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古くて新しいジャガーは2億円!! レプリカではない本家の価値とは?

くるまのニュース / 2020年11月26日 13時10分

メーカーの手による「コンティニュエーション(Continuation:継続生産)は、英国ブランドが有名だが、その嚆矢でもあるジャガーの「コンティニエーション」モデルは、コレクターズアイテムとして価値があるのか、最新のオークション動向から検証する。

■「コンティニエーション」って、何?

 クラシックカー/コレクターズカーのオークション業界最大手のRMサザビーズ社は、北米インディアナ州エルクハートにて2020年5月に開催するはずだった大規模オークション「THE ELKHART COLLECTION」を、予定から約半年の延期に相当する10月23-24日に、COVID-19感染対策を厳重におこなった上での対面型と、昨今の新スタイル「リモート入札」の併催でおこなうことになった。

 2輪/4輪合わせて280台を超える自動車が集められたこのオークションは、実は詐欺の疑いで訴追され、破産宣告を受けたというさる実業家の資産売却のためにおこなわれたものだそうなのだが、主に第二次大戦後に生産されたアメリカやヨーロッパ、あるいは日本車も含む名車・希少車たちが勢ぞろいしていた。

 今回VAGUEが注目したのは、3台の古くて新しいジャガーだ。メーカー直営「ジャガー・ランドローバー・クラシック」の手によって「コンティニュエーション(Continuation:継続生産)」の名のもと、新たに再生産された伝説のレーシングモデル(およびその派出型)たちである。

●1963 ジャガー「Eタイプ・ライトウェイト・コンティニュエーション」

おそらく世界で初めて「コンティニュエーション」を名乗ったジャガー「Eタイプ・ライトウェイト・コンティニュエーション」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby'sおそらく世界で初めて「コンティニュエーション」を名乗ったジャガー「Eタイプ・ライトウェイト・コンティニュエーション」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 現在ではアストンマーティンなどの複数のブランドにて、クラシック部門のフラッグシップ事業としておこなわれている「コンティニュエーション」を世界で初めて名乗ったのは、まだジャガー・ランドローバー・グループ直轄のクラシック部門が本格始動する以前の2014年に発表された、この「Eタイプ・ライトウェイト・コンティニュエーション」だったと記憶している。

 オリジナルのジャガー「Eタイプ・ライトウェイト」は、1961年のデビュー早々から大成功を収めていた伝説のスーパースポーツ「Eタイプ」のレーシングモデルとして1963年に誕生した。

 当時のスポーツカー耐久レースGTカテゴリーを完全制覇していたフェラーリ「250GT」に対抗すべく、スチール製だったEタイプのモノコック/ボディパネルをアルミ合金に置き換え、1950年代の純レーシングスポーツカー「Dタイプ」譲りのチューンを施したXK型直列6気筒DOHCエンジンを搭載。

 打倒フェラーリはかなわなかったものの、レースでは一定の成果を得ることができた。

 そしてEタイプ・ライトウェイト・コンティニュエーションは、1963年当時のスペックで製作されたものである。「HTP(FIA Historic Technical Passport:ヒストリック・テクニカルパスポート)」を取得し、一部のクラシックカーレースにも出場可能とされている。

 今回の「THE ELKHART COLLECTION」オークションに出品されたのは、7台作られたうちの第1号車である「カー・ゼロ」である。

 ジャガー・ノースアメリカ社のデモカーとして使用されたのち、現オーナーのもとに所蔵されたが、出品に至るまでの走行距離はわずか717マイル(約1150km)とのこと。当然ながら、新車同様の美しいコンディションを誇っている。

 そのコンディションを反映するように、RMサザビーズ社は175万ドル−222万5000ドルという、今回の3台の「コンティニュエーション」のなかでももっとも高価なエスティメート(推定落札価格)を設定したのだが、実際の競売ではリザーヴ(最低落札価格)が設定されていなかったことから、手数料込みで171万ドルであった。

 つまり、日本円換算で約1億7800万円という、債権者たちにとっては少々不本意に違いない価格での落札となった。

■古いけど新車というコンティニエーションは、価格も高値キープ!

 ジャガー・ランドローバー・クラシック「コンティニュエーション」の実質的な第2弾となった「XK-SSコンティニュエーション」は、2016年に、北米ロサンゼルスのピーターセン自動車博物館で世界初公開された。

 ジャガーの熱心なコレクター向けに9台のみが生産され、販売価格は100万ポンド(当時の邦貨換算で約1億4000万円)を超えるといわれた。

●1957 ジャガー「XKSS コンティニュエーション」

スティーヴ・マックイーンが愛用したことでも知られる「XK-SS」の「コンティニエーション」モデルは、2億円オーバーで落札された(C)2020 Courtesy of RM Sotheby'sスティーヴ・マックイーンが愛用したことでも知られる「XK-SS」の「コンティニエーション」モデルは、2億円オーバーで落札された(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 かのスティーヴ・マックイーンが愛用したことでも知られるオリジナルの「XK-SS」は、1954年−1956年にかけてル・マン24時間レースで優勝した名作「Dタイプ」にウインドスクリーンと小さなソフトトップ、灯火器のみを追加したロードバージョンとして企画された。

 しかし、1957年に発生したジャガー社ブラウンズレーン工場の火災により、北米へ輸出される予定だった9台が焼失。結果として16台の製作に終わってしまった伝説のスーパースポーツである。

 そして2016年初頭に、この失われた9台分のXK-SSをジャガー・ランドローバーのスペシャル・オペレーションズに属する「ジャガー・クラシック」が継続するかたちで蘇らせると発表。この年の夏に第1号車が発表されるに至ったのだ。

 約18カ月にもおよぶ研究・開発期間を経て作られたXK-SSコンティニュエーションは、ジャガー本社が保管していた当時のオリジナル図面を活用する傍ら、1957年型XK-SSをスキャンしてボディやシャシ、必要な全パーツのデジタルイメージを構築。それをもとに、ハンドメイドで製造がおこなわれたという。

 ボディは、オリジナルのDタイプ/XK-SSと同じマグネシウム合金を使用するが、オリジナルの型が現存しないため1950年代のオリジナルボディをもとに、新たに型を製作したとのことである。

 また、当時のスペックを忠実に再現するべく、ダンロップ社製4輪ディスクブレーキやマグネシウム合金製ホイールとタイヤなどが用意された。

 一方エンジンは、Dタイプ譲りの3.4リッター直列6気筒DOHCを搭載するが、鋳鉄ブロック/鋳造アルミ製シリンダーヘッドは新たに製作。3基のウェーバー社製キャブレターが組み合わされるのも、オリジナルと同じスペックであった。

 さらにインテリアでは、木製のステアリングからレザーシートのシボ、ダッシュボードの真鍮ノブに至るまで、1957年当時のものを再現。その一方で、ドライバーや乗員の安全性確保を目的に、燃料タンクには最新の素材が用いられた。

 今回「THE ELKHART COLLECTION」オークションに出品されたのは、9台製作されたうちの1台で、走行距離はわずか51マイル(約80km)。

 RMサザビーズ社は、4年前に「新車」として作られた時の価格を大きく超える150万−200万ドルのエスティメート(推定落札価格)を設定した。

 そして運命の競売では、エスティメートの上限に迫る198万5000ドル、日本円に換算すると約2億800万円という驚きの価格で落札され、XK-SSの伝説がまだ健在であることを世界にアピールしたのである。

●1955 ジャガー「Dタイプ・コンティニュエーション」

62年ぶりに、25台を「継続生産する」ことが決定したジャガー「Dタイプ・コンティニュエーション」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's62年ぶりに、25台を「継続生産する」ことが決定したジャガー「Dタイプ・コンティニュエーション」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 RMサザビーズ社「THE ELKHART COLLECTION」オークションに登場した、もう1台の「ジャガー・コンティニュエーション」が、「Dタイプ・コンティニュエーション」である。

 ジャガー・ランドローバーは2017年に、英国ウォリックシャー州コベントリーに750万ポンド(当時の邦貨で約10億5750万円)を投じて土地を取得し「ジャガー・ランドローバー・クラシック」の本部を正式に発足。クラシックカービジネスに、全グループを挙げて乗り出すことになった。

 そしてその翌年となる2018年2月、新体制初の「コンティニュエーション」として、パリの世界的クラシックカーショー「レトロモビル」でワールドプレミアに供されたのが「Dタイプ・コンティニュエーション」である。

 オリジナルのジャガーDタイプは、名機「XK」直列6気筒DOHCエンジンを搭載し、1955年−1957年にかけてル・マン24時間耐久レースで優勝した、スポーツカーレースの歴史に冠たる名作中の名作であった。

 1955年からプライベートチームへの供給分と合わせて100台のDタイプを製作する予定ながら、当時のレースレギュレーションの改定により需要が失われたことから、完成は75台に留まっていたという。

 そこでジャガー・ランドローバー・クラシックは、1956年にDタイプの最後の1台が製造されてから62年ぶりに、残る25台をジャガー・ランドローバー・クラシック・ワークスで「継続生産する」ことを決定した。

 ジャガー・クラシックは、ジャガー社内に保管されていたDタイプのオリジナル設計図や記録を活用して綿密な調査をおこない、1950年代にジャガー・ワークスの名物レーシングマネージャーだったロフティ・イングランドと、彼の配下のエンジニアたちが定めた純正仕様を緻密に再現したものとされた。

 ボディタイプは1955年以前のショートノーズか、1956年以降のロングノーズのいずれかを選択可能とされたが、まずレトロモビルで披露されたプロトタイプは、ロングノーズで長いボンネット、ドライバーの頭部後方にある特徴的なヘッドカウル・フィンもついた、もっとも有名なDタイプのスタイルのものだった。

 一方「THE ELKHART COLLECTION」に出品された個体は、ショートノーズにヘッドカウル・フィンのない仕様である。

 ジャガー・ワークスを支えるサテライトチームで、1956年以降は撤退したワークスチームに代わってル・マン優勝を遂げていたことから、ワークス同様の敬愛を集める「エキュリー・エコス」のブルーメタリックにペイントされ、まさしく新車同様の素晴らしいコンディションを誇っている。

 このDタイプ・コンティニュエーションに、RMサザビーズ社は100万ドル−150万ドルのエスティメート(推定落札価格)を設定。実際の競売ではエスティメートに届く132万5000ドル、日本円に換算すれば約1億4000万円での落札となった。

 ジャガーDタイプについては1970年代から数多くのレプリカが制作され、なかには「リンクス」や「DEETYPE(ディータイプ)」、「ウィングフィールド」など、ホンモノにかなり近い高精度のレプリカも数多く存在。現代のスーパーカーに匹敵する価格で販売されてきた。

 それらのレプリカと比べても、「コンティニュエーション」がさらに数倍に相当する価格で取り引きされるのは、もちろんレプリカ以上に精度の高いことは重要な理由であろう。

 でも、やはりジャガー本社の「お墨つき」が絶大な効力を発揮することもまた、間違いのない事実と思われる。

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