スカイラインGT-Rを超えるのに10年かかった!? 牙を抜かれた頃の国産車5選
くるまのニュース / 2020年7月27日 6時10分
現在のクルマはクリーンな排出ガスで燃費が良く、高性能なモデルも数多く存在します。一方で、かつては排出ガス規制の強化で、パワーダウンを余儀なくされた頃もありました。そこで、1970年代に排出ガス規制によって牙を抜かれたモデル、5車種をピックアップして紹介します。
■パワーダウンを余儀なくされたころの国産車を振り返る
現在、厳しい排出ガス規制下であっても、高性能化が進み続けています。これは燃料の燃焼解析技術や制御技術、浄化技術などの進歩によって、実現しました。
日本では、昭和41年(1966年)から自動車の排出ガス規制が開始され、年々強化されてきた歴史があります。なかでも昭和48年規制(1973年施行)から昭和53年規制(1978年施行)が、もっとも規制強化が図られた時期です。
光化学スモッグを引き起こす原因物質であるHC(炭化水素)やNOx(窒素酸化物)、中毒症状を引き起こすCO(一酸化炭素)などの大気汚染物質を削減するため、各自動車メーカーとも最重要課題として対応しました。
そのため、当時、メーカーはモータースポーツへの参戦を休止して排出ガス対策の研究に注力し、さらにエンジンのパワーダウンも余儀なくされるなど、スポーティなモデルには不遇の時代が訪れたといえます。
そんな、排出ガス規制の強化で牙を抜かれたといわれた頃の国産車を、5車種ピックアップして紹介します。
●三菱「ランサーEX」
スポーティなグレードでもエンジンは今ひとつだった「ランサーEX」
三菱初代「ランサー」は1973年2月に発売されました。エンジンのバリエーションは1.2リッター、1.4リッター、1.6リッターの直列4気筒を設定。
デビューから遅れて同年8月に登場したスポーティグレードの「ランサー1600GSR」は、1.6リッター直列4気筒SOHCの「4G32型」エンジンにソレックスツインキャブレターを装着し、最高出力110馬力を誇りました。
FR駆動で825kgと軽量な車体に5速MTを標準装備するなど、国内外のラリーなどモータースポーツで活躍し、後のランサー=ラリーというイメージが確立します。
そして、1979年に2代目となる「ランサーEX」が発売されました。トップグレードの「1600GT」には4輪ディスクブレーキがおごられるなど、スポーティさをアピールしていましたが、最高出力は86馬力と初代よりも大幅ダウンを余儀なくされました。
再びランサーがパワーを取り戻すには、ターボ時代の到来によって、1981年に登場する「1800GSRターボ」まで待たねばなりません。
●トヨタ「カローラレビン」
偉大な初代を超えられなかった2代目「カローラレビン」(画像は前期型)
1966年に発売されたトヨタ「カローラ」は、高速時代を見据えた新時代の大衆車としてデビュー。
1970年には2代目が登場し、さらに1972年には高性能版の「カローラレビン」と姉妹車の「スプリンタートレノ」が加わります。トップグレードには、初代「セリカ」に搭載された1.6リッター直列4気筒DOHC「2T-G型」エンジンが採用され、オーバーフェンダーが装着された2ドアクーペのボディと相まって、たちまち若者を虜にします。
この2T-G型には有鉛ハイオク仕様と無鉛レギュラー仕様が設定され、それぞれ115馬力と110馬力を発揮。
1974年には2代目が発売され、エンジンも初代を継承しましたが排出ガス規制に完全に対応できず、わずか1年も経たずに販売を終えます。
そして、1977年にカローラレビンが復活し、エンジンはキャブレターから電子制御燃料噴射装置(インジェクション)に代えられ、無鉛レギュラーガソリン仕様のみの設定で、最高出力は110馬力を発揮。
初代のレギュラー仕様と変わらない出力ですが、有鉛ハイオク仕様と比べると、圧縮比が9.8から8.4まで下げられており、最高出力を発生する回転数も6400rpmから6000rpmまで下がってしまいました。
その後のマイナーチェンジで115馬力に向上しましたが、やはりキャブレター仕様の高回転まで回るフィーリングやパンチ力を超えらなかったといいます。
なお、初期の2T-G型は余計なデバイスが付いてないという特徴もあり、旧車のなかでも初代カローラレビン(スプリンタートレノ)は、いまも高い人気を誇っています。
●日産「スカイライン2000GT-X・E」
パワー的にはキャブ仕様と同等だったインジェクション仕様の「スカイラインGT-X・E」
日産「スカイライン」の高性能モデルというと、1969年に登場した「スカイラインGT-R」です。
初代スカイラインGT-Rは市販車をベースにしたツーリングカーレースで勝つことを目的に開発され、エンジンは2リッター直列6気筒DOHC4バルブの「S20型」を搭載。2バレルのソレックスキャブレターを3基搭載し、最高出力は160馬力(有鉛ハイオク仕様)を発揮するという、当時の水準を大きく超えたエンジンでした。
1973年に登場した2代目スカイラインGT-Rにも同スペックのS20型が搭載されましたが、排出ガス規制に適合できず、わずか197台の生産で販売を終了。
その後、スカイラインのトップグレードはインジェクション化された「L20E型」エンジンを搭載する「2000GT-X・E」となり、最高出力はツインキャブ仕様と同じ130馬力をキープしますが、その後もパワーアップすることはありませんでした。
1980年代に入るとターボ化が加速して、1981年にはスカイラインにDOHCエンジンが復活しましたが、スカイラインGT-Rの160馬力を上まわる出力は、1983年に登場した2リッター直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載した「ターボRS」(190馬力)によって達成されるまで、10年もかかったことになります。
■排ガスのクリーン化に成功したが、スポーティではなくなったモデルとは
●ホンダ「シビックRSL」
排出ガス対策と同時に高出力化もおこなったが、「RS」には到達できなかった「シビックRSL」
ホンダは1972年に、新時代のコンパクトカーである初代「シビック」を発売。駆動方式をFFとし、広い室内と優れた経済性から大ヒットします。
デビュー当初は60馬力の1.2リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載した2ドアで、トランスミッションは4速MTのみの設定と、シンプルなグレード構成でした。
そして、1973年にシビックに1.5リッター直列4気筒のCVCCエンジンを搭載。CVCCエンジンはパスすることは不可能とまでいわれていた、アメリカの排出ガス規制、通称「マスキー法」の規制値を、後処理も無しに世界で最初にクリアしたエンジンです。
1974年には1.2リッターから76馬力を発揮するツインキャブエンジンと、欧州仕様の足まわり、13インチタイヤなどを装備するホットモデルの「RS」を発売。
しかし、RSはわずか1年ほどで生産を終了。後継車はシングルキャブの1.5リッターCVCCエンジンを搭載する「RSL」で、毎年のように環境性能と動力性能が改良されて75馬力に到達しましたが、出力的には1.2リッターのRSを超えられませんでした。
その後、1979年に2代目シビック(スーパーシビック)がデビュー。トップグレードの「CX」は1.5リッターで85馬力を発揮しましたが、真の高性能モデルは次世代3代目(ワンダーシビック)が本命となります。
●スズキ「セルボ」
見た目はスポーツカーながら出力大幅ダウンを強いられた「セルボ」
スズキは1971年に、軽自動車初のRRスポーツカー「フロンテクーペ」を発売しました。デザインは、巨匠ジウジアーロの原案によるもので、低いフロントノーズと傾斜したフロントガラスからリアまで流れるように続く流麗なフォルムが特徴です。
フロンテクーペは、当初2シーターのみとされ、内装もタイトなコクピットにローバックタイプのバケットシート、インパネには6連メーターが設置されるなど、生粋のスポーツカーといえました。
ちょうど軽自動車のパワー競争が勃発していた頃とあって、搭載されたエンジンは最高出力37馬力を誇る3キャブレターの360cc2サイクル直列3気筒で、見た目だけでなくスポーティな走りも実現。
しかし、軽自動車にも排出ガス規制の波は押し寄せ、1974年には35馬力にパワーダウンし、1975年から軽自動車の排気量が550ccとなる新規格に移行したことで、1976年に生産を終了。
そして、1977年に後継車として初代「セルボ」が登場し、フロンテクーペのスタイルを継承するかたちで、ボディサイズと排気量は新規格に合致させていました。
エンジンは550ccの2サイクル直列3気筒でリア搭載。しかし、最高出力は28馬力と大幅に下がってしまい、フロンテクーペほどドラマチックなエンジンではなく、出力特性もマイルドでした。
なお、軽自動車が再びパワー競争によって出力が向上するのは1980年代に入ってからで、その頂点に立ったのは1987年発売の初代「アルトワークス」(550cc)による64馬力です。
※ ※ ※
現在、排出ガス規制だけでなく、騒音規制や燃費規制(メーカーに対して)、安全基準と、日本のみならず世界各国で自動車を取り巻く規制は強化されています。
それでも、各メーカーとも、パワーアップや運動性能の向上を続けているのは、驚異的なことです。
かつて、パワーを犠牲にしてでも排出ガスのクルーン化がおこなわれましたが、いまではなんら犠牲にすることなくパワーアップもできるのは、技術の進歩にほかなりません。
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