これぞ「駆けぬける歓び」 BMWマイスターがこれまでに感動したBMW車5選
くるまのニュース / 2020年6月9日 19時10分
「駆けぬける歓び」とは、誰もが知っているBMWの有名なスローガンだ。ドイツ語では「Freude am Fahren(フロイデ・アム・ファーレン=運転する歓び)」という。長年BMWドライビング・エクスペリエンスのチーフインストラクターを務め、いままで数多くのBMWモデルに乗ってきたモータージャーナリストのこもだきよし氏に、いままで運転していて感動したBMW車5台を聞いた。
■走りが楽しくなければBMWではない
BMWは現在、豊富なラインナップを誇っているブランドだ。
今では1シリーズから8シリーズまで、1、2、3、4、5、6、7、8と順に揃っている。基本のセダンは3、5、7という奇数シリーズで、偶数はクーペスタイルのモデルにネーミングされる。
一般的にSUVというカテゴリーになるBMWのXシリーズは、「X1」「X2」「X3」「X4」「X5」「X6」「X7」まで揃っているが、BMWではX1、X3、X5、X7の奇数シリーズをSAV(スポーツ・アクティビティ・ヴィークル)、X2、X4、X6の偶数シリーズをSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)と呼んでいる。
また「Z1」「Z3」「Z4」「Z8」など、アタマにZとネーミングされるモデルは、スペシャルティカーとして分類される。現在は「Z4」しかないが、それらはどれも2シーターである。
現行型1シリーズ、2シリーズ、X1、X2などコンパクトなラインナップは、横置きエンジンの前輪駆動(FF)が基本になっているが、3シリーズやX3以上のモデルは、基本的に後輪駆動(FR)をベースにしている。
このBMWのFRモデルの特徴は、前後の重量配分が50:50になるようにデザインされていることだろう。
フロントアクスルを前方にレイアウトし、エンジンは車室に近いところに押し込み、重いバッテリーはトランク内に置くなど、重量配分を50:50にすることにコストをかけている。
これは走りの基本ポテンシャルを引き上げるためだ。グリップ力の特性を考えると、これが一番タイヤの性能を引き出せるからだ。4代目の3シリーズ(E46)以降、FRベースのBMWは、前後重量配分がほぼ50:50になっている。
BMWのスローガンは「駆けぬける歓び」。これはドイツ語の「Freude am Fahren(フロイデ・アム・ファーレン=運転する歓び)」を日本語にした優れたキャッチコピーだ。
昔から走りにこだわりを持つBMWのモデルだが、かつてその走りに感動した5台をピックアップして紹介しよう。
E30型「3シリーズ」(1982年から1994年)
E30型2代目「3シリーズ」
E30型と呼ばれる2代目3シリーズは1982年に日本で登場し、バブル全盛期にかけて日本でもヒットしたモデルだ。
当時から夜の繁華街として有名だった東京・六本木では、どこに行ってもこの3シリーズを見かけたので「六本木のカローラ」などとも呼ばれた。
当時、BMWといえばこの3シリーズをイメージする人がほとんどだった。日本のカーメーカーもこのE30型3シリーズを開発のベンチマークとしていた。あらゆる性能や機能が抜きん出ていたからだ。
典型的な3ボックスのセダンで、当時は2ドア/4ドア、MT/AT、右ハンドル/左ハンドルを自由にチョイスできるワイドなバリエーションを揃えていた。我が家の最初のBMWは、この320i右ハンドル、AT、4ドアである。
サスペンションはフロントがストラット、リアがセミトレーリングアームという組み合わせで、「320i」でもストレート6を搭載し、オーソドックスなセダンにもかかわらず誰にでも「駆けぬける歓び」を味わうことができたことで、BMWのスポーティなイメージが定着した。そして伝統的な「M3」は、E30から初代が誕生した。
E46型「M3 CSL」(2003年)
E46型「M3 CSL」
4代目の3シリーズは「E46」と呼ばれるが、この代のM3を軽量化しさらにパワーアップしたモデルが、2003年に登場した「M3 CSL」(クーペ・シュポルト・リヒト)だ。
ルーフにCFRP(炭化繊維強化プラスチック)を最初に使ったのも、少量生産だったからできたことだ。その他にも前後のスポイラーもCFRPを採用していた。このあとにBMWモデルがCFRPを使うようになっていくが、その先駆けになったモデルでもある。
軽量化はリアシートのクッションを薄くしたり、リアウインドウの厚みを薄くしたり、電動調整式ではなくマニュアル調整のシートを採用したりと徹底した。
3.2リッター直列6気筒エンジンは最高出力360psと、ノーマルM3と比べて17psアップされている。フロントバンパー左側に丸い穴が開けてあるのは、オルタネーターの冷却用である。ブレーキローターもM5用を採用して強化を図っている。
車両重量は1385kgで、パワーウエイトレシオはわずか3.85kg/ps。軽量とパワーアップがいかにクルマを楽しく操ることができるのか、M3 CSLに乗るとよく理解できる。
■北米生産のライトウェイトオープンスポーツも軽快な走りだった
「Z3」(1996年から2002年)
Z3ロードスター
これまでのBMWのデザイン手法を打ち破り、1996年に登場したのが「Z3」だ。
ボディサイドのキャラクターラインがなく、柔らかいウエーブで構成されたエクステリアデザインは、BMWデザイナーの永島譲二氏の手によるもの。
2シーター・ライトウエイトスポーツのマツダ「ロードスター」が世界中でヒットしたことがきっかけで、各メーカーから同じコンセプトの2シータースポーツが出てきたが、Z3はこの独特なデザインが人気となり、北米をはじめ世界中でヒットした。
筆者が最初にZ3をドライブしたのは、生産工場であるアメリカのサウスカロライナ州スパルタンバーグ工場をベースにした試乗会だった。Z3はこの工場で製造された初のBMWモデルだった。
Z3は、E36の3シリーズをベースにしたシャシを採用しているが、ハンドリングはさらに軽快になり、リアタイヤの直前に座るドライビングポジションは、ロングノーズのクラシックなスポーツカーの雰囲気だ。
Z3はオープンだけでなくクーペも追加された。のちにM3のエンジンを搭載し、ボディの剛性アップも施した「Mロードスター」「Mクーペ」といったMモデルも登場した。
E34型「M5」(1988年から1996年)
E34型「M5」
BMW Driving Experienceのインストラクターカーとして、筆者がしばらく乗っていたのがE34のM5である。ビッグシックスと呼ばれる3.6リッター直列6気筒エンジンを搭載する典型的なFRの4ドアセダンだ。
このモデルは、高いパフォーマンスを発揮するのに、外観は派手ではなかった。後期モデルでは3.8リッターに排気量アップしたが、高回転で芯が出たコマのように回る感触は、排気量が小さな3.6リッターの方が良かった。
ちなみに3.6リッター直列6気筒エンジンはS38B36と呼ばれ、315ps・360Nm、後期型の3.8リッター直列6気筒はS38B38型で、335ps・400Nmを発生していた。
クラッチペダルは重かったが、力のあるエンジンにはふさわしく、ちょうど良いと思って乗っていた。エンジンのマウントゴムは硬めに設定し、走りを優先したものだった。ボディと一体感を持っているから、このサイズのボディ(全長4720mm×全幅1750mm×全高1392mm、ホイールベース2761mm)でもドライバーと一体感のあるハンドリングが楽しかった。
ウイークデイはビジネススーツで乗っても似合うし、土日はポロシャツでスポーツドライビングを楽しむことができる。走りもそれに合わせることができる二面性も持っていた。
G20型 320i(2019年から現在)
G20型7代目「3シリーズ」
最新技術を結集して、フラッグシップモデルである「7シリーズ」に劣らない電装系の装備、安全装備を備えているのが現行3シリーズ(G20)である。我が家の8台目にあたるBMWが、この「320i」になる。
エンジンは2019年7月生産から、2020年モデルとして細かい部分の熟成を果たした。これまでは「330i」と共通のエンジンだったが、新開発の320i専用エンジンに切り替わり、より燃費が向上しているはずだし、サスペンションセッティングもよりしなやかに動くものになり、乗り心地も良くなっている。
便利に使えるのが渋滞モード付きのACC(アクティブクルーズコントロール)だ。これはお盆休みの渋滞などに遭遇しても怖くないと思わせる心強さだ。まだコロナ禍で長距離ドライブも自粛しているが。また最後の前進の50mの軌道を覚えて、そこからバックするときにハンドル操作をやってくれるのも便利に使っている。
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