1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ

秀逸なデザインとホンダらしさあふれる走りが魅力! ホンダ「ビート」を振り返る

くるまのニュース / 2020年9月23日 11時10分

1991年に誕生したホンダ「ビート」は、軽自動車では初となるミッドシップオープン2シーターです。自然吸気エンジンながら64馬力を誇り、クイックなハンドリングや小気味良く入るシフトチェンジなど、立派なスポーツカーといえます。そこで、ホンダ「ビート」はどんなクルマだったのか振り返ります。

■軽自動車初のミッドシップオープン2シーターがデビュー

 1980年代の終わり頃から軽自動車でも高性能化が進み、庶民の足だけでなくスポーツドライビングも可能になりました。

 そして1991年に、突如現れたのがホンダ「ビート」です。モーターショーなどで事前にお披露目されることなく、いきなりのデビューでした。

 注目されたのは軽自動車では初となるミッドシップオープン2シーターだったことで、1990年に発売されたミッドシップスポーツカー「NSX」の存在もあり、ビートも大いに注目されました。

 そこで、いまも愛好家が数多く存在するビートとはどんなクルマだったか、振り返ります。

※ ※ ※

 1991年5月16日、ホンダは軽自動車ではこれまでにないミッドシップオープン2シーターの「ビート」を発売しました。

 ちょうど同時期にオートザム「AZ-1」、ホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」と、イメージが近い軽スポーツが誕生したことから、後に軽自動車の「ABCトリオ」とも呼ばれました。

 前述のとおりビートの誕生は突然で、情報のリークも無かったことからかなり注目されます。

 一方で、開発は550cc企画時代から始まっており、試作車として「VCR」というミッドシップオープン2シーターのモデルがあり、これがビートの原型です。極秘裏にプロジェクトが進んでいたことから、ビートのデビュー後に、イベントで一般に公開されました。

 ビートのボディサイズは全長3295mm×全幅1395mm×全高1175mmとかなり低く、着座位置も低かったため体感的なスピードが速く感じられたほどです。

 デザインはあらゆる角を丸くしたことで軽自動車ながらカタマリ感があり、キャビンは中心よりもやや後ろに配置した絶妙なバランスで、低いボンネットからリアまでなだらかに上昇するラインが美しさを表現。

 ビートはソフトトップを採用し、開閉は手動ですが作業は簡単で手軽にオープンエアモータリングが楽しめ、ソフトトップを開けても閉めてもスタイリッシュでした。

 内装はかなりタイトで、センターコンソールをやや左にオフセットさせることで、ドライバーのスペースが優先されました。

 シートはゼブラ柄を採用するなどポップな印象で、運転席側はスライドとリクライニングが可能でしたが、助手席はスライドのみと割り切った設計となっています。

 ドライバーの正面には3連のメーターを設置。オートバイをイメージしてデザインされており、真ん中には1万回転まで刻まれたホワイトのタコメーター、右に同じくホワイトのスピードメーター、左にはブラックの水温計と燃料計に各種警告灯が配置されています。

 なお、センターコンソールにはDIN規格のスペースは無く、オプション設定された専用のオーディオ以外は取り付けができませんでした。

 また、収納スペースはミニマムで、フロントのボンネット内にはスペアタイヤが置かれ、リアにはエンジンの後部に小さいトランクがありますが、三角表示板を入れると小物しか入りません。

 室内には助手席の後ろに車検証などを入れる物入れがありますが、週刊誌2冊程度の奥行きしかなく、グローブボックスもかなり小さいもので、左右のシートバックの間にも物入れがありますが、オプションのサブウーハーを取り付けるとスピーカーボックスとなってしまいました。

 ただし、オプションでリアフードに荷物を搭載できるキャリアが用意されていたのと、ソフトトップを閉じていれば、乗員の頭の後ろにスペースがあるため、持ち物を厳選すればふたりで一泊程度の荷物は十分に積むことも可能です。

■自然吸気ながら64馬力を達成した高回転エンジンを搭載

 乗員の背中のすぐ後ろに横置きに配置されたエンジンは、660cc直列3気筒SOHCで、ベースとなったのは軽商用車の「アクティ」や「トゥデイ」と同じエンジンながら、3連スロットルバルブが装着され、カムシャフトやピストンも専用品となっており、最高出力は自然吸気で64馬力を達成。

 自然吸気エンジンの軽自動車では、ビート以外に64馬力に到達したモデルは現在までありません。

 アクセルに対してのレスポンスも、3連スロットルバルブの恩恵でシャープです。

ホンダ「ビート」最後の特別仕様車「バージョンZ」はシックな印象ホンダ「ビート」最後の特別仕様車「バージョンZ」はシックな印象

 最高出力を8100rpmで発生するため、タコメーターのレッドゾーンは8500rpmからとなっており、ほぼオートバイのイメージです。

 トランスミッションは5速MTのみで、手首の動きだけでもコクコクとシフトチェンジでき、ワイヤー式のシフトながらフィーリングは良好でした。なお、ATも検討されたようですが、熱対策が難しかったことや、スペースの問題で断念したといいます。

 足まわりには4輪にマクファーソンストラットを採用した独立懸架で、クイックなハンドリングを実現。フィーリングは終始弱アンダーステアの安定志向のセッティングを採用し、トルクが細かったことと、後述しますがリアタイヤが太く大きかったことから、かなり特殊なことをしない限りオーバーステアに転じることはありませんでした。

 ブレーキは軽自動車初の4輪ディスクブレーキを採用。ブレーキのタッチは硬めで、踏力にたいしてブレーキの効きがリニアに立ち上がることから、非常にコントローラブルです。

 タイヤはフロントに155/65R13、リアに165/60R14を装着する前後異径サイズを採用。

 全体的なドライブフィールは、とにかく軽快感があり、エンジンパワーを使い切る楽しさが味わえ、ホンダはビートをスポーツカーとは呼びませんでしたが、紛れもなくスポーツカーといっていいでしょう。

 一方で、ビートはすべてにおいて優れたクルマではなく、760kgと重い車重によって加速性能はライバルのターボ車には及ばず、ボディ剛性も高くなく、ギャップを超えるとフロントウインドウがブルンと震えるほどでした。

 また、細かいところだと、ラジエーターをフロントに搭載したことで、冬はヒーターが効くまで時間がかかり、エンジンのメンテナンス性も悪いという欠点がありました。

 そんなマイナス面もありますが、ドライビングの楽しさに比べれば些細なことでしょう、

 新車価格は138万8000円(消費税含まず)と、現在の水準では普通ですが、当時はかなり高い印象でした。

 デビュー後は1992年に特別仕様車の「バージョンF」と「バージョンC」、1993年には同じく「バージョンZ」をラインナップしましたが、年式によってわずかな改良はおこなわれましたのみで、マイナーチェンジを一度もおこなうことなく1996年をもって販売を終了しました。

 なお、2011年には誕生20周年を記念して、ホンダアクセスがUSBポートでメモリーやiPhoneなどと接続可能な新たなオーディオと、スポーツサスペンションを限定販売し、2017年からホンダが一部部品の再生産をおこなっており、いまも数多く存在する愛好家をサポートしています。

※ ※ ※

 かつてホンダの開発エンジニアいわく、ビートは軽自動車のサイズだけど中身は軽自動車ではないと話していました。とくにハンドリングやブレーキのフィーリングはNSXにも劣らないともいいます。

 そうした魅力が誕生から30年が経とうするいまも、多くのファンを惹きつけているのではないでしょうか。

 なお、本田技研工業の創設者である本田宗一郎さんがご存命だった頃、最後に見届けた新型車がビートでした。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください