車の常識が覆る!メルセデス・ベンツ新型「Sクラス」のトピックは新工場がイチオシ!?の訳とは
くるまのニュース / 2020年9月4日 17時10分
メルセデス・ベンツが2020年9月2日に世界初公開した新型「Sクラス」は、その発表会で紹介された進化の内容がこれまでにないものだったといいます。クルマのデザインや動力性能といったことではなく、生産工場の進化が最初にアピールされたというのですが、いったいなぜアピールポイントが従来と異なるのでしょうか。
■メルセデス・ベンツ新型「Sクラス」 驚きのオンライン発表内容とは
メルセデス・ベンツが2020年9月2日にオンラインでおこなった新型「Sクラス」発表会を見ながら、クルマの常識が根底から覆るほどの凄みを筆者(桃田健史)は実感しました。
凄みの理由は、プレゼンテーションの順番です。新型Sクラスで注目されているポイントとは、いったい何なのでしょうか。
オーラ・ケレニウスCEOが最初に紹介したのは、製造工場である「ファクトリー56」でした。
一般的な自動車工場のような流れ作業をするラインはなく、完全自動走行する台車に乗った車体が組立工程を進む様子が映し出されました。
また、カーボン(CO2)ニュートラルや、再生可能エネルギーを活用した省エネ、IT技術を駆使した効率的な工場運用をアピールしました。
これには、理由があります。近年、企業の評価基準として注目されている、ESG投資への対応です。
日本の経済産業省によると「従来の財務情報だけではない、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資」という意味です。
Sクラスは、メルセデス・ベンツを象徴するモデルであり、古くはアンチロックブレーキやエアバッグを世界に先駆けて標準装備化するなど、各種の先端技術のショーケースとなってきました。
そのSクラスで今回、イチオシの話題がエンジンでも、シャシでも、はたまた自動運転でもなく、ESG投資なのです。
まさに、自動車産業界の大きな変革期であることが、世界中に伝わったと思います。
ESG投資に次いで、ケレニウスCEOが紹介したのが、MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)です。
音声認識や通信によるコネクティビティなどが、ユーザーにとって分かりやすいユーザー・エクスペリエンス(UX)でしょう。
MBUXは第二世代となり、音声認識の精度が上がり、かなりの長文で複数のリクエストがあっても的確に対応します。また、自宅の照明のオンオフなども車内から音声でリモートコントロールが可能です。
まさに、動くスマートフォンのような感覚です。
さらにプレゼンの流れで、外観デザインやインテリアデザインの話になりました。
ところが、担当デザイナーの口調は一般的なクルマのデザインについてではなく、視覚と触覚によるユーザー・エクスペリエンスという観点を強調していることが分かります。
とくにインテリアでは、間接照明のようなレイアウトがあり、接近するクルマに対するブラインドスポットウォーニングや衝突被害軽減ブレーキで赤く発色する機能もあり、単なるインテリアデザインではなく、ユーザー・エクスペリエンスとして捉えることが必然なのでしょう。
デザインについて、メーカー側のクルマに対する考え方が根本的に変わったように感じます。
■環境に応じて、レベル3だけでなくレベル4の自動運転にも対応!
プレゼンはこの先、夜間のドライブシーンに移り、高度運転安全支援システムや、仮に事故が発生した場合の後者席用エアバッグシステムなどに移りました。
こうした分野ですら、ユーザー・エクスペリエンスという概念を感じます。
メルセデス・ベンツ新型「Sクラス」世界初披露の様子
さらに、新型Sクラスの目玉として、乗用車として世界初採用となる自動運転技術がふたつあります。
ひとつは、レベル3の自動運転に対応するDRIVE PILOT。
レベル3の自動運転では、運転の主体が運転者からクルマのシステムに移行します。そのため、自動運転中は読書やスマホ操作などが可能となります。
ただし、システムが自動運転の継続が難しいと判断すると、運転者に対して運転復帰をリクエストしてきます。
そのため、シートを倒しての睡眠や、飲酒など、運転復帰がすぐにできなくなる行為は禁止されています。
実施は、ドイツでの道路交通法の施行などに合わせるかたちで、2021年半ばに装備される予定。レベル3走行が可能な場所は、ドイツ国内の高速道路での渋滞中で速度が60km/h以下としています。
参考までに、スバル新型「レヴォーグ」が採用するアイサイトXも、高速道路で渋滞中に約50km/h以下でハンズオフ走行が可能ですが、運転の主体は運転者にあるためレベル2の自動運転に相当します。
そのため、ハンズオフ中に読書やスマホ操作は許容されません。
もうひとつが、インテリジェント・パーキング・パイロットです。
スマホ操作によって、完全無人で駐車が可能となります。車内無人なので、レベル4の自動運転となります。
メルセデス・ベンツ本社がある独シュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ博物館では実証試験がおこなわれ、安全性について十分に検証されています。
実用化には駐車場に新たなインフラ整備が必要のため、今後ドイツ国内を中心に対応する駐車場が徐々に増えることが期待されています。
結局、今回の新型Sクラスのオンライン発表会では、後半に短くサスペンションシステムなどが紹介されただけで、プラットフォームやエンジンについての技術解説はまったく目立ちませんでした。
クルマの在り方が大きく変わった、と感じられる会見内容だったと思います。
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