『サーキットの狼』世代ドンズバ!! 1千万円から1億円の国産スポーツカーとは?
くるまのニュース / 2020年11月8日 11時50分
第1次スーパーカーブームを巻き起こした漫画『サーキットの狼』。この漫画には数多くのスーパーカーが登場したが、輸入車だけでなく国産車も数多く登場した。そこで、漫画に登場した国産車が、現在のオークションではどれくらいの価値で評価されているのかをレポートしよう。
■人気のJDMは、1000万円から!
1975年から1979年にかけて、週刊少年ジャンプに連載された漫画『サーキットの狼』は、当時の少年達に熱狂的に支持され、日本にスーパーカーブームを巻き起こした。
2020年におこなわれたRMサザビーズ主催の「THE ELKHART COLLECTION」では、この漫画に登場したクルマが幾台も出品された。今回はそのなかから、いまでは国産旧車と呼ばれる日本車にスポットを当て、『サーキットの狼』の登場人物の誰がドライブしていたクルマだったかを交えながら、現在のオークション市場での価値をお伝えしよう。
●1972 ダットサン「240Z」
北米で根強い人気のあるダットサン「240Z」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
日産初代「フェアレディZ(S30型)」は、漫画のなかでは数多く登場する。ただし、サブキャラクターや名もない登場人物のクルマとしてだ。暴走族集団である「影法師」や「極道連」の会長が乗るのもS30型のフェアレディZだし、主人公たちがバトルするシーンではよく、やられキャラとしてフェアレディZが登場するといった具合だ。
主要人物が運転するクルマとしての登場は、警察官として登場する沖田のパトカーとしてが最初だろう。風吹裕矢と早瀬佐近のファーストコンタクトの際も、沖田はフェアレディZのパトカーに乗って登場する。
ただし、飛鳥ミノルがドライブするランボルギーニ「ミウラP400S」を追いかけた際には、230km/hからのスピンターンについていけず、クラッシュしてしまう。
本格的に主要キャラクターがレースで乗るクルマとしての登場は、シュトコー戦闘隊「神風」リーダーである魅死魔国友の愛車としてである。ただし、魅死魔の運転するフェアレディZは、「スカイラインGT−R」に搭載されているS20型エンジンを積み、レギュラーモデルの4速MTから5速MTへと変更された「フェアレディZ432」であった。
このフェアレディZ432は、風吹裕矢のロータス「ヨーロッパ・スペシャル」と早瀬佐近のポルシェ「930ターボ」と首都高速でバトル。その後、筑波サーキットでのA級ライセンス取得レースにも参戦。リアタイヤのバーストや、コースアウトでフロントを破損するなどのアクシデントに見舞われながらも、4位でゴールした。
オークションに登場したフェアレディZは、北米では「ダットサン240Z」と呼ばれる輸出仕様だ。行距離は2万9000マイル(約4万7000km)強で、2.4リッターのL24型エンジンを搭載し、ミッションは4速MTとなっている。
7万5000−9万ドル(邦貨換算約775万円−930万円)というエスティメートに対して、落札価格はそれを上回る9万2400ドル(邦貨換算約955万円)であった。北米での「ダットサン240Z」の人気を裏付ける結果となった。
●1967 マツダ「コスモスポーツ」
生産台数の少なさから、日本でも公道で見かけることは非常に稀となったマツダ「コスモスポーツ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
漫画でマツダ「コスモスポーツ」が最初に登場するのは、公道グランプリレースである。ボディカラーはレッドで、ドライバーは山岸みのり。
山岸みのりは、早瀬佐近の幼馴染みで早瀬家のライバル電気会社の令嬢という設定。早瀬佐近に恋心を抱いており、クルマとスピードに魅了されている早瀬左近に少しでも近づきたいという一心で、プロレーサーからドライビングテクニックを教わり、公道グランプリレースに参戦して早瀬佐近とバトルするも、マシントラブルであえなくリタイアする。
さて、コスモスポーツは、実用・量産ロータリーエンジンを搭載した世界初のクルマであるが、大きく前期モデルと後期モデルに分けられる。山岸みのりが運転していたのは、フロントのエアインテークの形状から後期型である。
漫画内ではコスモスポーツが登場するシーンは、山岸みのりが運転するシーン以外にはなく印象の薄いクルマであるが、「帰ってきたウルトラマン」では、怪獣攻撃隊であるMATの特捜車両「マットビハイクル」として登場し、そちらの方で有名である。
さて、オークションに登場したコスモスポーツは前期型であった。オークションの情報によれば、走行距離は7116kmしかなく、343台しか生産されていないうちの1台である。
7万−9万ドル(邦貨換算約724万円−930万円)のエスティメートが掲げられていたが、なんと予想を遥かに上回る12万8800ドル(邦貨換算約1330万円)での落札となった。走行距離の少なさと、新車のような美しいコンディションが大きく影響したようだ。
■トヨタ「2000GT」の驚くべき落札価格とは?
漫画の最初のレース舞台となった「公道グランプリレース」において主人公・風吹裕矢のライバルとなった隼人ピーターソンの愛車として登場するのが、トヨタ「2000GT」である。
ソーラーレッドのボディカラーは非常に珍しいトヨタ「2000GT」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
風吹裕矢が飛鳥ミノルに誘われて、初めて富士スピードウェイで練習走行していた際に、早瀬ミキとのデートを賭けておこなったバトルで、トヨタ2000GTは初登場する。
隼人ピーターソンは、その名から想像できるようにハーフという設定で、非常に女たらしとして描かれている。漫画では、外車に乗りたがる日本人に対して、トヨタ2000GTという素晴らしい国産車があることを風吹裕矢に誇らしげに語る姿が印象的であった。ハーフの隼人ピーターソンが日本車を褒め、愛車にしているというのも心憎い設定である。
隼人ピーターソンは公道グランプリレースの前年度チャンピオンであり、ドライビングテクニックは、風吹裕矢や早瀬左近とも互角の腕前。しかし、レースに勝つためなら悪質なブロックなども厭わない、完全なるヒール役である。
そのためか、当時の少年達にはトヨタ2000GTはヒールが乗るクルマとして認知されることになり、人気は今ひとつだったといえるだろう。
公道グランプリレースでは、トップを走るトヨタ2000GTであったが、雨の熱海ビーチラインで風吹裕矢のロータス「ヨーロッパ・スペシャル」を体当たりで幅寄せするも、コーナーの先で道路が崩れていたために海に落ちてしまうという最期を遂げる。
今回オークションに出品されたトヨタ2000GTは前期モデルだが、漫画内で隼人ピーターソンがドライブしていたのは後期モデルである。
トヨタ2000GTは、1967年に当時のクラウンの1998ccのM型直列6気筒SOHCを、ヤマハの手によってDOHCに改良したものを搭載して登場。
ヘッドもアルミニウム合金製となるなどその改良範囲には非常に幅広いもので、最高出力は150ps。アルミニウム製のオイルクーラーを備えるなど、走りへの準備は万全だった。
組み合わせられるギアボックスは5速MTで、0−100km/h加速は10.5秒、また最高速は220km/hを記録したという。当時ではいずれも驚愕のスペックといえる数字である。
ちなみにその価格も同様に驚くべきもので、新車価格は238万円。これは当時のクラウンが2台購入できる価格に相当していた。
セールス開始から約2年後にはマイナーチェンジも実施され、フロントの灯火類やリアサイドリフレクター、インストゥルメントパネルのデザイン、クーラーの装備、そして3速AT仕様の追加設定もおこなわれた。このMT仕様が、隼人ピーターソンの愛車である。
生産終了までの生産台数は、マイナーチェンジを期に前期、後期とに分けられ、国内向けが前期型で110台、後期型で108台。輸出用がトータルで102台。実験車などの特殊用途車が14台とされている。ほかにもテスト用プロトタイプや2253ccSOHCエンジン搭載車などもある。
さて、気になる落札価格だが、70万−85万ドル(邦貨換算約7240万円−8800万円)というエスティメートを大きく上回る91万2500ドル(邦貨換算約9440万円)であった。
オリジナルカラーであるソーラーレッドは珍しく、北米向けに輸出された62台の左ハンドル仕様のうちの1台、しかも1967年式の前期モデルであるというのが落札価格に大きく影響したものと思われる。
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