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スーパーカー少年はみんな憧れた! ロータス「ヨーロッパ」の大いなる誤解とは【THE CAR】

くるまのニュース / 2020年7月26日 11時50分

日本でのスーパーカーブーム時代に、間違いなく主役だった1台がロータス「ヨーロッパ」、しかも「スペシャル」だった。本来、安価でホンモノのスポーツカーを目指していたヨーロッパが、どうして日本ではスーパーカーにまで奉られることになったのだろうか。

■安価でホンモノのスポーツカーを目指した「ヨーロッパ」

 ロータス「ヨーロッパ」が、いまだに「スーパーカー」として認められているのは、ひとえに、スーパーカーブームのきっかけとなった漫画『サーキットの狼』で主人公のパートナーだったからにほかならない。

 もっというと、原作者である池沢早人師氏自身がヨーロッパを駆って体験したスポーツカー仲間たちとの交流が、原作のアイデアの源泉になっていたから、である。

 それゆえ、スーパーカーとしてのヨーロッパは、最終モデル、すなわちビッグバルブの1.6リッターDOHCを積む「スペシャル」の、それも左ハンドル仕様=当時のアトランティック正規輸入モデルで北米仕様(今回撮影したような個体)に限られるといっても過言ではない。なぜなら、それこそが、池沢先生=風吹裕矢が乗っていた仕様だったからだ(さらに大きなリアウィングを付けていた)。

 それ以外のヨーロッパ、「S1」、「S2」といったブレッドバンタイプのモデルは、ロータス製ツインカムエンジンではなくルノー製パワートレインを積んでいたこともあってか、「ツインカム」や「スペシャル」ほどには、スーパーカー小僧の注目を集めることも、またなかった。

 そして、面白いことに、マニアの注目を集めるのは、逆に、ロータスの創始者であるコーリン・チャップマンが描いた理想像に近い初期の2モデル、つまりロータス「タイプ46=S1」、「タイプ54=S2」、そしてレーシングの「タイプ47」、「タイプ62」であり、「タイプ74」以降ではない場合が多い。

 ヨーロッパというクルマに対する、大いなる誤解はそこから生まれた。

 ヨーロッパが本質的にスーパーカーなどでなかったことは、ロータスファンなら誰でも知っていることだ。

 1960年代に、マトラ、ランボルギーニと並んでミドシップを採用した先鋭さと、名門ロータスからリリースされたという事実、そして漫画のヒーローによる無敵のパートナーイメージなどが結びついて、1960年代のイギリスを代表するスポーツカーのように考えられている。

 けれども、実際はそうではなく、あの時代のロータスにおけるスポーツカーといえばあくまでもFRのエランであり、ヨーロッパとはその名の通りあくまでも大陸において売り出す、安価で楽しいスポーツカーの新提案でしかなかった。

 ミドシップも、ランボルギーニのようにそれがロードカーとして最先端だったから採用したのではなく、地産地消の非力だがメンテナンス性に優れたパワートレインを使って本格スポーツカーを成立させるための手段でしかなかった。

 コーリン・チャップマンにとって、ミドシップなどはレースカーで使い慣れたレイアウトでしかなく、それを売りにする高価なスポーツカーを作るなどという考えなど、ハナからなかったはずだ。

 だから、ヨーロッパは、エランの後継では決してない。値段も、半額とはいわないまでも、かなり安かった。

 あえていえば、ヨーロッパは、ロータス・セブンの後継であった。誰もが乗って楽しめる、安価でホンモノのスポーツカーを目指していた。

 だからこそ、ルノーのパワートレインを積み、まずはフランスだけで発売されたのだった。

■旧世代のスーパーカーに共通する特徴とは?

 実をいうと、漫画『サーキットの狼』をしっかり読み込んでみれば、池沢先生自身も、ヨーロッパをスーパーカーとして捉えていたわけでは決してなかったことが、分かるはずだ。読者であるボクたちが、フェラーリやランボルギーニに目を奪われていたなかで、勝手に一緒くたにしてしまった。

 もっとも、当時の日本車事情を考えれば、ロータス・ヨーロッパも憧れのガイシャ、高価なスポーツカーであったことには違いないのだが。

モノコック・ボディにミドシップエンジンを搭載する当時最先端の技術を取り入れ、新時代のピュアスポーツとして登場モノコック・ボディにミドシップエンジンを搭載する当時最先端の技術を取り入れ、新時代のピュアスポーツとして登場

 漫画のコンセプトは、勧善懲悪型のスポコン育成物語である。つまり、庶民派のヒーローが、手にしうる最高のパートナーでもって、強敵(お金持ちや最新マシン)に立ち向かい、幾多の困難を乗り越えて、最終的に頂点に立つ。そのプロセスに、読者は自分の成長を重ね合わせて夢中になる。

 サーキットの狼の場合、たまたま、その倒すべき強敵の役どころとして、当時最新のスーパーカーたちに白羽の矢が立ったわけで、決して、スーパーカーが主人公の物語ではなかった。スーパーカーはむしろ悪役。スーパーカーブームとは、ウルトラマンにおける怪獣ブーム、仮面ライダーにおける怪人ブームのようなものだったのだ。

 旧世代と新世代の激しい戦いも存在した。主人公側の仲間たちが乗っていたのは、池沢氏のまわりに実在したオーナーたちが楽しんでいた旧世代、つまりは1960年代の名車たち、ヨーロッパや「ディノ」、「ミウラ」、「ナローポルシェ」であったのに対して、敵となる人物が駆ったのは、新参でパワーもあって高価なクルマたちであった。それが、スーパーカーというものなのである。

 昔、丸い目玉がむき出しになったクルマが嫌いだった。リトラクタブルライトのスーパーカーに憧れた世代にとって、丸いヘッドライトがそのまま見えるという事実は、旧世代であることの証拠であったからだ。リトラクタブルライトブームと並行して、乗用車の世界では角目や異形が主流になっていくから、丸目は、やはり古いクルマであることの象徴となった。

 クラシックカー好きとなった今となっては、画一的な丸目でありながら表情豊かな旧世代に、ひどく憧れる。歳を取ったのかもしれない。けれん味たっぷりの最新空力モダンな顔には、もはや嫌悪感さえ覚えることがある。リトラクタブルライトにしても、開けてみれば丸目である。時代は変わった。

 そういうわけで、ロータス・ヨーロッパは、勧善懲悪のヒーローであったことからも分かるように、決して、絶対性能に優れた高級車ではなかった。否、ロータスが作ったスポーツカーだったから、造りは多少雑であっても、一流のハンドリングマシンであったし、1960年代のスポーツカーのなかでは秀でたドライビングファンを持っていたのだろう。

 そして、その理想をもっともよく表現しているのが、やはり初代のS1であるという事実が、近年、S1、もしくはS2前期に憧れるマニアが多いという事実からも伺える。

 1966年末に登場したルノー製82psエンジンを積むS1を、イメージ的にはスーパーカーとなったアメリカ仕様左ハンドルのストロンバーグキャブヘッド搭載ビッグバルブ・スペシャルが追い抜くことは、恐らく不可能だ。

 そこが、誤解を紐解く鍵でもある。

* * *

●LOTUS EUROPA SPECIAL
ロータス・ヨーロッパ スペシャル

・生産年:1972−1975年
・年式:1972年
・総排気量:1558cc
・トランスミッション:5速MT
・最高速度:200km/h
・全長×全幅×全高:4000×1635×1080mm
・エンジン:直列4気筒DOHC 16バルブ
・最高出力:126ps/6000rpm
・最大トルク:15.6kgm/5500rpm

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