トヨタ次期型「プリウス」出る? クラウンですら変化求める時代に歴史的名車も安泰ではないのか
くるまのニュース / 2020年12月18日 7時30分
2020年11月に各社メディアで「トヨタが、クラウンのセダンタイプを廃止し、次期型はクロスオーバー化を検討」という報道が流れ大きな話題となりました。トヨタを代表する主力モデルということもあり、さまざまな反響を呼びましたが、もうひとつ気になるのが、世界中のエコカーを代表するモデルの「プリウス」です。次期型プリウスは登場するのか、それとも生産終了で姿を変えるのか、今後のプリウスを考えていきます。
■「国宝級名車」のプリウスまでも生産終了に?
自動車業界のトレンドが移りゆくなかで、そうした変化に対応しきれずに消えてゆくモデルも少なくありません。
近年では、トヨタ「クラウン」のような歴史的名車も生産終了報道が流れるほどです。
そのなかで、気になるのは、トヨタを代表するもうひとつの名車「プリウス」の今後の行方ですが、どのような可能性があるのでしょうか。
日本の自動車史に残るクルマをピックアップしたとき、その筆頭格のひとつとなるのはプリウスでしょう。
1997年に「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーとともに登場したプリウスは、2代目から爆発的なヒットを飛ばし、世界に「ハイブリッドカー」という存在を知らしめました。
業界関係者をして「国宝級の名車」と称されるプリウス、2015年に4代目となった現行型は、2代目や3代目ほどの圧倒的な勢いが見られないのも事実です。
それでも、2016年、2017年では2年連続で登録車の首位に、2018年は日産「ノート」にその座を奪われましたが、2018年末にそれまで不評だったフロントフェイスの刷新や安全性を全車で高めたマイナーチェンジにより、2019年登録車販売ランキングでは1位に返り咲いています。
しかし、2020年に入るとそれまで販売台数ランキングでTOP3が定位置だったものの、徐々に順位を落としていきます。
それは、プリウスそのものの魅力が薄れたというよりは、ハイブリッドカーというカテゴリーだけで見ても、非常に多くのモデルが登場したことで、ユーザーが分散したとことが影響しています。
トヨタの公式ホームページ上では、プリウスは「セダン」のカテゴリーに分類されていますが、最近ではSUVが人気となっておりセダンは低調です。
現在のトヨタのラインナップには多くのハイブリッド仕様のSUVモデルがあるため、ユーザーがプリウス以外のモデルに流れてしまうのは必然といえます。
ただ、日本国内以上に深刻なのは、海外市場です。爆発的ヒットとなった2代目プリウスは、2007年の国内に置ける新車販売台数が58.3万台であったのに対し、海外では223万台もの台数を販売。そしてそのうち182.8万台を北米市場が占めています。
182.8万台という数字は、トヨタが日本国内で販売するすべての新車をもしのぐ圧倒的な台数です。
しかし、2019年の北米市場におけるプリウスの販売台数は8万台あまりと、大きく減少していることがわかります。
さらに、2019年の数字には現地で「プリウスC」の名で販売されている「アクア」の台数も含まれているため、実際の販売台数はさらに少ないと考えられます。
巨大市場である中国や欧州は、もともとトヨタやハイブリッドカーのシェアが小さいため、北米の「不振」をカバーすることはできません。
「不振」という表現を用いましたが、トヨタとしてはある程度想定していた状態だったのではないかと考えます。
ここ数年、トヨタ全体の販売台数は堅調であり、プリウスに合わせて伸び悩んでいるわけではなく、「C-HR」や「カムリ」、「カローラ」といったグローバルモデルがけん引しているからです、
これらのモデルには「THS II」というプリウス同様のハイブリッドシステムが採用されており、かなり乱暴な表現ではありますが、プリウスの血を受け継いだ子どものような存在です。
プリウスの本当の功績は、プリウスというハイブリッドカーを発売したことではなく、THS IIというさまざまな車種に展開可能なハイブリッドシステムを開発したことにあります。
そういった意味でも、プリウスが歴史に残る国宝級名車であることは疑いようがありません。ただ、プリウスというモデル自体は、従来のハイブリッド車の代表格という役目を終えつつあるといえるかもしれません。
現在のプリウスが登場したのは2015年のことです。世界初公開の場がラスベガスであったことからも、北米市場での販売を期待していたことがうかがえますが、満足のゆく結果となっていないことは前述のとおりです。順当にいけば、2022年頃にはフルモデルチェンジの時期がやってきます。
現実的にいって、現行型をもってプリウスが生産終了となる可能性は低いでしょう。
そのひとつの流れとしてバッテリーの進化が挙げられます。現在のハイブリッド車はリチウムイオン電池を採用していますが、ハイブリッド車ならび電気自動車、燃料電池車の鍵となる航続距離を伸ばすにはバッテリーの大型化や搭載数という制約により限界があります。
そうしたなかで、各自動車メーカーやバッテリーメーカーが開発を進めているのが全固体電池の製品化(量産化)です。
これまでの電池は、内部に電流を発生させるための電解質という液体が入っていましたが、それを固体化した全固体電池にすることで、EVでの航続距離を劇的に伸ばすことや、充電速度の改善、液漏れなどが無くなることからの安全性の向上が期待されています。
こうした全固体電池の開発は、トヨタを始めとする世界中の自動車関連企業が多額の投資をおこない進めてきました。
現在の見通しでは、2021年から2022年にかけて全固体電池を搭載するモデルが量産車として登場することが見込まれており、トヨタとしてはその世界中が注目する全固体電池搭載車として次期型プリウスを投入すると考えるのが、今後のプリウスの進む道だと考えられます。
なお、トヨタによると全固体電池を搭載する小型EV「コムス」での走行テストは成功しており、2020年代前半の製品化を目指しているとしています。
2020年12月にトヨタは燃料電池車となる2代目「ミライ」を発売しました。燃料電池車としての性能を向上させているのはもちろんのこと、デザイン面はスポーティなものとし、ただのエコカーではない走りの楽しさを持つモデルとして誕生しました。
一方で、世界の消費者がいまのプリウスの延長線上のクルマを求めているとは限りません。
そのため、プリウスという名前は残し、全固体電池を搭載するものの、これまでのイメージをガラリと変えたクルマとして登場する可能性もあり得ます。
かつてプリウスと競合していたホンダ「インサイト」が現行型で上質なセダンへと生まれ変わったように、いまのファストバックスタイルではなく、より北米ウケしやすいセダンらしいセダンになるかもしれません。
あるいは、中国や欧州を意識してクーペSUVスタイルとなるかもしれません。いずれにせよ、何かを変えなければ現状は打破できないでしょう。
また、これまでプリウスが積み上げてきたものについて、トヨタの販売店スタッフは次のように話します。
「プリウスは、全世代のお客さまが知っているクルマといえるほどプリウスブランドは浸透しています。
最近では、性能や価格面などでカローラシリーズにお客さまが流れつつあるのは事実ですが、それでも中高年以上のお客さまは『プリウスだから買う』というほど、プリウスに対する信頼を持たれている人も少なくありません。
これはクラウンなども同じですが、単純に長い歴史を持っているだけでなく、そのクルマ自体への信頼性があるからこそのものだと思います。
今後のプリウスは分かりませんが、トヨタブランドの財産であるプリウスは続けて欲しいです」
※ ※ ※
電動化や自動運転など、激動の自動車業界を生き抜いていくためには、過去を守るよりも未来に向かって進まなければなりません。
時には切り捨てなければならないものもあるかもしれませんが、ユーザーにとって本当にメリットのあるクルマづくりを期待したいものです。
■「歴史的名車」でさえも消えゆく昨今の自動車業界事情
2020年の自動車業界ニュースを振り返ったとき、ほとんどが新型コロナウイルスに大なり小なり関連するものでした。
しかし、それ以外でもっとも印象的だったニュースのひとつに、トヨタ「クラウン」が生産終了するという報道がありました。
各社の報道によると「2022年をもって現行型のセダンタイプとなるクラウンは生産終了し、その後はグローバルで展開されるSUVタイプとしての展開を検討」とされています。
クラウンという名前が残るかどうかは定かではありませんが、少なくとも日本の高級セダンを代表してきたこれまでのクラウンのイメージとはかけ離れたものになると考えられます。
クラウンの生産終了について、現時点ではトヨタから公式なアナウンスはありません。しかし、筆者(瓜生洋明)としては、その可能性は非常に高いと考えています。
たしかに、クラウンは1955年に登場して以来、実に65年にわたって日本の自動車産業をけん引し、その功績をあえて語る必要もないほど、日本国民に愛されてきたと名車のなかの名車です。
クラウンではクロスオーバー化検討の噂も、プリウスがクロスオーバー化されれば「プリウスクロス」になる?
一方、近年ではレクサスなどの影に隠れてしまい、その立ち位置が曖昧になってしまっていました。
さらに、クラウンは基本的に国内専用モデルとして開発されており、過去のモデルを振り返っても海外市場ではほとんど販売されていません。
近年の自動車業界のトレンドである「グローバルモデル」ではないということも、ビジネス面では負担になっていると考えられます。
このように考えると、報道にあるように世界中の市場で販売台数を稼げるSUVスタイルの新型車として生まれ変わるというのは、理にかなっているといえます。
思えば、トヨタは「マークX」や「エスティマ」、「RAV4」、「ハリアー」、そして数々のスポーツカーなど、一世を風靡したモデルであっても時代や状況の変化に合わせて大胆に整理や変化することで競争力を確保してきました。
また、「86」や「スープラ」は結果的に復活しましたが、いわゆる従来のフルモデルチェンジとは異なる形で登場しました。
馴染み深いモデルが消えてしまうのは残念ではありますが、こうした徹底的な姿勢こそがトヨタの強みであることは間違いありません。
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