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飛んだ!! グリッケンハウス「004C」シェイクダウン&チーム活動レポート

くるまのニュース / 2020年9月23日 19時10分

映画監督で脚本家、映画プロデューサーにしてカーコレクターである、ジェームズ・グリッケンハウス氏が率いるスクーデリア・グリッケンハウスが、新型GT3カーをニュルブルクリンクでシェイクダウン。当日の模様をお届けしよう。

■グリッケンハウス氏から直接聞いたインサイドストーリー

 チーム・スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SCG)は、2020年のニュルブルクリンク24時間レースへの投入する新型GT3カー「Glickenhaus(グリッケンハウス)004C」をニュルブルクリンクで開催中の耐久レースシリーズ第5戦NLS5(6時間レース)に初参戦し、見事完走を果たした。

 グリッケンハウス氏と彼の率いるチーム・グリッケンハウスは、8月29日に開催されたNLS 5にて、ニューGT3マシンのグリッケンハウス004Cの初レースを終えたばかりだが、パートナーのPodium Advanced Technology(ポディウム・アドバンスド・テクノロジー)社の支援を受け、2週間後に開催されるニュルブルクリンク24時間耐久レースへの参戦に向けて各準備作業を急ピッチで進めていた。

 そんなチームとして貴重な時間に、グリッケンハウス氏から直接話を伺うことが出来たので、グリッケンハウス004Cがどのようなマシンで、チームが何を目指しているのかをレポート形式で紹介しよう。

●NLS 5 – 6時間耐久レースへの初参戦

 新型GT3レースカー、グリッケンハウス004CがNLS 5に参戦するため、ニュルブルグリンク到着。ニューマシン004Cにとって今回が文字通り初レース。サーキットへ出るまでにやらなければならないことが、依然として山積していたが、それらは基本的には単純なものであるはずだった。

 各ドライバー(フランク・マイルー、トーマス・ムッチュ、フェリペ・レーザー)、そして24時間耐久レースで使用するタイヤのテストおよび登録、レース主催者側が他のSP9クラス(GT3)の車両に対してBOP(パフォーマンス・バランス)を決定するためのいわばテスト・レースのようなもので、チーム全体も比較的和やかなムードが広がっていた。

●まったく予測していなかった問題

 木曜日にテスト・センターでパワーチェックを済まし、リストリクター(エンジンへのエア吸入をしパワーを下げる部品)とバラスト(車重調整用の重り)を選定し、すべて順調のように思われたが、金曜日のニュルブルクサーキットにて練習走行中に大きな問題に直面した。

 問題は、排気音が既定の音量を若干超えているという事であった。読者のなかには「レース・カーに騒音規制なんて意外だ」と思われる方がいるかもしれないが、ニュルブルクリンクでは騒音に対しての規制がかなり厳しいのだ。

 理由はサーキットが自然保護区域にあることもあり、野生動物の生態を考慮し騒音規制があり、レースカーといえどもそれに従わなければならないというわけだ。

「急遽マフラーに多めのワイヤー・ウールを詰め込んで、ノイズ・テストをおこないながらテスト走行をおこなう必要がありました」とグリッケンハウス氏。

 その解決策は、一旦は成功を収め順調にテスト走行を続行できるように思えたが、その後すぐに、さらに深刻な問題を引き起こった。グリッケンハウス氏はそのことを振り返りこう語ってくれた。

「排気系からの背圧が高すぎて、排気系自体が破裂し、その影響でオイルラインが破損しました。

 ドライバーが異常に気付き、ただちにコース脇にマシンを止め、その数秒後に小さな出火が起きてしまいました。気づいたマーシャル達が急いで消火してくれ、そのおかげでマシンに深刻なダメージを与える前に完全に火を消す事ができたのです。

(練習走行)セッション後にマシンをピットへ戻し、エンジンが搭載されている後部全体を分解し組み直すという決断をしました。限られた時間内にマシンを再度組み直すというと大変な作業のように聞こえるかもしれませんが、我々のマシンはモジュール設計になっているので、組織ごとに組み上げる構造になっています。なのでとても効率的で比較的簡単に完了します。……とはいえ、次の日の朝8時までにマシンを完成させるという条件は至難の業で、作業は休む間もなく急ピッチで進められました。

 我々がこの深刻な問題に直面していることを噂で聞きつけた他のチームが、パーツやツールを持ち込み作業を手伝ってくれました。とくに騒音の問題について非常に役立つ排気系のヒントを提供してくれたBlack Falconにはとても感謝しています。本物のスポーツマンとレースをするというのはこういうことで、本当に素晴らしい気持ちでいっぱいです」

 チーム・グリッケンハウスの当日のツイッターには、次のように書き込まれていた。

「予選に出場できるように、排気火災に見舞われた004Cを夜間に修理します。一部の他のチームが、次の日にレースをするのは不可能だと噂しているのを耳にしました。スペアパーツを分けて手伝ってくれたチームBlack Falconに感謝しています」

■ハイパーカー「グリッケンハウス007」はどうなった!?

 予選ぎりぎりの8時にマシンが完成し、グリッケンハウス004Cが順調にスタートを切り、チーム全体とサポートしてくれたみんなが喜んでいたのもつかの間、最初に飛び込んできたラップ・タイムを見て、決勝で他のGT3のマシンと優勝争いをすることは不可能であることが明らかになった。

 理由はレース主催者がグリッケンハウス004Cに課せたBOP(パフォーマンス・バランス)が、あまりにも大きすぎたためだった。しかしレース後にはレース主催者側もそれを認め、改善することに同意するに至った。

新型GT3レースカー、「グリッケンハウス004C」がNLS 5に参戦するため、ニュルブルグリンク到着新型GT3レースカー、「グリッケンハウス004C」がNLS 5に参戦するため、ニュルブルグリンク到着

「今回のレースでマシンについて、そしてマシンを限られた時間内に修理するという事について多くのことを学びました。搭載された自然吸気6.2リッターV型8気筒エンジン自体は強力で、今回のBOPが課せられた状態でもドッティンガーのストレートでは『SCG 003C(去年のマシン)』と同じぐらいの速度域を記録しています。

 さらにターボ車では見られないような、コーナーからの立ち上がりでみせるトルクの大きさが印象的です。ドライバー達も限界ぎりぎりでのマシンの操作が、SCG 003Cよりもグリッケンハウス004Cのほうが楽だと報告しています。

 我々は最初のラップタイムは8分41秒でしたが、レースを進めていくうちに厳しいBOPであるのにも関わらず、8分18秒まで結果を伸ばすことができました。今後、確実にさらに改善できると確信しています。

 レースの結果は周回遅れで終了しましたが、今回のレースの目的はチームとレース主催者がニュルでの走行距離と走行データの収集することにあったので、それが達成できてとても有意義なレースでした」と微笑むグリッケンハウス氏。

「去年までのレースではピット作業を考慮して、24時間レース中に交換不要の硬めのブレーキパッドを使用してきましたが、新しい規定ではそれぞれのピットストップで6分間のストップが強制的に課せられることになったので、その従来よりも長くなったピットストップの時間を使えばブレーキ交換が可能になるのでもっと制御性能の良い(ピットでの交換が必要な)パッドを使う事も考慮しています」

●グリッケンハウス氏のロードカー

 グリッケンハウス氏にとってのニュルブリングリンクとは、グリッケンハウス社がロードカーの販売を進めるために重要な基盤になっている。

「今回のレースでは我々は顧客のロードカー『SCG 003S』をニュルに持ち込み展示しました。さらにニュル24時間耐久レースではロードカーである『グリッケンハウス004S』をデビューさせ、レースの前にサーキットにてデモ走行させることになっています」

●ニュルブルグリンク以外でのグリッケンハウス004CのGT3レース活動の可能性

 ITR(Die Internationale Tourenwagen Rennen 「国際自動車協議会」)の代表もDTMで提案されているGT3プラスについて、グリッケンハウス・チームの参戦に関して連絡を取っている。

「(DTM + GT3プラスに参戦を希望する)どのメーカーもカスタマー・レーシング・プログラムというものに関心を持っています。しかしそれがカスタマー・レーシング・プログラムである以上、参戦するのはあくまでも顧客自身の車両で、我々ファクトリー・チームのSCG 004Cの参戦の可能性は現時点では考えていません」と、グリッケンハウス氏は語る。

「興味深い点は、DTMの主催者側は、我々のマシンがまだFIA GT3の完全な認可を受けていないのにも関わらずそれを走らせる準備がすでに整っていることです。

 我々はホモロゲーションに十分な台数(200台)のロードカー・グリッケンハウス004Sを生産が達成した時点で公認を求めるつもりですが、現時点では40台の受注を受けている状態です。もちろん、我々のレースカー・グリッケンハウス004Cは、現時点でもGT3カーと対等にレースをおこなえるパフォーマンスに仕上がっています」

●ハイパー・グリッケンハウス007プログラム:ル・マン24時間耐久レースに向けて

 最後に、グリッケンハウス氏に2021年の予定について伺うことが出来た。

「グリッケンハウス007プログラムは順調に進んでいます。全体の空力を微調整するための風洞テストプログラムをさらにもうひとつ用意しています。

 来月初めてテスト・ベンチで最初のエンジンを稼働させ、2021年のシーズンに予定している2台体制のレース・プログラムを実行する準備がすでに整っています」と、グリッケンハウス氏は自信とやる気に満ち溢れていた。今後の動向に注目したい。VAGUEでは、引き続きチーム・グリッケンハウスのインサイドレポートを届ける予定だ。

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