なぜディーゼル廃止相次ぐ? 世界で定番化もマツダ&三菱が無くすワケ

くるまのニュース / 2020年10月24日 9時30分

世界中の自動車メーカーはディーゼルエンジンを搭載するモデルを続々と登場させていますが、ここにきて国産メーカーのなかでもディーゼルエンジンに力を入れているマツダや三菱が相次いでディーゼルエンジンを搭載するモデルを廃止しているのです。その理由とはなんなのでしょうか。

■なぜ世界で定番化したディーゼルエンジンが相次いで廃止される?

 かつて環境汚染のイメージがあったディーゼルエンジンですが、昨今ではクリーンディーゼルと称されるほど、低燃費なイメージとなりました。
 
 そのため、世界中の自動車メーカーはディーゼルエンジンを搭載するモデルを続々と登場させていますが、ここにきて国産メーカーのなかでもディーゼルエンジンに力を入れているマツダや三菱が相次いでディーゼルエンジンを搭載するモデルを廃止しているのです。その理由とはなんなのでしょうか。

 ガソリンエンジンと並んで、長くクルマのパワートレインのメインストリームとなってきたのがディーゼルエンジンです。

 ガソリン車に比べてトルクが太く、燃料となる軽油の価格がレギュラーやハイオクと比べて安価なためコストメリットもあることから、長距離を運転するユーザーには高い人気を誇っていました。

 ディーゼルエンジンは、トルクが太く燃料費が安いという特性から、トラックをはじめとする商用車に多く搭載されてきたという経緯があります。

 轟音とともに黒煙を巻き上げて走るその姿から、環境的ではないと誤解されてきた不遇のパワートレインでもありました。

 しかし、2012年にマツダがミドルサイズSUV「CX-5」のディーゼル車を発売して以降、各メーカーからディーゼル車が登場し、再び市民権を得るようになったのです。

 マツダではその後も主力モデルにディーゼル車を設定し、日本における「クリーンディーゼル」人気の立役者となりました。

 そんなマツダですが、2020年10月をもって欧州向けのマツダ6に設定されていたディーゼル車の生産を終了するという報道があったのです。

 元々、欧州はディーゼルエンジン優勢の市場でした。マツダは新車販売台数の約2割を欧州市場に依存することから、以前から欧州向けにディーゼル車を用意。

 欧州市場でディーゼルエンジンが主流となった要因は諸説ありますが、国家間を含めた長距離移動が多い点や、価格を重視する層が多いことなどが要因といわれています。

 しかし、2015年1月より、「ユーロ6」という厳しい排気ガス規制が敷かれることになります。

 これにより、ガソリン車と同等のクリーンさを持つディーゼルエンジンでなければ、新車販売することができなくなってしまいました。

 当然、欧州市場に注力する各社はよりエコなディーゼルエンジンの開発を進めたことで、いわゆる「クリーンディーゼル」が完成することになります。

 さらに、「ユーロ6」によって環境性能が引き上げられたことで、世界でもっとも排気ガス規制の厳しい日本の基準もクリアすることができるようになりました。

 つまり、欧州向けのクリーンディーゼル車が日本でもそのまま(正確には細かな法規対応のみで)販売できるようになったのです。

 ここ数年、日本でも「クリーンディーゼルエンジン搭載」のクルマが見られるようになったのには、こういう背景がありました。

 しかし、2015年にアメリカから巻き起こった、フォルクスワーゲンによる大規模な不正、通称「ディーゼルゲート事件」によって事態は一変します。

 これは、排気ガス測定検査の時のみ作動する不正なデバイスによって、実際の排気ガスよりも少ない値が計測されるようにしたというものです。

 この事件によって、欧州メーカーを中心に、自動車産業は大きな方針転換を余儀なくされます。

 自動車業界を専門とするコンサルタントは次のように話します。

「世界中の自動車メーカーは、いずれハイブリッド(HV)やプラグインハイブリッド(PHEV)、そして電気自動車(EV)といった電動車が主流になるということは想定していました。

 ただ、現実的に電動車が主流になる時期については各社の考えは定まっていません。

 石油資源の少ない日本は、世界でもっとも電動化が早い国でしたが、一方の欧州は当面は既存の技術のアップデート、例えば、『ダウンサイジングターボエンジン』、そして『クリーンディーゼルエンジン』の採用で当座はしのげるという見立てをしていました。

 しかし、『ディーゼルゲート事件』によって、クリーンディーゼルのイメージは悪化し、ダウンサイジングターボも劇的な燃費向上は難しくなってきたことから、今後厳格化される各国の環境規制へ対応するためには、電動化を進めるしかなくなってきたのです」

※ ※ ※

 実際に、2015年以降欧州の各メーカーから電動車が登場しています。

 また、フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツなど各社は電動車のためのサブブランドを展開しています。

 もちろん、ディーゼル車自体はまだ販売されていますが、今後さらに拡大していくとは考えにくい状況です。

 さらに電動車の価格が低下していくにつれて、今後ディーゼル車市場は縮小化していく傾向であることは間違いないでしょう。

■新型ディーゼル登場の可能性も少しはある?

 ディーゼル車市場縮小の流れは日本国内でも起こっています。

 2020年10月15日に三菱「エクリプスクロス」がマイナーチェンジされましたが、ディーゼル車がラインナップから消えてしまいました。そして、その代わりに導入されたのがPHEV仕様です。

 エクリプスクロスもまた、マツダ6と同様に欧州市場でも販売されているモデルです。ディーゼル車がラインナップから無くなった理由について、三菱は次のように話します。

「エクリプスクロスのようなクロスオーバーSUVでは、PHEVを中心とした電動車で環境対応を推進する考えです。

 一方、ピックアップやクロスカントリーSUVではディーゼルモデルは必要であり継続します」

ディーゼルの代わりに投入された三菱の「エクリプスクロスPHEV」ディーゼルの代わりに投入された三菱の「エクリプスクロスPHEV」

 では、今後新たなディーゼルエンジン搭載モデルが登場する可能性はないのでしょうか。

 多くの国が2030年から2050年ころまでに内燃機関のみのクルマの新車販売を禁止するという方向性を打ち出しているため、長期的に見ればディーゼルエンジンが消滅するのは既定路線といえそうです。

 しかし、それ以前に関しては、新たなモデルが登場する可能性もまったくないわけではありません。

 そもそも、各社がディーゼルを廃止する直接的な理由は、各地域の環境規制に対応ができないからです。

 しかし、これまでの規制が原則としてモデルごとに課されるものであったのに対して、現在ではメーカー全体に課されるものへと変化しつつあります。2020年度より日本でもはじまった企業間平均燃費による規制、通称「CAFE規制」です。

 CAFE規制では、そのメーカーが新車販売したクルマの総数と、各モデルの有害物質排出量(≒燃費)から算出された数値が基準値以下であるかどうかで判断します。

 実際には複雑な計算式がありますが、2020年度基準ではおおよそ20km/Lを超えている必要があります。

 あくまで「企業間平均燃費」であるため、基準値を超えるクルマを多く販売していれば、基準値に満たないクルマも販売することが可能です。

 そのため、トヨタのようにハイブリッド車などを多く販売しているメーカーであれば、ラインナップの一部にディーゼルエンジン車や大排気量のスポーツカーなどを用意することも理論上は可能となります。

 実際に、トヨタでは2019年12月に新型車の「グランエース」を発売していますが、グランエースに搭載されるのは「ランドクルーザープラド」にも搭載される2.8リットルのディーゼルエンジンで、プラドと合わせても販売台数はトヨタ全体のごく一部であることから、設定することができたものと考えられます。

※ ※ ※

 CAFE規制の導入は、画一的なエコカーばかりをラインナップする必要がないという意味で、ユーザーにとってもメリットがあるといえます。

 しかし、マツダや三菱のようなメーカーでは、そもそもの販売台数が少なく、電動車の販売割合も少ないため、ディーゼルを販売している余裕がないといえそうです。

 やむを得ないことではありつつも、選択肢がせばまるのはユーザーにとってはデメリットであるといえるかもしれません。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング