいの? 別れたくないの? どっち?」
と迫ったけれど。

 それからは今までにも増して、珠美を頼るようになった。
卒業してOLになり・・・4年経った今でもそう。
恋人が出来たら一番に珠美に紹介している。
結果、結婚に至るような運命の人とは出会えていないけれど。
企業の受付嬢になった珠恵はますます目が肥え、査定もなかなか厳しいのだ。

 営業職のSサンの時は、
「頭が良くて楽しい人だけど、あのタイプはいつか裏切ると思う」
 合コンで知り合ったDクンの場合は、会社名を言うと、
「聞いても分からないような会社に勤めてる人なんかやめれば?」と。
そういう所、珠恵はすごくしっかりしていて、自分も彼氏が起業したのをきっかけに別れたんだと話してくれた。
「だって自営業なんて何の保障もないのよ」

 いつでも珠美は親身になってくれる。
そのうち、恋人が出来ると、紹介していなくても心のどこかから珠美の、
「ミキの為を思って言うんだけど・・・」
って声が聞こえてくるようになった。
 だから、Oクンから何年かぶりに連絡が来て、
もう一度、付き合って欲しい、って言われた時も私は正しい決断が出来たのだ。Oクンは今になって、私を思い続けていた自分に気づいたという。
「俺の運命の人はミキなんだ。やり直せないか?」
正直、心は揺れた。でも、珠美がいつも言ってるもの。
“運命なんて言葉を口にする男に限って裏切る”って。
それに珠美、Oクンの事は最初から気に入ってなかったし。

 休日、珠美が新しい彼を紹介するといってきた。
・・・珠美の後ろから、気まずそうに顔を出した男性に見覚えがあった。
Sサン?!
「驚いた? あのね、Sサン、ウチの会社に営業にきたのよ。すごい偶然じゃない? お互いびっくりして、なんだか運命を感じちゃってさあ・・・」
身体がグラリとふらついた。弾んだ声が遠ざかっていく。
“いつか裏切るタイプよ”、“ミキの為を思って言うんだけど・・・”、“運命なんて言葉・・・”
頭の中で呪文みたいな声が渦巻いている。
「ねえミキ、聞いてるの?」
その瞬間、微笑んだ親友の顔が悪魔に見えた。

                               (おわり)

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