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創始者の名前がついた「エンツォ フェラーリ」は、永遠だ!【エンツォ物語:02】

くるまのニュース / 2020年7月17日 19時10分

日本人デザイナーによる唯一のフェラーリのスペチアーレ「エンツォ フェラーリ」。この伝説的なフェラーリスペチアーレにまつわるストーリーを3回に分けてお届けしよう。第2回は、エンツォの生い立ちとメカニズムの物語だ。

■「F50」オーナーからのリアルな声を反映させた「エンツォ フェラーリ」

 スーパースポーツとしての「エンツォ フェラーリ(以下エンツォ)」の魅力は、もちろん現在においても不変だが、誕生が2002年であることを考えると、改めて驚きを隠し得ない。

 スーパースポーツの世界における時間の流れは、一般的な自動車のそれと比較すると格段に速く、そして残酷である。その轟々たる流れのなかでエンツォはなぜその輝きを失わないのか。エンツォというスーパースポーツの姿を再検証しながら、その理由を探ってみよう。

 前作「F50」で、ノーメックス・ハニカムをサンドイッチした、CFRP製のモノコックタブを基本構造体に採用したフェラーリにとって、その後継車たるエンツォでもそれを採用することは当然の選択であった。

 ただしCFRPパネルに挟み込まれるハニカムは、さらに強度面でのアドバンテージが得られるアルミニウムに変更されている。その前方にサブフレームを組み合わせているのもF50と同様の仕組みだが、エンツォではさらにリアにもサブフレームが採用されることになった。

 それはF1マシンと同様、モノコックタブにエンジンをリジッドマウントし、エンジン自体をも構造体として機能させるという、きわめてストイックなエンジニアリングに対して、F50のカスタマーからネガティブな評価が下されたことに対しての対応策でもあった。

 実際にF50をドライブした経験をお持ちの方であれば、走行中にリアミッドのV型12気筒エンジンからの脈動が、タブ全体を激しく振動させるのを記憶されているかと思う。

 F50には着脱式のコンパクトなルーフが備えられているが、それによってキャビンのオープン化を可能としたことさえ、この振動対策のひとつではないかとさえ考えたくなるくらいだ。

 この経験からフェラーリは、エンツォにサブフレームを与え、パワーユニット一式を、マウントを介してそれに搭載する手法を選択した。ボディはクローズドタイプとなり、モノコックタブにはフロントウインドウフレームと一体成型されるルーフセクションが組み合わされた。

 左右のドアは1970年代に製作されたコンペティションモデルの「512M」をもイメージさせるスイングトップ式。フロントノーズに向けてのスタイルが、F1マシンのノーズコーンをモチーフとしたものであることは誰の目にも明らかだろう。

 先行して公開されていた「FX」から、ほとんどディテールを変化させることなく発表されたエンツォのボディは、もちろん軽量なCFRPパネルによって成型されている。

 長いフロントオーバーハングや、そこから前後フェンダーに頂点を設け、前後方向に滑らかな流れを生み出しているウエストライン。あるいは後にフェラーリのさまざまなロードモデルへと継承されることになる円柱型のテールライト等々、エンツォのデザインはフェラーリ、そしてピニンファリーナの作らしく、実に斬新で魅力的なものだった。

 リアエンドには速度可変式のフラップが与えられているが、走行中のダウンフォースのほとんどは、アンダーカウルで形成されるヴェンチュリートンネルによって得る仕組みとなっている。

 興味深いのは、グランドエフェクトカーでは避けることのできない速度とダウンフォース量の一義的な比例関係を、フェラーリはアンダーボディのフロントホイール前方に、可変フラップを装備することで解消していることだ。

 ちなみに200km/h→300km/h→最高速の350km/h時の総ダウンフォース量を比較すると、344kg→775kg→558kgという数字になる。

 さらにグランドエフェクトカーにとって重要なのは、ヴェンチュリートンネル、すなわちアンダーカウルと路面との間のクリアランスを一定に保ち、同時にこのトンネル内に導入したエアを逃がすことなく使い切ることなのだが、フェラーリはそれに対しても万全の策を講じていた。

 プレミアムモデルとしての性格から、そもそも非常にストローク量の短いサスペンションを採用することが可能だったからこそ、最大限の効果を生み出す手法だったともいえるだろう。

■「エンツォ」はどうして巨大なリアウイングなくて300km/h以上で走れるのか?

 リアミッドに搭載されるエンジンは、デビュー以前にはV型10気筒という噂も絶えなかったが、フェラーリの選択は当然のことのようにV型12気筒だった。

 プロトタイプの「M3」では、F140A型と呼称されたのに対して、量産型のエンツォでは新たにF140Bという型式名が与えられた。

 しかし、このエンジンは過去の12気筒エンジンとは一切の関連性を持たない、まったく白紙の段階から新設計されたDOHC4バルブユニットである。

ボア×スローク値は、92×75.2mm。ブロックはアルミニウム素材=ALS17を用い、660psの最高出力を得たボア×スローク値は、92×75.2mm。ブロックはアルミニウム素材=ALS17を用い、660psの最高出力を得た

 ボア×スローク値は、F50用のF130型と比較して7mm大きなボア径の設定となる92×75.2mm。ブロックはアルミニウム素材=ALS17で成型されている。

 F50用のF130型は、それ自体が応力負担のための構造体として使用する事情から、ノジュラー鋳鉄製であったため、重量面でのアドバンテージは大きい(事実F140B型ユニットの単体重量は225kg抑えられている)。

 その一方でサイズ的には特に前後方向での拡大は避けられなくなるが、実際に見るF140B型ユニットでは前後方向の大きさよりも、むしろ重心高低下を目的に、ドライサンプの潤滑方式を採用したことに加え、上下方向が驚異的なまでにコンパクトな設計となっていることの方が印象的だ。

 Vバンクの角度は65度。振動面でもこれならば十分に対応の余地はある。さらに吸排気の両側に連続可変をおこなうバルブタイミングシステムを装備したほか、吸気システムには可変慣性過給を採用。その結果5998cc排気量から、プロトタイプのF140A型からさらに10psのエクストラとなる660psの最高出力が得られることになった。

 このパワーを後輪から路面に放出するためのシステムは、前方から後方に向かって、215mm径のツインプレートクラッチ、加速側30%、減速側50%のロッキングファクターを設定したLSD式デファレンシャル、トリプルコーンシンクロメッシュを全ギヤに適応させた、6速の縦置きギヤボックスという構成だ。

 ロボタイズドミッションのF1マチックが採用されたのも、エンツォでの大きなトピックスだった。ちなみにエンツォ用F1マチックの制御モードは、スポーツとレースの2タイプ。後者ではローンチコントロール機構へのリンクも可能となる仕組みだった。

 ちなみにエンツォは、このパワートレインシステム一式の搭載を、2650mmのホイールベース内で実現している。

 F50比では70mmほど大きな数字であるが、1660mm/1650mmという前後のトレッド値を考え合わせれば、その比率自体はF50から変化がないことが理解できる。ホイールベースの延長は、高速域における安定性確保に直接の狙いがあったと見るのが妥当なところだろう。

 前後のサスペンションは、プッシュロッド方式のダブルウィッシュボーンデザイン。ダンパーとコイルスプリングのユニットは水平方向にインボード配置され、ダンパーには電子制御方式の減衰力可変システムも組み込まれている。

 ブレーキはブレンボとの共同開発で誕生したCCM=カーボンセラミックマテリアル製ディスクを採用したもの。これによって1輪あたりのバネ下重量は12.5kg軽量化することが可能になった。

 キャリパーはフロントに6ポッド、リアには4ポッドが組み合わされている。タイヤはフロントに245/35ZR19、リアに345/35ZR19サイズのブリヂストン製ポテンザRE050Aスクーデリアを装着。これはエンツォ専用タイヤとなる。

 ドライウエイトでわずかに1255kgというエンツォは、0−100km/h加速3.65秒、0−200km/h加速9.5秒、最高速350km/h以上という究極のスーパースポーツだった。

 しかしエンツォのストーリーは、ここまででは終わらなかった。ここからさらにデビュー時には想像することさえできなかった派生形が続々と生み出され、世界のスーパースポーツファンを強く刺激して止まない存在となったのだ。

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