今さら聞けない、「クラシックカー」と「ヴィンテージカー」の違いとは?

くるまのニュース / 2020年8月2日 11時50分

最近よく目にする「クラシックカー」や「ヴィンテージカー」という古いクルマを指す言葉。本来の意味も知らずに古いクルマすべてをそう呼んでいる人もいるだろう。しかし、本来は厳格な年代による区別が存在する。そこでVAGUEがわかりやすくレクチャーしよう。

■フェラーリとポルシェには「ヴィンテージカー」は存在しない!

 ここ数年、日本のWEBメディアでも古いクルマが取り上げられる機会が増えているようだが、筆者が気になっているのは「ヴィンテージ」という言葉の乱用である。

 クラシックなクルマのすべてが、ヴィンテージカーと呼ばれていることには違和感を禁じ得ない。

「クラシックカー」に「ヴィンテージカー」。たしかに、古いクルマを指して呼ぶ言葉が乱立するあまり、非常に分かり難くなっているのは間違いのないところである。

 しかし、自由勝手に呼ばれている感のあるこれらの用語についても、実は厳密な年代別基準が存在するのだ。

 現在のクラシックカー界において、事実上のグローバルスタンダードとなっているのが、イギリスに端を発する区分け法である。

 1934年に創立され、いまなお世界でもっとも権威の高い自動車クラブと称されている「ヴィンテージ・スポーツカー・クラブ(VSCC)」が、その創立に際してもっとも豊穣なスポーツカーの製作された時期を1919年−1930年までと規定し、ワインの年代を示す用語から「ヴィンテージ」と名づけたのが発端とされている。

 ただし「ヴィンテージ」の称号は、年代の合致するすべてのクルマに与えられるのではなく、あくまでも優れたスポーツカーが対象。ワインと同じく、かなり厳しい審査がおこなわれていたという。

 またVSCCでは、ヴィンテージ期以降の1930年代に製作された秀逸なスポーツモデルを「ポストヴィンテージ・サラブレッド」と規定。

 さらに、ダイムラーとベンツがガソリン自動車を発明した1886年から1904年頃までに製作されたパイオニア期のモデルは「ヴェテラン」。そして、1905年ごろから第一次大戦の勃発する1914年ごろまでに製作されたクルマについては、当時の英国がエドワード7世国王(在位1901−1910年)の治世時代にあったことから「エドワーディアン」と呼ばれることになったとされる。

 これらは、もともとひとつのクラブ内の規定にすぎなかったのだが、この年代基準は英国内のみならず、現在ではヨーロッパ全体、さらには世界的な指標となるに至った。

 一方、第二次大戦後のモデルについて同クラブの規定は為されていないが、やはり英国を中心とするヨーロッパのエンスージアストの間で、半ば自然発生的に「ポストウォー・クラシック(1946−1959年)」、そして「モダン・クラシック(1960−1970年代)」と称されることになったという。

 したがってあくまで厳格にいうなら、第二次世界大戦後にメーカーが創業したポルシェやフェラーリなどについては、いずれも「ヴィンテージ」の称号は相応しくないのだ。

 とはいえ、欧州のみならずアメリカや日本でも魅力的なクルマが続々と現われた1960年代を、「’60sヴィンテージ」とする新基準も誕生するなど、その区分けは時代の流れに応じて変化しているのも事実である。

 さらに独自の自動車文化を形成しているアメリカにおいては、1930年以前のクルマを「アンティークカー」、1931−1960年を「クラシックカー」、そして1961年以後を「プロダクションカー」とする独自の年代基準も長らく信頼されてきており、これもクラシックカーの呼び方に混乱をもたらす要因となっている。

 このように、かなり厄介なクラシックカーの呼称だが、少なくとも長らく世界標準となってきた英国式だけでも覚えておくのも、これから自動車趣味をより深く嗜んでゆくためには決して悪いことではあるまい。

■「ヴィンテージ」よりも古い「ヴェテラン」とは?

 英国の「ヴィンテージ・スポーツカー・クラブ(VSCC)」の区分け法に則って、時代によって変わる呼び名を6つ紹介しよう。

●−1904年:ヴェテラン

ヴェテラン:ベンツ「パテントモトールヴァーゲン」ヴェテラン:ベンツ「パテントモトールヴァーゲン」

「ヴェテランカー」は、ガソリン自動車という乗り物がこの世に誕生して間もない、19世紀末から20世紀初頭に作られたクルマたち。いわゆる「馬なし馬車」である。

 エンジンの搭載位置や駆動方法がまちまちであること、あるいは原始的なレバー式のステアリングを持つことなど、パイオニア期ゆえの試行錯誤の集合体である。

 正確な年代の区切りについては意見が分かれるが、この年代のクルマによる代表的なイベント、復刻版「ロンドン-ブライトン・ラン」では1904年製作までを区切りとしていることから、ここでもそれに倣うことにした。

●代表的モデル
・1886年:ベンツ「パテントモトールヴァーゲン」
 カール・ベンツが開発・製作した「ガソリン自動車」という乗り物のパイオニア。1893年までに25台が生産されたといわれている。

・1895年:パナール「ルヴァッソール」
 エンジンを前方に置き、プロペラシャフトを介して後輪を駆動する「パナール・システム」を採用。現代に至る、すべてのFR車のパイオニアとなった。

●1905年−1914年:エドワーディアン

エドワーディアン:ロールス・ロイス「シルヴァーゴースト」エドワーディアン:ロールス・ロイス「シルヴァーゴースト」

 アンティークジュエリーの世界でも年代分けの指標となっている「エドワーディアン」期は、自動車の世界では、1905年頃から第一次大戦勃発直前までに製作されたクルマを指す。

 フロントエンジン/リアドライブや丸型のステアリングホイールなど、現代に至る自動車の基本レイアウトが確立された時期のモデルである。スポーツカーという概念が史上初めて登場したのもこの時期のことだ。

 また、とくにアメリカでは「ブラスカー(Brass Car)」と呼ばれるように、ボディ内外に真鍮製のパーツを大量装着するのも大きな特徴といえるだろう。

●代表的モデル
・1906年−1925年:ロールス・ロイス「40/50HPシルヴァーゴースト」
 創成期の自動車に「クォリティ」という概念を初めて構築したことから、ロールス・ロイスの名を「The Best Car in the World」なる称号とともに世界に知らしめた、傑作中の傑作。エドワーディアン期を代表する存在であるとともに、自動車史上初の「名車」ともいわれている。

・1910年−1923年:ブガッティ「T13ブレシア」
 ブガッティが自身のブランドとして、初めて製作・販売したモデル。「小型スポーツカー」という概念についても、世界で初めて構築した傑作車として知られている。

●1919年−1930年:ヴィンテージ

ヴィンテージ:ベントレー「41/2リッター」」ヴィンテージ:ベントレー「41/2リッター」」

 自動車、とくにスポーツカーにとって初めての黄金時代となった「ヴィンテージ」期には、ヨーロッパ各国で魅力溢れるスポーツカーが百花繚乱のごとく現われた。

 仏「ル・マン24時間」や伊「ミッレ・ミリア」などの世界的ビッグレースが誕生したこの時期には、スーパーチャージャーに代表されるグランプリレース直系の先進技術が生産車にも投入される一方、それらレース仕込みのスポーツカーたちがモータースポーツの現場で大活躍したのだ。

 また、ボディデザインの分野でも機能美という考え方が登場し、スパルタンだが美しいクルマたちが続出した。

●代表的モデル
・1924年−1930年:ブガッティ「T35」
 ヴィンテージ・スポーツカーの象徴的存在がブガッティT35。レースの成果はもちろん、自動車に「美」という概念を初めてもたらしたことから、のちの世のクルマたちに多大な影響を与えた。

・1927年−1930年:ベントレー「41/2リッター」
 英国製ヴィンテージ代表格にしてブガッティの宿敵と称された、開祖W.O.時代のベントレー。ル・マン5勝を獲得したパフォーマンスや、雄々しく野趣溢れるスタイルは、まさにヴィンテージ的といえるだろう。

■「ミウラ」や「2000GT」は、なんと呼ぶ?

 戦前のクルマはどれも同じに見えてしまう人でも、第二次世界大戦後に登場するクルマなら見分けがつくはずだ。

●1931年−1939年:ポストヴィンテージ・サラブレッド

ポストヴィンテージ:アルファロメオ「8C2900Bルンゴ」ポストヴィンテージ:アルファロメオ「8C2900Bルンゴ」

 1930年代を迎えた「ポストヴィンテージ」期には、現代の自動車の中核をなすテクノロジーがおおむね出揃った一方で、エンジンの多気筒化や過給器の一般化、サスペンションの独立懸架化も進行した。

 また、ボディデザインの分野でも「流線型」が全世界的なトレンドとなるなど、スピードに対する飽くなき憧れと探究心が爆発することになった。

 とくにヨーロッパでは、国威発揚のためにモータースポーツが利用されたことから、この時期にはスポーツカーを筆頭に国家間競争の様相を呈するが、第二次世界大戦の勃発によって、自動車の開発も一時中断してしまう。

●代表的モデル
・1937年−1939年:BMW「328」
 全輪独立懸架の先進的なシャシに、性能・効率ともに極めて高度な直列6気筒エンジンを搭載。モータースポーツでも大活躍し、戦後のスポーツカーづくりに多大な影響をもたらした。

・1938年−1939年:アルファ ロメオ「8C2900Bルンゴ」
 第二次大戦前のアルファ ロメオは、現代のフェラーリに相当する超高級スポーツカーだった。この8C2900BもGPカー譲りのスーパーチャージャーつきDOHCエンジンや全輪独立懸架、空力的ボディを持つ逸品。 豪奢なボディを持つ「ルンゴ(ロング)」版ながら、戦後初となった1947年のミッレ・ミリアでは総合優勝も果たした。

●1946年−1959年:ポストウォー・クラシック

ポストウォークラシック:フェラーリ「250GT」」ポストウォークラシック:フェラーリ「250GT」」

 第二次大戦の終結後に製作されたクルマたちについては、それ以前のモデルほどの厳密な区分けは存在しないが、1959年までのモデルについては「ポストウォー・クラシック」と呼ばれるのが一般的のようだ。

 フェラーリやポルシェ、ロータスなど、現代のスポーツカー界をリードするメイクスが創業したのは、すべてこの時期のことだった。

 この時代には、それまで独立していた前後フェンダーがボディに一体化されるなどのデザイン革新に加えて、大戦中に獲得した航空機技術が自動車にも投入されたことから、より高性能かつ魅力的なクルマたちが登場することになる。

●代表的モデル
・1948年−1963年:ポルシェ「356」
 現代の「911(992シリーズ)」にも継承されたRRレイアウトを持つポルシェ356が誕生したのも、このポストウォー・クラシック時代のことだった。ポルシェ博士が第二次世界大戦前からあたためてきた夢は、世代を超えて通用したことになる。

・1954年−1964年:フェラーリ「250GT」
 現代スポーツカー界の至宝、フェラーリが創業したのは1947年。V型12気筒エンジンを搭載した一連の跳ね馬はいずれも傑作ぞろいだが、とくに1954年に登場した250GTシリーズは、モータースポーツからストリートに至るあらゆる舞台で大成功。フェラーリの名声を全世界に轟かせることになった。

●1960年−:モダン・クラシック(’60s/’70sクラシック)

モダンクラシック:ランボルギーニ「ミウラ」」モダンクラシック:ランボルギーニ「ミウラ」」

 われわれ日本のクラシックカーファンにとってもっとも身近な1960年代以降のモデルは、「モダン・クラシック」と称されることが多い。また、1960年代を戦後の自動車にとってもっとも豊穣な時期と見なしたことから、この時期の逸品たちを「’60sヴィンテージ」と呼ぶこともある。

 加えて、近年では1970年代のモデルもクラシックとしての認知を得て「’70sクラシック」という独立した存在と見なされることも多くなった。

 そして、この時期になると欧米車に加えて日本車にも魅力的なモデルが登場するが、その場合はとくに「旧車」という呼称も存在するようだ。

●代表的モデル
・1966年−1972年:ランボルギーニ「ミウラ」
 1963年創業のランボルギーニ社は「元祖スーパーカー」の称号を捧げられたミウラとともに、世界の自動車界のスターダムにのし上がった。

・1967年−1970年:トヨタ「2000GT」
 世界的なスポーツカー競争に日本車が参入したのも、このモダン・クラシック時代。日本代表選手たるトヨタ2000GTは、その性能と美しさで欧米の愛好家たちをも魅了したが、1970年にはわずか337台で生産を終えることになってしまった。

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