ランボルギーニも加わった米伊合作「ダッジ・パイパー」は隠れた名車
くるまのニュース / 2020年9月24日 19時10分
アメリカン・マッスルカーの代表である「バイパー」は、「コルベット」のライバルとして作られたスーパースポーツだ。ロングノーズ・ショートデッキの異様な迫力を持ったバイパーの現在の人気を探る。
■アメリカ・イタリア合作のダッジ「バイパー」
アメリカのスポーツカーといえば、自動車大国であるにもかかわらず、即座にイメージできるのはGMのシボレー部門が1953年から生産を続けているシボレー「コルベット」のみかもしれない。
それがいかに偉大な存在であるのかは、コルベットに対抗するライバルモデルが誕生しないという事実にも表れているのだが、もちろん例外ともいえる存在もある。今回VAGUEで紹介するダッジ「バイパー」などは、そのもっとも有名な1台である。
●1992 ダッジ「バイパーRT/10ロードスター」
ダッジ「バイパー」は、ランボルギーニがエンジンやサスペンションのチューニングをおこなって誕生した経緯がある(C)Bonhams 2001-2020
バイパーは、コルベットという存在に対抗することのみを目的に、当時フォードからクライスラーに移籍してきたボブ・ラッツをチーフに開発が進められたスーパースポーツだ。
アメリカン・スポーツとして開発する以上、誰の目にもヨーロッパ製のスポーツカーとは異なる特徴を持たなければならず、その開発コンセプトの根底には、1960年代に大きな人気を呼んだ「シェルビー・コブラ」などが強く意識されていたという。そして実際にバイバーの開発には、かのキャロル・シェルビーもメンバーのひとりとしてその名を連ねていた。
ロングノーズ・ショートデッキのスタイリングは、まさにアメリカ車の象徴的なスタイルだ。強力なエンジン、ミニマリスト、マッスルでアグレッシブなスタイリング。それはアメリカが世界中のどこよりも強かった時代を物語るスタイルともいえた。
フロントに搭載されたエンジンは8リッターV型10気筒OHVだが、これはそもそもクライスラーのピックアップ・トラックなどに使用されていたものだった。それを当時、グループ傘下にあったランボルギーニに依頼し、ブロックをアルミニウム化するなど、スーパースポーツのエンジンに相応しい改良を施したのである。
ちなみにランボルギーニはエンジンのみならず、4輪独立サスペンションを持つサスペンションのチューニング等々にも関係しているから、初代バイパーはいわばアメリカとイタリアの合作といえないこともない。
1989年、1990年と続いてプロトタイプを公開したクライスラーは、1991年12月になると、ようやくそのプロダクションモデルの販売を開始する。
当初用意されたのは、「RT/10ロードスター」と呼ばれる406ps仕様のオープンモデルで、今回ボナムス1793のクエイル・モーターカー・オークションに出品されたモデルがそれにあたる。
走行距離は1万2900マイル(約2万640km)未満。状態は新車時と同等とボナムス1793は胸を張る。そのコンディションの素晴らしさは、確かに落札価格に反映されたようだ。3万9200ドル(邦貨換算約410万円)という価格は、これからバイパーの、そしてアメリカン・マッスルの世界を楽しむには手頃な価格。喜びに満ち溢れる、落札者の顔が目に浮かぶようだ。
■マクラーレンの協力を得た2世代目「バイパー」とは
初代バイパーがオークションに出品された半月ほどのちに開催されたRMサザビーズのオーバーン・ホール・セールにも、バイパーの出品があった。こちらに出品されたのは2004年モデルの「SRT−10」だから、バイパーとしてはセカンドジェネレーションに相当する。
●2004 ダッジ「バイパーSRT−10」
本格的にレース活動に参戦した2世代目のダッジ「バイパー」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
2002年のフルモデルチェンジ時のもっとも大きな特長は、搭載されるV型10気筒エンジンが、8.3リッターにまで排気量が拡大されたことだろう。
その後2008年には、マクラーレンとリカルドの両社の協力を得て、排気量は8.4リッターとなり、最高出力は一気に608psという数字を掲げるに至った。
ロングノーズスタイルのエクステリアデザインは、基本的には共通のシルエットだが、全体的なイメージはよりスムーズなものとなり、対コルベットに対する魅力もさらに高まったように感じられた。
バイパーはこの後、American Club Racerの略であるACRのタイトルを掲げたチューニングモデルを新設定するなどした後、2012年にサードジェネレーションへと市場を譲ることになる。
それでは今回のオークションの結果はどうだったのだろうか。結果は4万9500ドル(邦貨換算約520万円)での落札だった。
出品車にはパクストンノヴィのスーパーチャージャーキットが装着され、最高出力は700psにまで高められているということだったが、そのあたりがオリジナルを求める傾向が強いオークション参加者には不評だったのだろうか。走行距離はわずかに1万km未満なだけに、とても惜しく感じられた1台だった。
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