日産 新型フェアレディZのデザインルーツとなった「S30型」とは
くるまのニュース / 2020年10月6日 19時10分
新型のプロトタイプが発表されたばかりの日産「フェアレディZ」だが、日本だけでなく北米でも新型フェアレディZの話題で盛り上がっているようだ。その理由は、もともと北米市場に向けたS30型フェアレディZの人気が高いからである。そこで、S30型フェアレディZについて簡単にその歴史を振り返ってみよう。
■北米で人気を博したフェアレディZとは?
新型の登場が予告されている日産「フェアレディZ」。先日、そのプロトタイプがお披露目されたが、そのデザインモチーフとなっているのが、S30型フェアレディZである。
●1972 ダットサン「240Z」
レストアされたS30型「フェアレディZ」のエスティメートは、およそ792万円−950万円(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
もともとフェアレディZというクルマは、オープン2シーターとして登場したSR/SP311型「ダットサン・フェアレディ」の後継車として開発されたものだ。
発売されたのは1969年秋で、1978年まで販売されていた。ボディタイプは2シーターと、俗にいうワンマイルシートが装備された、2by2の2種類。
搭載されていたエンジンは、2.0リッター直列6気筒のL20型を中心に、吸排気のバルブそれぞれにカムを装備した、2.0リッター直列6気筒DOHCのS20型や、L20型の排気量を上げ、トルクを増した2.4リッターのL24型、2.6リッターのL26型、燃料供給をそれまでのキャブレターから電子制御式の燃料噴射装置へと変更した2.8リッターのL28型となっているが、このうちL26型とL28型は輸出仕様車専用品である。
L24型も当初、輸出仕様車専用であったが、のちに日本国内でも「フェアレディ240Z」として発売された。
このS30型フェアレディZは、国内はもとより、北米での人気が非常に高いクルマである。
もともと、北米日産の社長であった片山豊氏が、北米での日産車のブランドであるダットサンの認知度を高めるための、イメージリーダーとして企画したのが、このS30型フェアレディZである。
L24型エンジンを搭載したのも、広大な北米大陸を走行するときの余裕を見込んでのことであり、前後ストラット式の4輪独立懸架サスペンションがもたらすロードホールディング性の高さや、鋳鉄製シリンダーブロックを持つL24型エンジンの頑丈さなども含めて、ジャガー「Eタイプ」やポルシェ「911」に劣らない、あるいはそれらを超える人気を博した。
もちろん、国内でもこのS30型フェアレディZは高く評価されていた。
日産には、当時1968年に発売されたC10型「スカイライン」、いわゆる箱スカがあり、1969年2月にはその箱スカにS20型エンジンを搭載した「スカイラインGT−R」が追加されている。
そこに登場したのが、このS30型フェアレディZである。フェアレディZには当初から、S20型エンジンを搭載し、レギュラーモデルの4速MTから5速MTへと変更された「フェアレディZ432」もラインアップされていた。
つまり、ボディの形状は違えど、スポーツカーをほぼ同時に、2車種発売していたのだ。
そこには、合併した旧プリンス自動車系のスカイラインと、日産系のフェアレディZという、ルーツの違いが影響を与えているのかもしれない。
それはともかく、このS30型フェアレディZの北米での人気は、ダットサン、現地でいうところのダッツンのネームバリューを多いに高めることとなった。フェアレディZはそのネーミングから、ダッツン・ヅィーカーと呼ばれ、21世紀となった現在でも、その人気は高い。
■S30型フェアレディZの型式の見分け方とは?
そんなS30型フェアレディZが、サザビーズのオークションに登場した。
今回登場した個体は、北米仕様車で左ハンドルとなっている。走行距離は2万9000マイル(約4万7000km)強。保管状況が良かったのか、インテリアの樹脂パーツは日焼けやヒビ割れなどがなく、シートも使用感こそあるものの、その状態はいい。また、ウインドウに貼られたステッカーなどもキレイな状態だ。
●1972 ダットサン「240Z」
レストアされたS30型「フェアレディZ」のエスティメートは、およそ792万円−950万円(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
機能的な部分も問題はない。搭載されているエンジンは、2.4リッターのL24型。ミッションは4速MTとなっている。
ちなみに、この個体の型式は「HLS30」となっているが、S30型フェアレディZの場合、この型式を見ると搭載されているエンジンやハンドル位置、乗車定員などがわかるようになっている。
まず最初の「H」の部分は、搭載されているエンジンを示していて、無記号であればL20型、「P」はS20型、「H」はL24型かL28型、「R」はL26型を表している。
次の「L」は、ハンドル位置で、無記号は右ハンドル、「L」は左ハンドルを表す。
さらに、次の部分に「G」があると、2by2、無記号は2シーターを表している。
最後に「S30」というのは、昭和50年排出ガス規制以前のモデル、「S31」となっていれば昭和51年排出ガス規制適合車である。
つまりこの「HLS30」は、L24型もしくはL28型を搭載した、左ハンドルの2シーター、昭和50年排出ガス規制以前のクルマ、ということになるのだ。そしてエンジン排気量については、プレート内に記載されていることから、搭載されているエンジンはL24型であることがわかるようになっている。
出品された個体の外観も美しいものだ。バンパーは当時の北米の基準に適合するよう、大型のものとなっているが、それも含むメッキパーツの輝きは強く、ボディ塗装のヤレもないが、これはオリジナルと同じようにレストアしているから。
ホイールは一見するとワタナベのエイトスポークのように見え、JWLやVIAの刻印も入っているが、これはフィリピンのロタ社製。ロタ社は現在も存続していて、どこかで見たようなデザインのホイールを、オリジナル品として数多く販売している。これについては日本人的な感覚でいえばマイナスポイントとなるが、アメリカ人にとっては、それほど気にする点ではないのかもしれない。
そのほかのプラスポイントとしては、エアコンの装備が挙げられるが、オークション情報ではエアコンとなっているが、これはおそらく純正のクーラーではないかと思われる。
この個体の予想落札価格は、7万5000ドルから9万ドル(邦貨換算約792万円−950万円)。しかし昨今のJDM人気も含めて考えると、より高額での落札も十分にあり得る。一体いかほどの値付けがされるのか、楽しみだ。
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