2021年の新型上陸が待ち遠しい! VW「ゴルフ」がベンチマークになった理由とは
くるまのニュース / 2020年9月1日 18時10分
1974年の初代誕生以来、ヨーロッパ車としてはナンバーワンの販売台数を誇るCセグメントハッチバックがフォルクスワーゲン「ゴルフ」だ。日本でも2015年まで27年連続で輸入車ナンバーワンの地位を守り続けていた。なぜゴルフは長い間にわたりそれほど人気なのか。ライバル車の目標、ベンチマークとして君臨し続ける理由とはなんなのだろうか
■大人がしっかり座れて、荷物が積める機能的なコンパクトハッチバック
2019年の10月に、フォルクスワーゲンは第8世代となる新型「ゴルフ」を発表した。
新しいゴルフは、Car2X(クルマとインフラ施設や他車などとの通信)機能を備え、パワートレーンに5種類ものハイブリッドを用意。デジタル、コネクテッド、インテリジェントをキーワードに最新テクノロジーを数多く採用しているという。
そんな新型ゴルフの日本導入は、どうやら来年の2021年になると噂される。そこで、今回は、これまでのゴルフの歴史を振り返りつつ、ゴルフがなぜ、セグメントリーダーやベンチマークなどと呼ばれることになったのかを考えていきたい。
初代ゴルフが誕生したのは1974年のこと。いまに続くゴルフの伝統となる、ハッチバック(当時は「2ボックス」と呼ばれていた)のボディに水冷エンジンを搭載したフロントエンジン・フロント駆動(FF)を採用。ジウジアーロ率いるイタルデザインによる直線的なデザインは、当時としては非常に斬新なものであった。
ちなみにフォルクスワーゲンがゴルフを投入する前に主力としていたのは、空冷エンジンによるリアエンジン・リア駆動(RR)のキュートな「タイプ1」、通称ビートル。ビートルからゴルフという世代交代は、空冷から水冷、RRからFF、丸いデザインから直線基調へと劇的な変化となった。
そして、この初代ゴルフはすぐにヒットモデルとなる。デビューわずか22か月で累計販売台数50万台を記録し、その7か月後には100万台を突破。その後も順調に販売を伸ばし、現代に続くフォルクスワーゲンの大黒柱に成長することになったのだ。
では、最初のゴルフは何が素晴らしかったのだろうか。
まず、いえるのがパッケージングの良さだ。大人4人から5人が乗車し、荷物がしっかりと載りつつも、コンパクトと呼べるサイズに納めた。このサイズ感が絶妙に良かったのだ。
当時、欧州ではすでにハッチバックのFF車は、いくつもライバルとして存在していた。ただし、フランス車や英国車のハッチバックは、ゴルフよりも小さなモデルが中心であった。大柄なドイツ人としては、狭いと感じたはずだ。
一方、メルセデス・ベンツやBMW、オペルといったドイツ・ブランドは、当時FRのセダンが中心で、それらはゴルフよりも明らかに大きい。そういう意味で、ゴルフはちょうどよいサイズ感を持っていたのだ。
■高性能モデル「ゴルフGTI」の存在も大きかった
また、初代ゴルフは、1976年に高性能バージョンとなる「ゴルフGTI」を発表する。
1976年に登場した高性能バージョン「ゴルフGTI」。ホットハッチという言葉もこのモデルから始まっている
この高性能モデルは当時、「ドイツのアウトバーンの追い越し車線を走ることのできる唯一のコンパクトカー」と呼ばれることになる。
当時のコンパクトなハッチバック車へといえば「廉価なのだから、走行性能もそこそこ」というのが常識だった。それをゴルフGTIは吹き飛ばしたのだ。
さらに1977年にはゴルフに1.5リッターのディーゼル・エンジンを搭載するモデルを追加した。これもディーゼル・エンジン搭載車イコール大型車といった当時の常識を覆すものであった。
このディーゼル・エンジンの採用で、ゴルフは高い経済性というイメージも獲得する。使ってよく(優れたパッケージング)、走ってもよく(ゴルフGTIの存在)、それでいてお財布も優しい(経済性の良いディーゼル・エンジン)というクルマになったのだ。
つまり、ゴルフは初代モデルで、優れたパッケージングと走行性能、革新的な技術の採用などを通し、「同じセグメント内のリーダー」「同クラスの目標となるベンチマーク的な存在」というポジションを獲得したのだ。
※ ※ ※
そうした新しい技術やクラストップの性能は、その後のVWゴルフの伝統となってゆく。
第2世代「ゴルフII」ではABSを採用。第3世代「ゴルフIII」ではリサイクルへの積極的な取り組みを実施。第4世代「ゴルフIV」以降も、ESPやエアバッグ、そしてダウンサイジング・ターボエンジン「TSI」など、時代時代の最新技術やトレンドを常に先取りし、世代を重ねつつもセグメントリーダーというポジショニングを守り続けたのだ。
そして、そうした偉業を続けてこられた理由のひとつが、ゴルフがフォルクスワーゲンという世界屈指の大メーカーの看板モデルであることだ。
大メーカーならではの優れた技術力と巨大な資本力という背景があったからこそ、歴代ゴルフの挑戦が可能となったのだろう。
また、プレミアム・ブランドではなく、あくまでも大衆車であったことも重要なポイントだ。裕福な限られた人だけのクルマではなく、広い人々の手に届く存在であったからこそ、ゴルフはセグメントリーダーとして認められたのだ。
2019年に欧州で登場した8代目となる新型「ゴルフVIII」。日本には2021年に上陸の予定だ
そして、新世代となる「ゴルフVIII」の日本上陸も間近だ。最新のゴルフもセグメントリーダーにふさわしい内容を守り続けているのかに注目したい。
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