【試乗】禁断のフェラーリチューニング! アイディングが手掛けた「F355」を中谷明彦氏がインプレッション

くるまのニュース / 2020年10月11日 19時10分

フェラーリとBMWのチューニングで、その名を世界に轟かしたアイディング。そのアイディングが手掛けた「F355」のコンプリート仕様を、レーシングドライバーの中谷明彦氏が試乗した。

■「本物」のチューニングカーだけが持つオーラ

 今回試乗するのは、知る人ぞ知るアイディングの自信作「F365-SIII」である。かつて欧州を震撼させたシルバーのカラーリングとオリジナルの外装を纏ったこのマシンは現代に蘇った「本物」だ。

 シルバーのカラーリングは「Argent Nurburgring(ニュブルクリンクの銀)」と名付けられた専用色でイタリアンカーのフェラーリでありながらスポーツカーの聖地として名高い独ニュルブルクリンク・サーキットの名を冠した。

 シルバー色自体ドイツ・レーシングカーのナショナルカラーであり質実剛健な独製ハイパフォーマンスカーにイタリア車ベースで真っ向から挑んだ意気込みの表れだ。

●欧州メーカーとチューナーを震撼させたアイディングとは?

 F365はベースのフェラーリ「F355」の3.5リッター90度V型8気筒エンジンに手を加え、最高出力を14ps高めた394psとし、最大トルクも36.7kgmから38.6kgmへと向上させている。

 その手法はアイディング社が得意とする排気系チューニングはもちろんのこと吸気系もリメイク。またエンジンも完全分解してヘッド回りやバルブ、クランクやコンロッドなどもバランスをとるなどファインチューンを施し、圧縮比も僅かに高めるなど高度な内容だった。試乗したF365-SIIIはデビュー当時のコンディションを完全に再現され高速域に放たれるのを待っていた。

 もう1台、フェラーリの代表色である「Rosso Corsa(赤いレーサー)」に染まるのは、F355後期型をベースにF365-SIIIの進化版として現代にリリースされたモデル「F385-SIII」だ。

 このモデルでは動力性能の強化を主目的としてエンジンの排気量を3.8リッターにアップし最高出力433ps/8600rpm、最大トルク39.1kgm/5700rpmという現代のスーパーカー群と対等な出力スペックを与えられている。

 F365-SIIIと異なるのは排気量だけでない。吸気系をオリジナルのF355と共有することでコストを抑えつつ、排気系にのみオリジナルマフラーを組み込む事で独特なエンジン音を奏でるように調律されている。圧縮比は最も高い11.7:1でボッシュ・モトロニックM5.2の制御でノックコントロールし、ノーマルF355より100rpm高い最高回転数8600rpmを許容している。

 公表値によればパワーアップの結果0-100km/h加速4.5秒で、F355及びF365-SIIIの4.7秒を凌ぎ、最高速も308km/hでF355の295km/h、F365-SIIIの302km/hを凌駕しているとアナウンスされている。

 今回はそこまで試せなかったが高速道路と一般道を走りながらこの2台の違いと魅力を比較しながら探ってみた。

■真の名車「F355」をチューニングした2台のアイディングSIII仕様を試乗!

 2台のアイディングS3に何故惹かれるのか。それはベースの車体がフェラーリF355だからに他ならない。

 F355はすでに登場から20年以上経過しており、最新フェラーリモデルと比べたら古さを感じさせられるだろう。だがクラシックカーの仲間に入るにはあと10年くらいの年月が必要だ。

素材として素晴らしい「F355」をさらにリファインしたアイディングのコンプリートカー素材として素晴らしい「F355」をさらにリファインしたアイディングのコンプリートカー

 F355の魅力とは何か。それは現代に通じる本物のスーパーカーとしてその「名に恥じない」真の実力を身につけた初代フェラーリといって過言でないバランスの取れた素晴らしい走行性能にある。

「テスタロッサ」や「512」など、F355と同年代のフェラーリはたとえ格上でも、実際にサーキットを走らせるとレーサーのコントロールにきちっと応えてくれる仕上がりに達していなかった。

 F355はサーキットを攻めてもコントロールが楽しめ、他のモデルとは次元の違うラップタイムを刻み、実力で世界を虜にした名車なのだ。

 そんなF355でも現代の500psオーバーのモンスターマシンが相手となっては分が悪い。F355のバランスを活かしつつモアパフォーマンスを求めた時、改めてF365-SIIIとF385-SIIIが輝いて見えるではないか。

●上品な味付け、F365-SIII

 そんな想いを抱きながらまずF365-SIIIのコクピットに着いた。久しぶりのF355のコクピットが懐かしい。Hパターンのシフトゲートが輝くフェラーリを操るのも久しぶりだ。

 オフセット気味のペダルを踏み込み走り始める。チューニングされているとはいえスロットル特性は極めてリニアで扱い易く、市街地や坂道発進でも問題ない。

 エンジンサウンドは低回転域では極めて静かで上品だ。大きなオリジナルマフラーの消音器は無用な排気音を抑えるが、吹かした時の排気圧は効果的に下げて抜けをよくする。マニュアルギアを小気味よく操作し操るのは、楽しさに満ちており、フェラーリのシフトゲートのなかではより一層心が踊る。

 加速特性はスムーズかつレスポンシブルで自然吸気エンジンの良さを思う存分に味わえる仕上がりだ。サスペンションはオリジナルのJRZ別タンク付きショックアブソーバーにアイバッハ製コイルスプリングを組み合わせ、ブッシュ等とトータルチューニングしている。そのバネレートはハードながら質感に富んだ乗り味を提供してくれていて決して不快なものではない。サーキットでハイグリップタイヤを履かせればよりマッチングが良くなるはず。

●F1マチックをMTに換装したF385-SIII

 次にF385-SIIIに乗り換える。排気量アップで大幅に向上した低速のトルク特性が効果的で、アメ車のビッグトルクを扱うような余裕がある。それでいて高回転域でのパンチは強力。

 同じギア比だが一段低いギアで走れ、かつ速度レンジも広まるのでイージードライブが可能なほどだ。セミATのF1ギアボックスを流用したことでクラッチ容量が増え、クラッチペダル踏力は重くなるが、エンジンのトルクアップを許容させているのは、フェラーリを知り尽くしているからこそ可能な隠し技といえる。

 足回りはビルシュタイン製ショックアブソーバーとノーマルレートのアイバッハスプリングをコンビネーションさせ、路面段差を突き上げなく通過でき、乗り心地は極めて秀逸なレベルだ。

 パワーアップに伴い両車ともブレーキシステムもレベルアップ。APと共同開発した6ポッドのレーシングキャリパーをフロントに配置し、355mmに拡大されたスリット入りローターと組み合わせている。

 リアは4ポッドの同じくAP製キャリパーと330mmのローターで、前後ともローター/ブレーキパッドはエンドレス製を設定している。制動力の向上しろはおそらく動力性能以上にあるだろう。

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