ホンダ魂はいまも健在!? 初代「NSX」と新型「NSX」を乗り比べてみた!
くるまのニュース / 2020年11月23日 11時50分
いまも昔も変わらず、日本を代表するスーパーカーに例えられるホンダ「NSX」。ただし初代と新型では、搭載されるパワートレインもまったく異なり、同じなのは車名だけ、という見方もできる。では本当に新旧NSXには繋がりがないのか。そこにホンダ魂(ホンダイズム)はないのだろうか。2台を乗り比べて感じたものとは?
■誰もやっていないことにチャレンジして得た価値
新旧NSXを同時に乗り比べたことのある人は、そうそういないんじゃないだろうか。そんな願ってもない機会に恵まれたのは、チャンスをつくってくれた編集担当とFun2Driveのおかげ。まずは心より感謝したい。
そして読者諸兄も、箱根・仙石原にあるレンタカーショップ、Fun2Driveでレンタルすれば、同じように新旧NSXを乗り比べることもできる。2005年に現役をまっとうし、全7394台が生産されたという初代NSXのなかの貴重な1台が、こうしていつでも誰でも乗れる状態でスタンバイされているのだから。
NSXという車名は、N=NEW、S=SPORT、X=EXPERIENCEに由来し、ホンダの考える「新たな走りの喜び」を提案するスーパースポーツの具現化を意味する。初代が世に出た当時のスーパースポーツというと、敷居が高く乗り手を選ぶものだったところを、NSXは乗りやすく快適で、同等の性能をはるかに低価格で実現していたことが世界中で高く評価された。
一方、11年のインターバルを経て登場した2代目の新型NSXは、一気に2000万円台半ばまで新車価格が跳ね上がり、内容的にもこのカテゴリーで類を見ないほどの電動化技術を導入したハイテクマシンに生まれ変わり、強力な動力性能と未知なるハンドリング性能を実現した。
そんな2台にあらためて触れると、やはりホンダはやることが良い意味で極端だなと感じる点では共通しているが、そこにあまり脈絡は感じられない。
構造的にも、同じミッドシップでも横置きと縦置き、同じV6でも自然吸気とターボという大きな違いがある。また、じつはNSXのような高性能スポーツカーで1990年にATが設定されていたのも画期的な話なのだが、初代ではMTとATが選べたトランスミッションも、新型では近年の多くのスーパースポーツと同じくDCTのみとされた。
そんななかでも共通して感じられたものがある。それは誰もやっていないことにチャレンジして得た価値がある点だ。
初代のオールアルミモノコックボディによる当時としてはピカイチだった高い剛性は、30年が経過しても新車時のように維持されていることに驚いた。走りにダイレクト感があり、操縦感覚がとても素直であることも再確認できた。
かたや2代目は、いわずもがな3モーターを駆使したスポーツハイブリッドSH-AWDによる新感覚のハンドリングだ。
リアモーターがターボラグを補いつつ、フロントのツインモーターユニットが左右輪の駆動力と抵抗差によりトルクベクタリングをおこなうという仕組みで、登場当初は意思との位相遅れやズレを感じたところ、最新版はそのあたりが非常にナチュラルに仕上がっていることを今回確認できた。
■あくまでドライバーが主役のスポーツカーという新旧に共通したホンダイズム
いずれも根底にあるのは、ホンダがかねてから強調している「人間中心」の思想であり、それを少しでもよい形で実現しようとしたことがヒシヒシと伝わってきた。
ホンダ初代「NSX」と2代目新型「NSX」
そういえば2代目NSXの発表時にその開発責任者が、ギターになぞらえて、初代のアコースティックギターから、2代目はエレクトリックギターになったという旨のコメントをしていた。
ギターに造詣のある筆者にとっては、エレクトリックギターは電気を使うがじつは非常にアコースティックな楽器であり、2代目のコンセプトを聞いた限りでは、どちらかというとギターシンセサイザーと表現したほうが相応しく、その後にドライブしてますますそう感じられたものだった。
ところが最新版をドライブすると、電気を使いながらもアコースティックな走りを実現していたので、その意味では件のコメントどおりになったわけだ。
あくまでドライバーが主役のスポーツカー。それこそ新旧NSXが共通して持つホンダイズムに違いない。
さらにはホンダの真骨頂はエンジンにあるが、もちろん十分に強力とはいえ、スペックをやみくもに追求せず、エンジンを主役にしていない。
やろうと思えばスペック主体でNSXをつくれなかったことはないはずのところ、2代目も最終的にV6を踏襲したあたりもNSXらしい。
ちなみに、ちょうど初代NSXが生産終了を迎えた頃に開発の最終段階にあったといわれる「HSV-010」には、当時の時代背景を反映し、F1直系のV10がフロントミッドシップレイアウトされるはずだった。結果的に市販化は見送られたことには、なにかしら因縁めいたものが感じられなくもない。
それぞれ当時としてはベストと考えてのことに違いなく、初代もそうだったが2代目は同価格帯で競合する海外のスーパースポーツ勢に対して、エンジンでは見劣りする感もあるのは否めないものの、最近の世の中の動向からすると、いわゆる「先見の明」になりそうな気もしてきた。
※ ※ ※
なお、レンタカーショップのFun2Driveでは、新旧NSXのほかにもクルマ好きなら誰でも乗りたい魅力的なスポーツカーが豊富に揃えられている。
箱根・仙石原にあるレンタカーショップ「Fun2Drive」。初代NSXをはじめハコスカ・ケンメリなどの旧車から新型スポーツカーまで、さまざまなレンタカーを用意する
単独での試乗はもちろん、今回のような新旧比較をはじめ、人気漫画に登場した車種や、往年の280ps対決など、なんらかテーマに則して乗り比べられるようラインアップが工夫されている。興味のある人は、まずはWEBサイトを覗いてほしい。
HONDA NSX(NA1。1990年当時のスペック)
ホンダ初代「NSX」の走り
・車両価格:800万3000円(消費税含まず。東京)
・全長:4430mm
・全幅:1810mm
・全高:1170mm
・ホイールベース:2530mm
・車両重量:1350kg
・エンジン形式:V型6気筒DOHC
・排気量:2977cc
・駆動方式:MR
・変速機:5速MT
・最高出力:280ps/7300rpm
・最大トルク:30.0kgm/5400rpm
・ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク
・タイヤ前後:前205/50ZR15、後225/50ZR16
・10モード燃費:8.3km/L
HONDA NSX(NC1)
ホンダ2代目新型「NSX」の走り
・車両価格:2420万円
・試乗車オプション込み価格:2763万1000円
・全長:4490mm
・全幅:1940mm
・全高:1215mm
・ホイールベース:2630mm
・車両重量:1800kg
・エンジン形式:V型6気筒DOHC+3モーター
・排気量:3492cc
・駆動方式:4WD
・変速機:9速AT
・エンジン最高出力:507ps/6500-7500rpm
・最大トルク:550Nm/2000-6000rpm
・前モーター最高出力:37ps/4000rpm(1基あたり)
・前モーター最大トルク:73Nm/0-2000rpm(1基あたり)
・後モーター最高出力:48ps/3000rpm
・後モーター最大トルク:148Nm/500-2000rpm(1基あたり)
・ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク
・タイヤ前後:前245/35ZR19 後305/30ZR20
・WLTC燃費:10.6km/L
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