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脱税スーパーカーを博物館で展示!? 気になる押収車のその後は?

くるまのニュース / 2020年7月27日 8時10分

イタリア・トリノ自動車博物館で、一風変わったテーマのクルマたちが展示されることになった。博物館ホールに集められたのは、なんと脱税の容疑で差し押さえられたスーパーカーやクラシックカーばかり。どうしてこれだけのクルマが集まったのだろうか。

■脱税の疑いでスーパーカーが押収された!

 イタリアで興味深いニュースが舞い込んできた。

 トリノ自動車博物館で、ジェノバで脱税のため押収された高級車、バイクが公開展示されるという。……押収?

 押収されたクルマのリストを見るとフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェなどなど、高級車の名前がずらりと並んでいる。一体どんなことが起こったのだろうか? そしてなぜ、トリノ自動車博物館?

 いろいろな疑問を抱きながら、トリノの記者発表にいってみることにした。

 11時に会場に着くと、正面に見える吹き抜けのエントランスのロビーの右側に高級車が円を描くように1列に並んでいた。

 広々としたロビーには陽射しが差し込んで、シルバーの壁の色と溶け込み、清々しい空気が流れていた。まるで高級車メーカーの発表会のようだ。

 左側のコンファレンス・スペースには間隔をあけて置かれた椅子が用意されていた。まだまだ公共施設はコロナ感染防止には敏感だ。博物館の入り口にはイラスト入りで感染防止対策の注意事項が大きく書かれていた。とても分かりやすい、「マスク、間隔確保、手洗い、体温検温」は必須という注意事項だ。

 すでに会場には記者発表を待つ関係者が集まり、クルマの周りでは、関係者同士でいろいろな質問が飛びかっていた。

 コンファレンスのメインスペースには、“Rien ne va Plus”と書かれたパネルがあった。そこには押収車・バイクの写真が掲載されていた。

 向かって左には鮮やかなコバルトグリーンのコルベット、紫がかったピンク色のディアブロ、そして右は真っ赤なテスタロッサ、真っ赤なビアンキーナ、真っ赤なフィアット500、と3台のまっ赤なクルマが並んだ。

 モーターショー会場と違うのはそのクルマの脇に財務警備隊が立っているということだ。その制服姿を見ると、それだけで緊張感が走る。

“Rien ne va Plus“とはフランス語で「もうゲームは終りだ」というような意味だそうだ。よくカジノで使われる言葉らしい。

 そしてこの言葉が今回の「脱税者追跡プロジェクト」のタイトルだという。なんと粋な名前。日本では、事件の対策本部にこんな気の利いたオシャレな名前は付けられないだろう。脱税者に「もうゲームは終わったよ、逃げるなよ」と告げているようだ。

■ランボにフェラーリ……押収車の行方は?

 この事件のことの発端は、ジェノバに次々と高級車を買い換え、乗りまわしている男性がいたことにはじまる。それだけで目立っていたのだろう。

 ヨーロッパではクルマ、船、家、宝石、絵画、など高級な物を持っていると出処を調べられることがよくある。この男性も税務署に目をつけられてしまった。

博物館のホールに並ぶ押収車たち博物館のホールに並ぶ押収車たち

 ジェノバの財務警備隊がこの男性の素性を調べてみると、男性は高級車を乗り回せるほどの収入は無かった。そして彼名義の財産もまったく無かった。

 こうなると誰もが「おかしい」と思うだろう。直ぐに“Rien ne va Plus“のプロジェクトが動き出した。2018年のことだった。

 財務警備隊に睨まれたらもう逃げられない。彼らは世界中にネットワークを持っているので何処でも追跡可能だ。

 財務警備隊は、直ぐにこの男性の携帯電話を押収。そこからクルマの販売情報、それに関わる人名が次々と炙り出された。この男性は以前から、自分の名前を一切出さずに陰でクルマの売買をおこなっていたのである。しかも高級車ばかり。

 クルマの名義は恋人、家族、友人、と自分の存在を隠すためにいつも他人の名前を使っていたという。とくにこの男性の知人の2人のイタリア人は、住居をモンテカルロに移し、税金を免れるために登録をモンテカルロにしていたようだ。まさにヨーロッパを股にかけた脱税作戦だ。

 財務警備隊の調べは徹底している。ジェノバの財務警備隊によると、男性は2013年から2018年の間に25台のクルマを販売したようだ。メーカーは、マセラティ、ランボルギーニ、ポルシェ、ベントレー、そして8台のフェラーリなど。

 そのなかには1948年製のフェラーリ「166インテル」もあり、アメリカ人コレクターに100万ドルで販売したという。

 そして、その25台の内の8台(3台のフェラーリ、コルベット、そして生産台数185台中26番目ランボルギーニ「ムルシェラゴLP670-4SV」など)は、モンテカルロのオークション「Classic & Sport Car」とイギリスの「Goodwood Festival of Speed」のオークションに出品する予定が確認され、直ぐに押収となった。

 さらに身辺を調査すると、クルマのほか、ジェノバに4つの高級マンションの不動産も別人名義で所有していたという。

 まさに、“Rien ne va Plus”、もうゲームはおしまい、逃げられない! だ。

 現在、この男性は国から450万ユーロ(約5億5千万円)の追徴課税が課せられているという。

 今回、ジェノバの財務警備隊チームは大活躍したわけだが(?)、彼らのネットワークを駆使して、ジェノバ、マラネッロ、モンテカルロ、南仏、イギリスを舞台に、合わせて20台のクルマ・バイクを押収することができた。

 また、ジェノバ財務警備隊は、トリノ自動車博物館にクルマの価値調査、メンテナンス、またこのクルマを公開することも念頭に入れ、20台のうちの17台を博物館に運んだ。

 押収されたクルマは、新旧共に重要な個体であるため、彼ら(ジェノバ財務署)の範疇ではないクルマに関することはすべてトリノ自動車博物館に委ねることにしたのだ。これらの押収車の方向性が決まるまで、博物館で保管するということになっている。後にオークションに出品される可能性も十分にある。

●押収車リスト

 なお、ジェノバの財務警備隊の“Rien ne va Plus“プロジェクトで押収し、トリノ自動車博物館に運ばれたクルマ・バイクのリストは下記のとおりだ。

・フェラーリ「430スクーデリア」(2009年登録)
・フェラーリ「360チャレンジストラダーレ」(2003年登録)
・フェラーリ「テスタロッサMonodado」(1987年登録)
・ランボルギーニ「ディアブロ132 SE 30 Anniversary」(1994年登録)
・ランボルギーニ「ムルシエラゴLP 670-4 SV」(2009年登録)
・シボレー「コルベットC1カブリオレ」(1958年登録)
・ポルシェ「ボクスター」(2014年登録)
・アウトビアンキ「ビアンキーナ」(1960年登録)
・アウトビアンキ「ビアンキーナ・カブリオレ」(1966年登録)
・BMW「イセッタ300」(1959年登録)
・ローバー「ミニ・クーパー」(1992年登録)
・フィアット「500 Jolly Ghia Capri(レプリカ)」(1959年登録)
・フィアット「600ムルティプラ」(1964年登録)
・フィアット「500 Gamine Vignale」(1968年登録)
・ハーレーダビッドソン「FL3 Road King, immatricolata」(2016年登録)
・ハーレーダビッドソン「Custom」(1999年登録)
・ハーレーダビッドソン「Heritage Softail」(1999年登録)

 まさに、高級または希少なクルマとバイクばかりだ。

* * *

 詐欺集団は世界中どこにでも存在する。たとえ、有名なオークション会社でも騙されてしまうことがある。ワケありのクルマをつかまされてしまった時はすべて自分の責任になってしまう。

 貴重なクルマを購入する時は、慎重に調査をしてすべてを把握することが重要だ。

 今回のジェノバ財務警備隊とトリノ自動車博物館のコラボレーションの試みは自動車文化にとって重要な一歩となることだろう。

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