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車外放出「ありえない」 警察も車も騙すシートベルトの「たすき着用」 誤った着用取り締まれない訳

くるまのニュース / 2020年8月5日 9時10分

交通事故の際に、私たちの体を守る装置としてクルマに装備されているのがシートベルトです。着用していなかったことで死亡事故に発展したケースがいまなお存在するといわれますが、一方で自己流の誤った装着法をしていたことで、効果が発揮されず死亡事故に発展したケースもあるといいます。いったい、どんな状態が不適切なのでしょうか。

■遺族「今すぐやめて」 死亡事故に繋がるシートベルトの不適切な使用法とは

 高速道路での激しい衝突事故や横転事故においてはもちろん、急ブレーキの衝撃からも私たちの体を守ってくれるシートベルト。クルマの外に放り出されたり、シートから転がり落ちたりすることを防いでくれます。

 しかし、間違った状態でシートベルトを使用していると正しい拘束力が働かず、車外に放り出されて亡くなることも少なくありません。いったい、どんな状態が危険なのでしょうか。

 シートベルトの正しい着用は道路交通法によって義務付けられており、日本では 1971年に運転席、1985年に助手席、2000年4月にチャイルドシート、そして2008年6月からは後部座席のシートベルト着用が義務化されました。

 つまり、2008年6月からはクルマに乗る人全員にシートベルト着用義務があります。

 しかし、シートベルトの重要性を知らない人のなかには「付け外しが面倒」「窮屈で嫌」「警告音が鳴ってうるさい」などの理由で、恐ろしい方法で使っている人もいます。

 それは、バックルにタングプレートをガチャっと差し込んだ状態でその上から座り、斜めのベルトだけを肩に掛ける方法です。外から見ればシートベルトを装着しているように見えます。

 この方法では警察のシートベルト取り締まりから逃れることも可能で、非着用の警告音が鳴ることもありません。そして拘束力がほぼゼロとなるので、体も自由に動かせますし、窮屈さとは無縁です。

 乗り降りが多い配送車のドライバーなども、この方法ならいちいちシートベルトを脱着する必要もありません。

 しかし、いつもこの方法で大型トラックに乗っていたドライバーの男性が、2019年8月に事故を起こし、中央分離帯に乗り上げた衝撃でトラックが横転。男性は車外に放り出され亡くなってしまいました。

 男性の娘さん(以下Mさん)は大変な悲しみのなか、このような悲しい思いをする人がひとりでも減ることを願って、SNSで注意喚起をおこないました。

「クルマに乗っている人は是非見てほしい。パパは昔からこの状態で上のシートベルトだけを前にかけて運転するのが癖でした。今回の事故の時もきっとこの状態だったと家族一同思っています。

 ちゃんとシートベルトをしていたら救われていたかもしれない命。そう思うと悔やんでも悔やみきれません。

 パパと同じシートベルトの着用をしている人は、今すぐやめてください。同じ思いをする人がひとりでも減ることを願ってこのツイートをさせていただきました。

 ひとりでも多くの人の目にとまり、ひとりでも多くの人の心に響き、ひとりでも多くの人がきちんとシートベルトの着用をすることを願っています」

 どのような事故だったのかをMさんに尋ねたところ、「父がトラックで中央分離帯をまたいで車体が倒れて軽自動車2台を巻き込みました。軽自動車に乗っていた方々は怪我をされましたが、命に別状はなかったと聞いています」と答えてくれました(Mさんには掲載の許可をいただいています)。

 そして取材を進めるうちに、このようなシートベルトの掛け方をしている人が意外と多いということがわかりました。

 お客さんに貸した代車がこの状態で返ってくることが多いという、レッカー業者の男性にも話を聞いてみました。

「仕事で代車やレンタカーの貸し出しをしていた時期があるんですけど、よくこのシートベルトの状態で返ってきていました。

 代車だけでなくお客さまのクルマもこの状態は非常に多いですね。レッカー業なので色々なお客さまのクルマを見るのですが、いつもベルトをこの状態にして普段から乗っているのでしょう。乗る時に手間が省けるような感じになるようなので。

 もちろん僕は怖くて出来ないですね。モータースポーツもやっているので、ベルトの恩恵は知っているつもりです」

 にわかに信じがたいのですが、この状態で乗っている人は意外に多いのかもしれません。

 これで衝突事故の衝撃を受けると、本来発揮されるシートベルトの拘束力はほぼゼロに等しい、つまりシートベルトをしていないのと同じ状態となります。

 車外に放出されてアスファルトの路面にたたきつけられ、命を落とす危険性も十分にあります。

 ちなみに、警察では取り締まりの際、このような状態のシートベルトに気づいているのでしょうか。

 首都圏の警察署に聞いてみたところ、「誤った着用をしている人がいることはわかっていますが、通常の取り締まりは外からしか見ないので気づくことはまずないでしょう。ですが、飲酒など一斉検問の際に確認することはあります。その際は厳重に注意をします」という答えでした。

■正しい状態でシートベルトを使用すれば、車外への放出は「まずありえない」

 適切な状態でシートに座り、シートベルトを肩と腰骨の3点を通して正しく着用していれば、横転するような激しい事故でも車外に放出されることはまずありえません。

 今回、シートベルトメーカー、自動車メーカー、イタルダ(交通事故総合分析センター)、交通事故鑑定の専門家それぞれに聞いてみたところ、全員一致で「正しい状態で着席し、正しい状態でシートベルトを締めていれば、クルマが横転したり落下したりするような激烈な事故でも、車外に放出されることはまずありません」という答えが得られました。

シートベルトの拘束力が正しく発揮されれば、車外へ放出されることはまずないといわれるシートベルトの拘束力が正しく発揮されれば、車外へ放出されることはまずないといわれる

 しかし、シートの背もたれを過度に寝かせていたり、肩ベルトが上半身から離れているなどの間違った着用をしていると、事故で衝撃を受けた際、サブマリン現象(体が滑り落ちてシートベルトから抜けて足もとに落ちる)が発生して、命に係わる状態になる危険性も十分にあります。

 イタルダの調査結果によると、シートベルト非着用の乗員では、運転者、同乗者とも車外放出の発生率は13%以上と高くなっています。一方、シートベルト着用者では車外放出の発生率は運転席で1%(1例)、同乗者ではゼロです。

 横転する、しないに関わらず、シートベルトを装着していた同乗者が車外放出された例はゼロ件となっています。

 また、危険な使用例として、クリップなどでベルトを緩めて使っている人がプロドライバーのなかにもいますが、こちらも当然ですが本来の拘束力は発揮できません。

 危険な状態でシートベルトを使用していると、事故の衝撃を受けた際、シートベルトから抜け出した体が凶器となって同じクルマの乗員に致命傷を負わせたり、車外に放り出された体がほかの事故を誘発する危険性もあります。

 さらにシートベルトの拘束力が発揮されない状態では、エアバッグの効果も発揮されないだけでなく、エアバッグにより怪我を負うケースも考えられるのです。

 シートベルトの正しい着用は自分のためだけではなく、同乗している大切な家族や友人、お客さんの命をも守ることになります。クルマに乗る人は全員、シートベルトを正しく着用してください。

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