マフラー本数が多い方が速い? 軽は1本でもスポーツ車の本数が多い理由
くるまのニュース / 2020年6月26日 9時10分
一般的に軽自動車では、マフラーの数が1本となっています。しかし、ボディサイズや排気量が上がっていくにつれ、マフラーの本数が増えていく傾向にあるといいます。なぜ、車種によってマフラーの本数は変わるのでしょうか。
■マフラーの重さは燃費に悪影響?
クルマを後方から見ると、排気ガスを排出するマフラーが備わっています。軽自動車の多くでは1本なのに対して、大排気量車では左右に1本ずつ、もしくは2本ずつ備える車種もあります。なぜ、クルマによってマフラーの本数が変わるのでしょうか。
近年は電気自動車(EV)の登場によりマフラーを必要としないクルマも増えていますが、経済産業省によれば2017年時点で販売実績に占める電気自動車(EV)の割合は0.41%とされ、依然として多くのクルマはエンジンを搭載としています。
そのため、ガソリンを燃焼させて動くエンジン車にとって、燃焼した排気ガスの出口であるマフラーは必須の装備です。そもそもクルマのマフラーには、排気ガスの冷却や、エンジンの騒音を低減する役割があります。
エンジンで発生した排気ガスは、エキゾーストマニホールドと呼ばれるパイプや、排気ガスを浄化する触媒を経てひとつのパイプに集合し、そこから車体中央部にある「サブマフラー」と、車体最後方にある「メインマフラー」を経て徐々に冷却されていきます。
なかでもメインマフラーとサブマフラーは、エンジンで燃焼したガスが大気中に放出される際に発する騒音を低減する「サイレンサー」としての機能があり、クルマの中と外の静粛性を保つために重要な役割を果たしています。
しかし、マフラーの大きさや本数は統一されておらず、車種やボディサイズによってバラバラです。例えば、2020年5月にもっとも販売台数が多かったホンダ「N-BOX」やダイハツ新型「タフト」などの軽自動車では、マフラーは左右どちらかに1本のみ装備されています。
一方で、3リッターターボおよび3.5リッター(ハイブリッド)のエンジンを搭載するを持つ日産「スカイライン」は左右に1本の計2本、排気量5リッターを超えるレクサス「RC F」では、左右2本の計4本が備わっているのです。
なぜ、クルマのサイズや排気量の違いによって、マフラーの本数が変わるのでしょうか。
その理由について「ハスラー」や「ワゴンR」などの軽自動車を販売する、スズキ販売店のスタッフは以下のように話します。
「マフラーはクルマのなかでも重い部品のひとつです。重量が増えると、結果として燃費にも影響がでてしまう可能性があります。
また、軽自動車ではコストを重視しているため、マフラーの数を増やせば製造コストがかかることから、1本にするほうが良いといわれています」
また、クルマ用のマフラーを製造している藤壺技研工業では、以下のように話します。
「マフラーを1本にした場合、サイレンサーの数が少なくなるため、コストが抑えられるとともに、軽量化にもつながります。
音量の面でもマフラーは1本にした方が有利です。スピーカーを想像していただけるとわかりやすいですが、数が多ければそのぶん音の発生源が増え、音量が増してしまいます」
クルマは、車体が軽ければ加速に使う力を小さくすることができ、結果として燃費が伸びます。そのため、いかにひとつひとつの部品を軽くできるかが、燃費性能の大きなカギを握ります。
実際に、1979年に発売された初代スズキ「アルト」は「1部品1円1g」を合言葉に開発されたといわれています。
しかし、軽自動車のなかにもダイハツ「コペン」のように、大排気量車と同様に左右両側にマフラーを備えている車種も存在。
マフラーを増やせば燃費に悪影響を与えるとされているにもかかわらず、左右にマフラーを備えるメリットはどこにあるのでしょうか。
前出の藤壺技研工業は以下のように話します。
「マフラーを左右に配置するメリットは重量バランスです。排気量が大きくなると、エキゾーストシステム全体の重量が大きくなるので、片側だけになると重量が偏ってしまいます」
マフラーや、排気ガスが通過するエキゾーストパイプと呼ばれる部品には、パイプ以外にもさまざまな部品が付属しています。
例えば、高温になるパイプからボディや配線や配管などを守るためのヒートインシュレーターや、パイプを車体に固定するためのマウンティングブラケットがあり、どれも金属製の部品となっています。
大排気量車は、軽自動車などのエンジンが小さなクルマに比べて、より強力な排気ガス浄化装置や冷却装置を必要とします。
そのため、触媒やエキゾーストパイプ、マフラーなどの部品が大きくなり、片方だけでは重量バランスを悪化させてしまうのです。
■マフラーの本数は、デザインにも影響あり
前出とは別のマフラーメーカーのスタッフは以下のようにも話します。
「マフラーが左右に装備されていることで、左右どちらかにマフラーがある場合と比べて左右対称となり、見た目の印象が洗練されます。
また、高性能なイメージを強調するなどのデザイン上の理由もあり、スポーツカーや大排気量車では2本以上のマフラーを装着することがあるのだと思います」
実際に、大排気量車のエンジンは、通常のクルマよりも大きな馬力やトルクを発揮するものが多くあります。
例えば、5リッターエンジンのRC-Fは最高出力481馬力、トルクは54.6キロに達します。
レクサス販売店のスタッフは「マフラーの本数が増えることで、通常モデルのRCとは違う高性能車であることが一目でお客さまに伝わる」とも話しており、マフラーはエクステリアにおいて、重要な役割を担っています。
これは、軽自動車でもコペンがマフラーを左右両側に備えている理由としても、RC Fのように「普通とは違う」ことを伝える、デザインの差別化のためといえるでしょう。
1本出しマフラーが多い軽自動車のかでも異色の左右2本出しとなるダイハツ「コペン」
クルマによってマフラーの本数が異なる理由は、燃費や騒音低減といった実用的な要素のほか、デザインのバランスを取ったり差別化を図るという「見た目」の意味もあるようでした。
そのため、燃費や使い勝手が重視される軽自動車では本数が少なく、逆に走行性能やデザインが重視される大排気量車や高級車では本数が増えています。
クルマをひと目見たとき、マフラーを最初にチェックするユーザーは少数派でしょう。しかし、各自動車メーカーは実用性とデザイン性の両立のため、マフラー1本という細部にまでこだわっています。
街で好みのクルマを見かけた際は、マフラーの本数という部分まで注目すると、新たな発見があるかもしれません。
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