なぜ65歳以上の高齢ドライバーを優遇? 若者には関係ない「サポカー補助金」とは
くるまのニュース / 2020年4月26日 16時10分
若い世代にはあまり知られていない「サポカー補助金」なる制度も導入されていますが、これはどのようなものなのでしょうか。また、高齢ドライバーしか優遇されない理由とは、なんなのでしょうか。
■65歳以上のドライバーを対象とする「サポカー補助金」とは?
2020年3月9日より、「サポカー補助金」の申請受付が開始されました。サポカー補助金といっても、若い世代にはあまりピンとこないかもしれません。
なぜならサポカー補助金は、基本的に65歳以上のドライバーを対象とした制度だからです。サポカー補助金とは、どのようなものなのでしょうか。
2019年4月に東京・池袋で発生した乗用車暴走による親子の交通死亡事故など、近年は高齢運転者の事故が相次ぎ、大きな社会問題にまで発展しています。
その一方で、高齢者の運転免許保有者数は増加の一途にあり、高齢者の安全運転を支えることは喫緊の課題といえるでしょう。
サポカー補助金とは、経済産業省による「安全運転サポート車普及促進事業費補助金」および国土交通省による「安全運転サポート車普及促進に係る自動車事故対策費補助金」の総称です。
簡単にいうと、「サポカー」の愛称で知られる「安全運転サポート車」の購入ならびに、「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」を後付けするときに補助金が出るということです。
経済産業省と国土交通省が併記されているのは管轄の違いで、前者が「自家用自動車」、後者が「事業用自動車」を取り扱います。
自家用自動車における補助対象者は2020年度(令和2年度)中に満65歳以上となるドライバーで、事業用自動車の場合は2020年度中に満65歳以上となるドライバーを雇用する事業者です。
後者では雇用主(事業者)は65歳以上である必要はなく、65歳未満でも補助金の交付を受けることができます。
ちなみに、事業用自動車とは自動車運送事業者が事業に使用する車両のことで、ナンバープレートが緑(登録車)や黒(軽自動車)のクルマです。法人名義であっても、自家用自動車登録の社用車はもちろん、4ナンバーや8ナンバーの商用車も白や黄色のプレートでは事業用自動車とはなりません。
また、自家用自動車においても、車検証上の「使用者」が65歳以上であれば、「所有者」の年齢は問われません。
申請者は使用者になるため、厳密には「65歳未満でも補助金の交付を受けられる」とはいえませんが、所有権が若い家族にあるクルマでも、使用者が条件を満たしていれば補助金の交付を受けられます。
ただし、申請にあたり運転免許証が必須となるため、免許を所有しない高齢者が使用者の場合は申請することができません。
そもそもサポカー補助金はなぜ対象を「高齢者の運転」に絞っているのでしょうか。
それは、交通事故の発生件数が減少傾向にあるなか、交通事故死者数において65歳以上の高齢者が占める割合が高くなっている現状を政府が重く見たからです。
安全装備の進化と充実もあり、死亡事故数や死亡者数自体は高齢者も減ってはいるのですが、その減少率が若い世代よりも小さく、結果として交通事故死者数の54%以上をも65歳以上が占めているのです(警察庁交通局調べ・2017年)。
そして、高齢運転者による死亡事故の人的要因では、ペダルの踏み間違いなどの運転ミスが30%以上ともっとも多く、2019年(令和元年)の「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議」で、安全運転サポート車の普及が高齢者運転者の事故予防に有効と判断されたからにほかなりません。
■サポカーであっても補助金対象外のクルマも!? 意外に厳しいその条件とは
サポカー補助金の対象者は基本的に65歳以上のドライバーですが、対象となる「サポカー」とは、どのようなクルマなのでしょうか。
サポカーは、「セーフティ・サポートカー」の略で、先進安全技術で安全運転を支援してくれるクルマ、つまり「安全運転サポート車」のことです。
日産「デイズ」に搭載された安全機能が動作する様子(イメージ写真)
搭載する機能により「サポカー」と「サポカーS」のふたつに分けられ、前者は「衝突被害軽減ブレーキ」を搭載したクルマを、後者は衝突被害軽減ブレーキに加え「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」などを搭載したクルマを指します。
さらに、サポカーSは衝突被害軽減ブレーキの機能に応じて、低速衝突被害軽減ブレーキ(対車両)の「ベーシック」、衝突被害軽減ブレーキ(対車両)の「ベーシック+」、衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)の「ワイド」とみっつの区分が設けられています。
これらのなかでサポカー補助金の対象となるのは、「衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)」を搭載した「ワイド」のクルマだけになります。
つまり、サポカーSであってもワイド以外は対象外ということです。逆に、ペダル踏み間違い急発進抑制装置を搭載しないサポカーでも、対歩行者の衝突被害軽減ブレーキを搭載していれば補助金の申請が可能です。
補助される金額は、搭載される機能により異なります。
「衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)」と「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」の両方が備わる場合は普通自動車(新車)が10万円、軽自動車(新車)が7万円、中古車が4万円。
「衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)」のみの場合は普通自動車(新車)が6万円、軽自動車(新車)が3万円、中古車が2万円となります。
気を付けなければいけないのが、衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)を搭載していても車両価格に上限があるなど、ほかにも条件があることです。
「審査委員会が認定した車種・グレード」として、経済産業省のホームページで具体的な対象車種が公開されているので、購入・申請にあたっては必ずそちらをチェックしましょう。
車両導入(購入)の補助ではなく、もう一方の「後付け装置導入補助」では、「後付けのペダル踏み間違い急発進等抑制装置」が補助対象の装置に該当します。
補助額は障害物検知機能付が4万円、障害物検知機能なしが2万円で、対象者は2020年度中に満65歳以上となる高齢運転者に装置を販売する者とされています。
つまり、装置の販売・取り付けをおこなった販売店等が申請者となるので、購入者は補助金額が差し引かれた額で購入することになり、改めて申請する必要はありません。
なお、補助の対象となる後付け急発進等抑制装置は、国土交通省の認定を受けたものだけです。こちらについても国土交通省のホームページで対象装置を確認することができます。
※ ※ ※
サポカー補助金の期限は設定されていませんが、補助金の合計が1127億円の総予算額に達するまでとされ、およそ2021年2月ごろと想定されています。
詳細については、今後「次世代自動車振興センター」のホームページで案内される予定です。
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