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梅雨の時期は事故に注意! いま「雨にも強いエコタイヤ」が増えている理由

くるまのニュース / 2020年6月21日 11時50分

6月。いまの季節は梅雨なので雨模様の日も多いが、首都高速道路株式会社によると、雨天時の交通事故件数は晴天時に比べて4倍近くなるという。雨の際のスリップ事故を避けるため、まずは溝のチェックなど愛車のタイヤ点検をしたいところだが、新しいタイヤに履き替えるのもひとつの手だろう。いま、エコタイヤなのに雨にも強いタイヤが増えているという。

■雨の日の事故率は晴れの日の約4倍に跳ね上がる

 首都高速道路株式会社によると、晴天時の1時間あたりの事故件数は0.95件。対して雨天時には3.34件と、雨の日の事故は晴れの日に比べて、およそ4倍に跳ね上がるという。

 雨の日の運転は視界が悪くなり、また路面が滑りやすく制動距離も伸びることから、事故が増えてしまいがちだ。安全運転のためにも、日ごろから愛車のタイヤ溝チェックをして、溝が減っていたら新しいタイヤに交換することをおすすめする。

 いまカー用品店などで購入される乗用車用サマータイヤの約9割はエコタイヤが占めるというが、近年登場したエコタイヤには転がり抵抗性能が良く、加えてウエット性能も良いという商品が登場している。

 タイヤショップなどで交換用として販売されている乗用車用のサマータイヤには、「A-c」「AAA-b」などの表示がある。

 これはタイヤ・グレーディング制度といって、「転がり抵抗性能」「ウエットグリップ性能」のふたつを等級分けして表示するものだ。転がり抵抗性能はAAA/AA/A/B/Cのアルファベット大文字5段階、ウエットグリップ性能はa/b/c/dのアルファベット小文字4種類で表される。

 このうち、転がり抵抗性能がAAA/AA/Aで、かつウエットグリップ性能がa/b/c/dの場合、「低燃費タイヤ(=エコタイヤ)」と定義される。

 一般的には、転がり抵抗性能を良くするとウエットグリップ性能が下がり、ウエットグリップ性能を上げると転がり抵抗性能が悪くなる、という相反関係にあるため、その性能を消費者がひと目でわかりやすくするために設けられた制度なのだが、最近では転がり抵抗性能が「A」以上なのに、ウエットグリップが最高の「a」を獲得しているエコタイヤが数多く登場している。それを可能にしている技術とは、いったいなんなのだろうか。

※ ※ ※

 タイヤの主成分はゴムでできている。ゴムの3大特性として「やわらかい」「大きく変形する」「変形しても元に戻る」ということが挙げられる。

 ゴムの分子は絡まった長い鎖のような状態だが、ゴムの分子同士がくっついていないと元に戻れず、破断されてしまう。そこでゴムを加熱し、硫黄でゴムの分子同士をくっつけることを「加硫」といい、タイヤの製造でも加硫がおこなわれている。

 ゴムは、そのままだと非常に弱いため、補強材を入れる必要がある。補強するための材料が「カーボンブラック」だ。これは1912年にアメリカのタイヤメーカー、グッドリッチが使ったのが最初といわれている。

 カーボンブラックはほとんど炭素で構成され、塗料や黒インクにも使用されている。このカーボンブラックをゴムに配合すると強度は20倍ほど上がり、さらに紫外線にも強くなるという。タイヤが黒いのは、このカーボンブラックを配合しているためだ。

 このカーボンブラックはゴム(油)と馴染みやすい。鉛筆で書いた文字(カーボン)を消しゴムで消すことができるのはこのためだ。

■エコタイヤの進化は「シリカとゴムの混合」がキーワード

 カーボンブラックに代わる補強材として注目されたのが「シリカ」だ。レース用タイヤには1980年代から使われていたが、乗用車用としては1992年にミシュランが発売した「MXGS」というタイヤに使われたのが最初といわれている。

左がブラックカーボン、右3つがシリカ。どちらもゴムを強くする「補強材」として使われる(資料提供:横浜ゴム)左がブラックカーボン、右3つがシリカ。どちらもゴムを強くする「補強材」として使われる(資料提供:横浜ゴム)

 シリカはカーボンブラックと似た構造を持つ、ケイ素と酸素で構成された物質(=二酸化ケイ素、SiO2)で「ホワイトカーボン」とも呼ばれている。身近なものとしては、シリコンゴムや歯磨き粉、乾燥剤、珪藻土バスマットなどにも使われている。

 カーボンブラックをシリカに置き換えると、ゴムの変形回復が早くなるという特徴があり、そのためタイヤが転がりやすくなるという。タイヤメーカーの横浜ゴムによると、カーボンブラックのみ配合のゴムに比べ、シリカ配合ゴムは、路面との接触面積は1.23倍、タンジェントデルタ(エネルギーロス)は約27%減、という数値になったそうだ。

 結果、ゴムにシリカの配合量を増やせば増やすほどウエットブレーキ性能も良くなり、ころがり抵抗も減っていく。さらにシリカを配合したゴムは、低温でも硬くなりにくいという特性も持っている。

 ただ難しいのは、カーボンブラックは油と馴染みやすい(親油性)のに対し、シリカは親水性だということだ。ゴムは油なので、ゴムにシリカをそのまま混ぜても「水と油」なので結合しない。またシリカ同士が強く引き合うため、塊(ダマ)になりやすい性質がある。

 そこで必要となるのが、シリカとゴムを結びつける「シランカップリング剤」だ。この化合物は、材料を混合中に化学反応させることで、シリカとゴムを結合させる。また、ダマになりやすいシリカに分散剤を加えて混合することで、ゴムのなかに均一にシリカが分散(高分散)される。

 こうした混合(ミキシング)のノウハウが、新たなタイヤの性能向上に直結している、と横浜ゴムの担当者は語る。「同じ材料を同じ分量使っていても、混合する時間、温度のコントロールによって、出来上がったゴムに差が出ます」

 ゴムを混合すると、発熱して温度が上昇する。その温度を冷却しながら適切な値に制御、十分に反応が進むまで混合するという、高度な混合制御技術が必要になってくるそうだ。タイヤメーカーそれぞれが、混合技術を研究し、日々開発していることが、最近ウエットグリップが良くエコ性能も高いタイヤが増えてきた理由なのだ。

※ ※ ※

 シリカを配合したゴムは、転がり抵抗が少なくウエットグリップが向上するため、タイヤにとってメリットばかりのように感じてしまうが、じつは弱点もある。

 それは、シリカが多く配合されたトレッドゴムの導電性が低いということだ。ブラックカーボンのみ配合のタイヤの場合は、タイヤから地面に電気を放出できたが、シリカ配合ゴムの場合、電気を通しにくいことから、クルマにたまった静電気を逃がすのが難しいという欠点がある。

 静電気を逃せなくなると、電磁波ノイズによりクルマの電子機器への悪影響が出る。ラジオにノイズが入るだけでなく、各センサー類にも影響が出る可能性もある。さらに可燃物への引火なども考えられる。

この部分が導電スリット(アース)。ここから電気を地面に逃がす(資料提供:横浜ゴム)この部分が導電スリット(アース)。ここから電気を地面に逃がす(資料提供:横浜ゴム)

 その対策として、シリカを配合したタイヤのトレッド部には、電気を地面に逃がすアース(=導電スリット)を作っているため、生産性が悪くなり、製造コストもかかってしまうという。

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