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ベントレー「フライングスパー」の最新技術の洗練度は最高レベル!

くるまのニュース / 2020年11月9日 8時10分

秋は旧車のオフ会をはじめとするイベントが目白押し。10月半ばに開催された「浅間サンデーミーティング」に、ベントレー「フライングスパー」で参加したモータージャーナリスト金子浩久氏が、道中で体感したフライングスパーの最新技術をレポートする。

■ベントレーは、オーダーするときから楽しみが始まっている

 新しくなったフライングスパーを間近にすると、先代モデルよりもさらに堂々とした姿に圧倒される。ホイールベースが130mm伸ばされ、フロントアクスルが前方に移動したことによって、躍動的な印象を醸し出している。前から見ても横から見ても、ひと目で第3世代となったことがわかる。

●静粛性の高いロボタイズドAT

 クロームメッキされた縦のルーバーの輝きが強調されているように見えて、フロントグリルが存在感を強く主張しているのも、その理由のひとつかもしれない。

 そして、車内は紛れもないベントレーの世界が展開されている。一瞥しただけで素材の上質さを窺わさせる革やウッドなどがふんだんに用いられていて、もし自分が注文する時にはどんな素材や色、仕様などを選ぼうかと妄想しただけでワクワクしてしまう。

 ボディカラーだけで88色、内装色は5色だが、最近では革やウッドだけでなくインドの渓谷で切り出された石材まで極く薄く切り出されて内装材に用いられていて、その組み合わせは5000通り以上にも上るというから驚きだ。

 ヨーロッパでは、ベントレーを新車で購入する人の約8割はイギリス・クルーの本社工場まで出掛け、ボディカラーから内装まですべての仕様をじっくりと選びながら決めていく。つまり、それだけ選択肢が豊富に用意されていて、自分だけの1台を誂えていくのが一般的だ。ベントレーのようなクルマは、納車される前から楽しみが始まっているのだ。

 都内の雑踏に走り出すと、635psの最高出力と900Nmもの最大トルクを発生する6.0リッターW型12気筒ツインターボエンジンが微かにハミングしながら、フライングスパーを滑らかに加速させていく。このエンジンも初代フライングスパーや「コンチネンタルGT」などの新世代のベントレーに搭載されて以来、熟成を重ねてきている。

 それに組み合わされるトランスミッションが一新されたのが新機軸だ。先代までのオーソドックスなトルクコンバーター式ATから、ツインクラッチ式のDCTとなった。

 DCTは「ロボタイズドAT」と呼ばれるように、マニュアル・トランスミッションをメカニカルに変速させ、それを電子制御でコントロールする。レーシングカーから拡がっていったものだから、変速時間の速さやダイレクトな感触を活かしたスポーティなクルマを中心に採用されていたのだが、フライングスパーのような、静粛性や快適性が高いレベルで要求される超高級車にも用いられるようになった。

 ツインクラッチ式の弱点は変速の際にギクシャクしたような感触とそれに伴うノイズの発生だが、新型フライングスパーからはそれらはまったく感じることがなかった。都内の混雑気味の路上では、2速と3速で変速を繰り返しているのに、弱点が見受けられなかったのはさすがだ。

●状況を確認しやすいドライバーインターフェイス

 高速道路に乗って、一路、軽井沢を目指す。すでに陽が暮れていて、夜間の長距離ドライブとなったが、それを大いにサポートしてくれたのが運転支援機能(ドライバーアシスト)だった。

 メーターパネル内のデジタル表示が、大きなドライバーアシストの表示に切り替わる。フライングスパーと先行車を模したイラストの左右に道路上の車線を模したラインが現れ、カメラとレーダーで車線を捕捉している証しとして、それがグリーンに点灯する。

 ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシスト)機能を働かさせるために、ステアリングホイール裏の左下にある専用レバーを操作する。ロジック、操作方法ともにわかりやすく、すぐに飲み込めた。

 フライングスパーのドライバーアシストは「渋滞アシスト」機能も付いた最新のものだ。レバーで最高速度と前車との車間距離を設定し、ステアリングホイールの右スポーク上のボタンを押して有効化される。

 ただし、何らかの理由によって先行車を捕捉できていなければACCの機能を使うことが出来ないし、車線を捕捉できていなければLKASを働かさせることもできない。

 走行中に、それらがちゃんと機能しているかどうかを確かめるのには表示を確認するしかないから、表示は大きく見やすく、わかりやすくなければならない。新型フライングスパーは申し分ない。たとえ、スピードメーターとタコメーターの中間部分にドライバーアシスト画面を選ばず、他の表示を利用していたとしても、右側のタコメーター下部にも小さく表示されるから安心だ。タコメーターの代わりにナビゲーションの地図画面を表示させていたとしても、それは変わらないから万全だ。

 大きく見やすく、わかりやすい。現在の運転支援機能は、「レベル2」と呼ばれる基準内にあるために、クルマに任せ切ってしまうのではなく、ドライバーが運転を執り行なっていなければならないから、これらの表示がとても大切になってくる。

 運転支援機能を備えていても、表示が小さくわかりにくいものもまだまだ少なくはない。職業柄、新型車を試乗した際に運転支援機能はすべて試すことにしているが、この新型フライングスパーのドライバーインターフェイスが最も優れているもののひとつだ。

■ナイトビジョンで鹿との衝突を間一髪でかわす!

 もうひとつの新機軸は、4WS(4輪操舵)。ベントレーに初めて採用された。低速域での操作性と高速域での走行安定性の向上を目論んだものだ。全長5.3mを超えるフライングスパーのような大きなクルマの取り回しに寄与しつつ、高速道路での巡航で安定したコーナリングをもたらしてくれる。

●あわや、鹿に衝突を回避!

「フライングスパー」が、生産を終了した「ミュルザンヌ」なき後のベントレーの旗艦を務めるには文句はないだろう「フライングスパー」が、生産を終了した「ミュルザンヌ」なき後のベントレーの旗艦を務めるには文句はないだろう

 実際に、新型フライングスパーでの高速巡航は「安定」以上のものだった。あり余るほどのエンジンパワーは必要がないと判断されれば12気筒のうち6気筒が停止されて、燃費を向上させる。テストデータでは、先代よりも15%も効率化された。一定のペースで走行すると、エンジンとトランスミッションの連結が切り離されるコースティング機能も働く。

 他にも、「48Vアンチロールシステム」や「アクティブAWD」などによって、高速巡航は安楽そのものだ。時にはシートに組み込まれたマッサージで身体をほぐしながら、接続した自分のスマートフォンを通じて音楽アプリのSpotifyを起動させ、さっきまで自宅のPCで聞いていたプレイリストの続きを楽しむこともできた。車内は極上のプライベート空間に変わった。オーディオシステムは、オプション「naim」製だから、音質は飛び切り上質だ。イギリスのプロ用音響機器メーカーのnaimは、初代のフライングスパーからカーオーディオシステムを供給している。

 だから、東京から上信越自動車道の碓井軽井沢ICまでは、アッという間だった。ここから軽井沢までは和美峠か碓井バイパスか迷うところだが、夜の闇の深さと十分な道幅の広さを考慮して、碓井バイパスで行くことにした。飛ばすわけではないけれども、コーナーが連続するので、ドライブダイナミックモードをこれまでのBモードからスポーツモードに切り替え、さらにナイトビジョンもオンにして、メーターパネル中央に暗闇のなかのものを映し出すことにした。

 碓井バイパスには先行車や対向車も見当たらなかった。スポーツモードに切り替えたことで、ステアリングの手応えが増し、ギアも低めが選択される。サスペンションも引き締まった。オートハイビームではるか前方まで照らし、2.4トンもの巨体とは思えないほど軽快に碓井峠を駆け上がっていった。

 と、その時。道路の左から勢いよく飛び出してきた野生の鹿が前を横切ろうとした。そのまま横切ってくれればいいようなものの、鹿はフライングスパーに驚いたのか、道路の真ん中で立ち止まってしまった。

 フロントガラス越しに見えたのとほぼ同時に、ナイトビジョンのモニター画面越しにも見えた。慌ててステアリングを切って、フライングスパーの左フェンダーが鹿の頭のギリギリ数センチ横を切り抜けられて、難を逃れることができた。ルームミラーで見ると、鹿はキョトンとしながら何もなかったように反対側の林のなかに消えていった。

 スポーツモードとオートハイビームとナイトビジョンに助けられ、鹿と衝突せずに済んだ。

●ミュルザンヌの後継として文句なしのフライングスパー

 よく晴れた翌朝、白糸ハイウェイを上っていくと、木々の間から冠雪した浅間山が見えた。あとで、浅間サンデーミーティングの実行委員である地元在住の人に訊いたら、初冠雪だそうだ。

 鬼押出し園に着くと、すでに多くのクルマが詰め掛けていた。以前におこなわれていた「浅間ヒルクライム」を実施していた人々が、再びみんなで集まろうと2年前から始まったのが浅間サンデーミーティングだ。毎月第2日曜日に、テーマを決めて集まっている。2020年では最後の開催となる10月18日のテーマは、「イギリス車と小型スポーツカー」だった。

 ミニ、ロータス、ジャガー、ランドローバー、トライアンフ、MG、ヒーレー、ジネッタ、ロールスロイス、珍しいところではラゴンダやファセルベガなどが並んでいる。テーマとは外れるクルマのオーナーさんたちは遠慮がちに端の方に駐めながら参加しているのが微笑ましい。参加台数は約200台と発表されていた。

 知り合いもいれば、初対面の人もいる。どちらの人たちもクルマを前にすれば、すぐに打ち解けて話が始まるのは、こうしたオフ会のいいところだ。

 会場には、フードトラックやミニカーショップ、地元の食品や生産物などを売るテントなどがいくつも出展し、お土産を選ぶのも楽しくなってくる。

 天候にも恵まれ、始まったばかりの紅葉や遠くの山々も良く見える。クルマのイベントだけれども、自然も満喫できた。投票式のコンクールデレガンスで優勝したのは、素晴らしいコンディションのジャガー「Eタイプ」。フードとトランクリッドを開けた雄姿を来場者が取り囲み、撮影されていた。

 8時前から集まり始め、11時過ぎには散会。こういう集まりは、短い方がキリッと引き締まるという良い見本だった。実行委員の皆さんに拍手を送りたい。来年もさらなる発展を願うばかりだ。

 新型フライングスパーは先代モデルをはじめとするベントレー各車の魅力となっていた工芸品的な各部分の超絶的な仕上げや仕様の幅広さ、圧倒的な高性能などが担保されているのは当然のこととして、新型には最新の運転支援機能が盛り込まれ、狙い通りに機能していたことに唸らされた。

 伝統や固有の価値だけにこだわることなく、意匠は可能な限り維持しながら、最新鋭の機能を貪欲に取り込み、見事にドライバーインターフェイスを向上させている。生産を終了した「ミュルザンヌ」なき後のベントレーの旗艦を務めるには文句はないだろう。

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