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日産「マーチ」は実は輸入車!? 海外生産の日本車がイマイチ売れない理由

くるまのニュース / 2020年5月25日 9時10分

海外で生産され、輸入される日本車は意外と多く存在しています。そういった車種は売れ筋とはいえず、販売台数も少ない傾向があります。それは一体なぜなのでしょうか。

■意外に多い!? 海外で生産されている日本車

 海外工場で生産され、日本で「輸入車」として販売されているモデルは意外に多く存在しています。

 トヨタはBMWと共同開発した「スープラ」、ピックアップトラックの「ハイラックス」、商用車の「タウンエース&ライトエース」を輸入しています。タウンエース&ライトエースは、インドネシアにあるダイハツの工場が生産する車両です。

 日産は「マーチ」、ホンダは「シビック」、「アコード」、「NSX」、スズキは「エスクード」、「SX4 Sクロス」、「バレーノ」などが海外で生産されています。

 これらの売れ行きは、すべて好調とはいえません。2019年度(2019年4月から2020年3月)の登録台数は、トヨタの正規輸入が1年間で2万2661台でした。

 1か月平均では全車を合計して1888台です。この内スープラは2019年5月に国内で発売されましたが、当初は納期が遅れて、10月頃から徐々に増えています。

 マーチは初代から3代目までは堅調に売れましたが、2010年に発売された現行モデルの4代目はタイで生産される輸入車で、売上は低調です。

 東日本大震災後の2012年には、1か月平均で3308台を登録しましたが、2015年は1290台に下がり、2019年は約800台でした。先代型の3代目は、発売直後には1か月平均で1万台以上を登録して、その後も2500台前後は売れたので4代目は少ないです。

 マーチの売れ行きが下がった一番の理由は、タイ製になったことではなく、車両自体の魅力が根本的に薄れたからです。

 内外装の質は3代目よりも低く、後席の背もたれを倒すと、荷室との間に大きな隙間ができます。乗り心地とノイズも粗いです。

 2008年後半に生じたリーマンショックによる経済不況の影響もあり、4代目マーチはコスト低減を重視して開発され、質感を幅広く低下させました。同じく2010年に発売された従来型トヨタ「ヴィッツ」も、発売当初は質感に不満がありました。

 シビックは国内販売を一度終了して海外専用車になりましたが、セダンを国内の寄居工場(埼玉県)で生産することになり、ハッチバックとタイプRを輸入して復活させました。

 シビックも登録台数は少ないですが、シリーズ全体では1か月平均で900台から1000台になります。売れ筋は国内生産のセダンではなくハッチバックなので、日本メーカーの輸入車では売れ行きが多い部類に入ります。

 同じホンダ車でもアコードは販売台数が少なく、1か月の目標も300台です。現行アコードは、北米では2017年に登場しながら、日本国内の発売は2020年2月でした。

 フルモデルチェンジでクルマの安全性が高まることを考えると、日本では約3年間にわたり、海外に比べて安全性の劣ったアコードを売っていたといえます。

 昨今の日本車は世界各国で販売され、すべての国と地域で同時に発売するのは難しいですが、3年の時間差は開きすぎです。とくにいまは安全性が急速に進化しているので、時間差を埋める努力が必要です。

 ちなみに最近のマツダは、プラットフォームや各種ユニットを幅広く共通化しており、ひとつの車種で安全装備が進化すると、同じ内容を時間を置かずほかの車種にも適用しています。頻繁に改善すると購入時期を見極めにくいですが、安全性を公平に高めるメリットは圧倒的に大きいです。

 NSXは売れているのか否か分かりません。販売できるのは一部のパフォーマンスディーラーのみで、販売状況を尋ねても「注文は受けられますが、正確な納期は生産時期が近付かないと分かりません」と返答されます。

 NSXの登録台数は、1か月にわずか2台程度です。このような事情もあり、販売会社のホームページに、NSXの情報はほとんど掲載されていません。

■海外生産の日本車は本当に必要なのか?

 スズキは、ハンガリー製のエスクードとSX4 Sクロス、インド製のバレーノを輸入しています。1か月の登録台数は、エスクードが230台、SX4 Sクロスは120台、バレーノは60台前後と少ないです。

ハンガリー製のスズキ「SX4 Sクロス」ハンガリー製のスズキ「SX4 Sクロス」

 スズキが海外製の輸入車を増やした目的は、小型/普通車の販売増強です。スズキは軽自動車が主力のメーカーで、いまは人気のカテゴリですが、ホンダや日産も軽自動車に力を入れたことから競争が激しくなりました。

 軽自動車の販売増加に伴い、2015年には軽自動車税が従来の年額7200円から1万800円に引き上げられています。

 スズキはこれらを将来の不安要素と考えて、小型/普通車の強化に乗り出しました。年間登録台数の目標を10万台に設定して、2016年前半にはバレーノの輸入を開始。国内生産のイグニスもデビューさせました。

 その結果、2016年(暦年)の小型/普通車登録台数は10万2129台に達して目標を達成しました。2019年には12万2031台まで増えています。

 国内向けの車両を開発するには多額の費用を要しますが、輸入すれば低コストで品ぞろえを増やせます。

 1車種当たりの登録台数が少なくても、複数の車種で年間10万台なら可能だと判断しました。それでもスズキの国内販売に占める小型/普通車比率は18%なので、依然として80%以上が軽自動車ですが、ダイハツの普通車が全体の7%に比べれば多いといえます。

 日本メーカーが海外生産車を輸入する理由はさまざまです。共通しているのは、輸入車は主力商品ではなく、ラインナップの補充を目的にしているということです。

 日産が2010年に現行マーチをタイ生産に変更したときは、コンパクトカーでは、「ティーダ」、「キューブ」、「ノート(初代)」があり、コンパクトセダンの「ティーダラティオ」、5ナンバーサイズで車内の広い「ブルーバードシルフィ」も扱っていました。

 SUVでは、「ジューク」が新型車として投入され、比較的コンパクトな「デュアリス」もありました。

 小型車を豊富に選べたので、リーマンショックの影響もあり、マーチをタイ生産に移して合理化を図ったのです。

 ところがその後、ティーダ、ティーダラティオ、デュアリスは廃止され、キューブも2019年末に生産を終えました。シルフィは3ナンバー車になって売れ行きが下がり、いま日産で堅調に売れる小型/普通車はノートとミニバンの「セレナ」のみです。

 日産の販売店では「マーチが輸入車であることは、お客さまも我々も、とくに意識していません。しかしマーチは安全装備が乏しく、今はノートを選ぶお客さまが圧倒的に多いです」といいます。

 輸入される日本車は、基本的に海外向けの商品なので、装備やグレードを国内のニーズに合わせて細かく変更することはできません。そのために販売面で不利になります。

 また輸入車は、生産から納車までの期間が長いです。ユーザーの希望に合う在庫車がないときは、かなり待たされます。

 この問題を避けるため、輸入車は国内生産車に比べると、グレードの数やメーカーオプションを減らして選択肢をシンプルにしています。

 エスクードも以前は複数のグレードを選べましたが、いまは1.4リッターターボの4WDのみです。ほかの車種を含めて、選べる自由が乏しいことも、日本メーカーの輸入車が売れにくい理由となり、総じて顧客満足度が低いのです。

 しかし、そこには今後の活路を見い出せる可能性も秘められています。本来なら日本のメーカーは、国内のユーザーと向き合って商品開発をおこなうべきですが、世界生産台数の80%から90%を海外で売るいまでは、日本は「オマケの市場」です。

 その結果、国内で発売される新型車の数も大幅に減り、売れ行きが一層下がる悪循環に陥っています。

 それなら豊富に用意される海外向けの商品、日本で買えない日本車の活用を積極的に考えても良いでしょう。

 欧州で販売されるトヨタ「アイゴ」、国内仕様よりも後席の広い「カローラサルーン&ツーリングスポーツ」、日産「マイクラ」、コンパクトSUVのホンダ「BR-V」など、いろいろと考えられます。

 日産がルノー「トゥインゴ」などをOEM車として扱うなど、業務提携を活用する方法もあります。新型車が何も登場しない最悪の状態は、避けるべきです。

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