韓国ヒュンダイが再上陸!? トヨタ・ホンダに追従? BTSコラボでFCV市場を狙う

くるまのニュース / 2020年9月12日 14時10分

すでに複数回にわたって報じられてきた韓国自動車メーカー大手ヒュンダイ(現代自動車)の日本再進出ですが、日本向け公式ホームページが開設されるなど、いよいよ秒読み段階に入っています。一度は撤退した日本市場に勝機はあるのでしょうか。

■突如公開された日本向けHPとネッソのWebカタログ

 2020年9月11日、韓国自動車メーカー最大手のヒュンダイ(現代自動車)の日本向け公式ホームページがリニューアルされていることが明らかになりました。

 かつてヒュンダイは日本でも正規輸入されていましたが、国内メーカーのクルマに対して優位性を見せられなかったことなどから2009年をもって撤退しています。

 それから現在にいたるまで、おもに大型バスの正規輸入を行う現代自動車ジャパンや、研究開発施設である現代自動車日本技術研究所などの拠点は残してありましたが、乗用車の正規輸入からは遠ざかっていました。

 しかし、すでに何度か報じられている通り、近年になってヒュンダイが日本市場へ再進出するのではないかというウワサが業界内を駆け巡るようになりました。

 2019年4月には、同年秋の東京モーターショーにて、ヒュンダイが大規模なブース獲得を試みているとの報道があったものの、その後、日韓関係の悪化などもあり、モーターショーへの出展は実現していません。

 しかし、翌2020年3月には、技術者向けイベントに燃料電池自動車(FCV)の「ネッソ」を出展。

 また、6月にはヒュンダイ・ジャパン公式Twitterアカウントが開設されるなど、再進出に向けたと思われる動きが加速していました。

 そして今回、先述の現代自動車ジャパンではなく、グローバルのヒュンダイ公式ホームページのなかに日本向けページが用意され、そのトップページには先述のネッソが「次世代モビリティ」のキャッチコピーとともに大きく掲載されています。

 さらには、ネッソの詳細を紹介するページや、Webカタログまで用意されています。

 詳細ページに掲載されている画像は日本で撮影されたものであり、登場するネッソも右ハンドルかつインストルメントパネルに表示される情報が日本語であることなどから、日本仕様となっていることがわかります。さらにいえば、Webカタログを見るとすでに型式を取得しています。

 ちなみに、「サービス拠点」というページには、日本全国の自動車販売会社などの企業名が並んでいますが、こちらは2009年までに導入されたかつてのヒュンダイ車のアフターサービスをおこなっている企業であり、そのなかの1社に取材したところ「再進出の話は聞いていない」とのことです。

 また、金額や販売方法などの詳細は明らかにされておらず、いまだヒュンダイ・ジャパンからの公式な発表はありませんが、これらの既成事実から、ヒュンダイの日本再進出が秒読みであることは疑いないでしょう。

 しかし、一度は撤退した市場である日本に対して、ヒュンダイが再進出を果たしたとしても勝機はあるのでしょうか。

 たしかに、2010年代以降ヒュンダイは躍進を遂げました。

 欧米の自動車メーカーのデザイナーやエンジニアを招いたことで、デザインや品質は向上し、かつコストパフォーマンスに優れるクルマをつくったことで、欧州や北米のみならず、新興国でも販売台数を伸ばしてきました。

 また、巨大資本を基盤にした圧倒的なマーケティングも実施。成長市場であるロシアのある広告代理店関係者は「(ロシアでは)日本の自動車メーカーの広告費が100だとしたときに、欧州メーカーは200、韓国メーカーは300もの広告費を投じている」と語ります。

 その結果、現代自動車グループの2019年の世界新車販売台数は約719万台と、VWグループ、トヨタグループ、ルノー・日産・三菱アライアンス、GMグループに次ぐ、堂々の第5位へと成長しています。

 とはいえ、すでに「コスパのいいクルマ」がよりどりみどりの日本において、わざわざ韓国車を購入する理由は正直ありません。

 超高級車ブランドであれば、ごく一部のターゲットに販売することで利益を確保できますが、ヒュンダイのような量販車ブランドでは、少なくともVWに匹敵するレベル(年間5万台以上)を販売しないと採算がとれないと思われます。

 もちろん、真のグローバルメーカーになるために、日本市場に意地でも販売したいという気持ちはあるかもしれません。

 クルマ離れが叫ばれているとはいえ、日本はいまだに世界第3位の新車販売市場であり、自動車大国のひとつです。

 生まれ変わったヒュンダイ車で、日本市場にリベンジを果たすのはヒュンダイにとっては悲願といえるでしょう。

 一方で、ヒュンダイほどの大企業が、ビジネス視点を無視して日本再進出を果たすとは考えにくいのも事実です。そこでカギとなるのが、前出のネッソです。

 欧米におけるヒュンダイのベストセラーカーには、「i20」や「コナ」、「エラントラ」など多くのモデルがありますが、現在公開されている日本向け公式ホームページにはそうしたモデルの情報はなく、FCVのネッソのみです。

 FCVは、元々日本の自動車メーカーが開発をリードしてきました。

 石油資源のほとんどを輸入に頼る日本にとって、化石燃料を使用しない電動車両の開発は急務であり、そのひとつの完成形が水素をエネルギーとするFCVだったのです。

 実際に、トヨタは2014年に「ミライ」を、ホンダは2016年に「クラリティ フューエルセル」を販売しています。

 欧米の自動車メーカーでは、FCVよりもおもに電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の開発に積極的でしたが、日本の自動車メーカー以外で唯一FCVの市販化に成功したのが、ヒュンダイでした。そのFCVがネッソだったのです。

■日本へ再進出するヒュンダイ、勝機はどこに?

 しかし、FCVの普及には大きな課題があります。そのひとつが、水素ステーションの拡充です。

 ガソリンスタンドのように、燃料である水素を充填できるステーションがあれば、既存のEVを大きく超える航続距離を可能としているFCVですが、水素ステーションがなければ走ることができません。この点が、家庭用電源でも充電可能なEVとの大きな違いです。

 前述の通り、日本は世界に先駆けてFCV開発を進めてきたなかで、官民一体となって水素ステーションの拡充に努めてきました。

 その結果、現在では、世界でもっとも水素ステーションが整備された国となり、その数はさらに増えるとされています。

 一方、ヒュンダイはネッソを北米で展開しています。

 これは、おもに西海岸エリアを中心に、北米でも環境意識が高まってきたことで、国を挙げて水素ステーションを拡充するという動きがあったためといわれています。

 しかし、近年の原油価格の下落により、化石燃料を使った自動車の人気が再燃したことで、水素ステーション拡充の話は鈍化し、現在でもごく限られたエリアでしか整備されていないのが実情です。

 そこで「水素ステーション大国」である日本に白羽の矢が立ったものと考えられます。

 ヒュンダイとしても、せっかく市販化までこぎつけたFCVをこのまま下火にするわけには行きません。しかし、水素ステーションがなければそもそも走行することすらできません。

 水素ステーションが整備されている日本であれば、走行すること自体は可能です。

 実際に販売することで市場から得られるデータや知見は、将来の技術開発に役立つことを考えると、計り知れない価値があります。

 過去にヒュンダイの日本再進出の報道がされたとき、インターネットには「一度撤退した韓国車が売れるわけがない」「日本車にかなうはずがない」といった否定的な意見が多く見られました。

 おそらく、コンパクトカーなど通常のガソリン車ではその通りかもしれません。

 しかし、FCVに限ってみれば、トヨタやホンダも市販しているとはいえ、年間1000台にも満たない販売台数です。

 つまり、ヒュンダイがネッソで数百台販売することができれば、トヨタやホンダと同等のデータを得ることができるのです。

 ミライやクラリティ フューエルセルは、技術的にはすばらしいものですが、デザインでひとめぼれするようなものではありません。

 その点、ネッソは流行りのSUVスタイルであり、ミライやクラリティ フューエルセルにありがちな「いかにも感」がありません。

 年間数百台であれば、「新しもの好き」の人や希少車ファンなどの「マニア」だけでも、達成する可能性は少なくありませんし、韓国系企業などが社用車として購入する可能性も考えれば、決して夢物語ではないでしょう。

世界での水素インフラが進んでいる日本市場(画像は北米でネッソが充填しているイメージ)世界での水素インフラが進んでいる日本市場(画像は北米でネッソが充填しているイメージ)

 このように、FCVに限ってみれば、ヒュンダイの日本再進出は合理的な判断とも考えらます。一方で、ヒュンダイは日本市場を単なる実験場として見ているわけではないようです。

 韓国の主要産業のひとつにエンターテインメント産業があります。いわゆる韓流アイドルは、日本のみならず世界でも爆発的な人気をおさめており、韓国にとって重要な外貨獲得の手段になっているといわれています。

 とくに日本では、若年層を中心に、ファッションやメイクなども含めて韓国文化が受容されています。

 歴史的な背景から、日韓関係は常に緊張を極めていることも事実ですが、一方でもっとも身近な国のひとつとして文化的・経済的交流が盛んという側面もあります。文化的・経済的交流の先頭に立っているのは、10代や20代の女性を中心とした若年層です。

 こうした若年層は、いますぐにヒュンダイのターゲットになることはないかもしれません。

 しかし、ヒュンダイが日本市場に再進出して実績をたくわえ、FCVが現在よりも市民権を得たとしたら、現在の若年層はメインターゲットになるでしょう。

 FCV先進国である日本で多くの販売実績を持っていれば、世界中で販売できるかもしれません。

 おそらくそれは10年以上先のことかもしれませんが、巨大な財閥をバックに持つヒュンダイは、10年間実績をたくわるために投資するだけの体力があります。

 つまり、韓国にポジティブなイメージを持っている若年層とともに、FCVを成長させていこうとしているのです。

 これを裏付ける証左として、前述のヒュンダイ・ジャパン公式Twitterでは、主力モデルである「アイオニック」と韓国の人気アイドルグループである「BTS」のコラボレーションについて、複数回紹介しています。

 また、2020年9月16日から22日に東京・代官山で開催されるヒュンダイのイベントでは、数量限定でBTSグッズが配布されることも明らかになっています。

 インターネット上の反応を見ても、BTSとのコラボレーションは好意的に受け止められているようです。

※ ※ ※

 日本語公式ホームページの公開、ネッソのWEBカタログの公開、国土交通省によるネッソの型式認定の取得など、さまざまな背景から、ヒュンダイの日本市場再進出は秒読み段階であることは確実です。

 しかし、具体的な日程や販売方法、価格などについての公式な発表は依然としてありません。また公式ホームページ上にも、問い合わせ先の記載もありません。

 おそらく、手続き上は再進出の準備はほぼ完了していると思われますが、ヒュンダイほどの大企業が日本へ再進出するとなると、国内外の経済へ与える影響も大きく、また政治的な影響も考慮する必要があることから、慎重にタイミングを図っているのかもしれません。

 また、ヒュンダイとしても、歴史的な背景からネガティブな反応が避けられないことも承知しているでしょう。そのため、SNSや小規模なイベントを通して市場の反応を伺っているとも考えられます。

 いずれにせよ、ヒュンダイからの発表が待たれるところです。

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