「見た目よりもスゴいんです!」 羊の皮を被った狼的な車5選
くるまのニュース / 2021年1月2日 6時10分
地味な外見ながら速いクルマを「羊の皮を被った狼」と表現することがあります。そのなかでも、まったく速そうに見えないながら、高出力エンジンを搭載したクルマを紹介します。
■地味ながら速い! 「羊の皮を被った狼」なクルマたち
各メーカーの新車には、さまざまなグレードが設定されますが、売れ筋のグレードのほかに、ハイパワーエンジンを搭載した少し個性的なモデルが設定されている場合があります。
今回はベースモデルがレーシーなデザインではないのに、ハイパワーエンジンが搭載されている“羊の皮を被った狼”的なクルマを5台ご紹介します。
●三菱「エアトレック ターボR」
「エアトレック」は、それまでの「チャレンジャー」の実質的な後継モデルとして2001年6月に登場したクロスオーバーSUVです。
チャレンジャーは、クロスカントリーRV「パジェロ」譲りのラダーフレームが採用され、クロスカントリーRVとしての要素が強いモデルでしたが、エアトレックはランサーをベースとしており、乗用車ライクな乗り味のモデルでした。
いまでは、背の高いモデル対応の駐車場が増えため、立体駐車場のサイズを気にしてクルマの車高を設定するモデルは少ないですが、エアトレックは1550mmに抑えられシティ派のクロスオーバーSUVとして位置づけられています。
エアトレックに採用されたなめらかな曲線を採用したスタイリッシュなスタイリングは、都会的で魅力的でしたが、決して速さを感じさせるものではありませんでした。
しかし、2002年6月に投入された新グレードの「ターボR」は、ハイパフォーマンスセダンのランサーエボリューションシリーズと同様の2リッター直列4気筒ターボエンジンをベースとした240馬力のエンジンが搭載され、一気に走りの性能がアップしました。
ターボRのエンジンは、ランサーエボリューションVIIのATモデルである「ランサーエボリューションGT-A」が272馬力と比べると、エアトレックに搭載するにあたって、多少デチューンされているものの、スタイリッシュなシティ派のクロスオーバーSUVにハイパワーエンジンを搭載している点は、“羊の皮を被った狼”でした。
なお、エアトレックは1代限りで終わり、その後、国内では現在の「アウトランダー」が後継車となります。
●トヨタ「ブレイドマスター」
トヨタ「ブレイド」は、姉妹車「オーリス」の2か月後となる2006年12月に登場したコンパクトハッチバックモデルです。
オーリスは比較的オーソドックスなコンパクトハッチバックでしたが、ブレイドは“大人しくない大人に、ショート・プレミアム”というキャッチフレーズで登場。コンパクトハッチバックとしては高級なモデルとして位置づけられました。
エンジンは、オーリスが1.5リッターと1.8リッター直列4気筒のラインナップであるのに対し、2.4リッター直列4気筒を搭載。
2.5リッターや3.5リッターエンジンを搭載する上級セダンの「マークX」に迫る大排気量は、オヤジ世代のダウンサイジングの受け皿としても注目のモデルでした。
2007年8月には、3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載する「ブレイドマスター」が登場。なんとこのエンジンは280馬力を発生し、軽量コンパクトなボディということもあり、スポーツカー並みの加速力を体感できるモデルでした。
車両重量を馬力で割ったパワーウエイトレシオは、約5.2kg/psとなっており、スポーツカーのトヨタ「86」が約5.8kg/psであることを考えるとその走りは俊敏なものでした。
しかし、見た目はスポーツカーのようなウイングなども装着されているわけではなかったので、まさに“羊の皮を被った狼”と呼べるモデルでした。
●日産「エクストレイルGT」
「エクストレイル」は2000年11月に登場した新しいコンセプトのSUVで、「テラノ」や「ミストラル」のようにラダーフレームを採用したクロスカントリーSUVとは異なるモデルとして登場しました。
悪路の走破性よりもスキーやスノーボードなどのウインタースポーツやBMXなどXスポーツを楽しむユーザーに照準が置かれたコンセプトが受け、若者も含め人気のモデルとなりました。
そして、発売3か月後の2001年2月には、2リッター直列4気筒DOHCターボを搭載した「GT」が発売されました。
VVL(可変バルブタイミングリフト機構)も採用したこのターボエンジンは、最高出力280馬力を発生し、自然吸気エンジンのみラインナップしていたトヨタ「RAV4」とは一線を画するハイパワーモデルでした。
Xスポーツを楽しむユーザーが多人数で荷物を満載して山道を走破するには充分すぎるともいえるハイパワーを搭載したエクストレイルGTも、“羊の皮を被った狼”といえるモデルでしょう。
■マツダが作った俊足4WDセダンとは?
●マツダ「マツダスピード アテンザ」
2002年5月に発売された「アテンザ」は、マツダのミドルセダン「カペラ」、「クロノス」の後継モデルとして登場したミドルセダンです。
ボディ形状は、セダンのほか、5ドアハッチバックのスポーツ、ステーションワゴンがラインナップされ、クロノスで失った人気を復活させるモデルとして登場しました。
マツダ「マツダスピードアテンザ」
「マツダスピードアテンザ」は、そのラインナップのなかで、セダンをベースとして最高出力272馬力を発生させる2.3リッター直列4気筒直噴ターボエンジンを搭載したハイパワー4WDモデルです。
スタイリングは、専用のバンパーやグリル、リヤスポイラーなども採用されていましたが、比較的おとなしいテイストでまさに“羊”。反対にエンジンは“狼”といったモデルとなっていました。
MTのみの設定で、クルマを運転することを楽しめるモデルとしてラインナップされていましたが、走りを極める走り屋のニーズが、スバルでは「レガシィ」よりも「インプレッサWRX」、三菱では「ギャラン」よりも「ランサーエボリューションシリーズ」といったように、よりコンパクトなセダンモデルへシフトしており、残念ながらあまり人気が出なかったようです。
●三菱「ギャランスポーツ」
1994年9月に発売された「ギャランスポーツ」は、ミドルセダンのギャランをベースとした5ドアハッチバックモデルです。欧州では5ドアハッチバックの人気が高く、ギャランにも5ドアモデルがラインナップされていました。
ギャランスポーツは、5ドアハッチバックをベースにRVテイストを感じさせるカンガルーバンパー形状を取り入れたフロントバンパーやルーフレールなどを付加し、クロスオーバーSUVとして仕上げられたモデルです。
当時ギャランは、2リッター直列4気筒DOHCターボを搭載したハイパワーモデルのVR-4が、日産「ブルーバードSSSアテーサ」などとともに、人気を博していました。
そのため、ギャランスポーツもNAモデルに加え、2.0リッターV型6気筒ターボを採用し、240馬力(MT)もしくは210馬力(AT)を発生する「スポーツGT」モデルもラインナップされ、“GTRV”という新しいキャッチフレーズで登場しました。
当時はレガシィツーリングワゴンのGTなどが人気だったため、それに対抗するモデルとして注目されましたが、“羊の皮を被った狼”といえるモデルであったものの、残念ながら、販売面は羊のままでいたようです。
※ ※ ※
今回、羊の皮を被った狼として紹介したクルマはあまりヒットせず、販売面では静かに終わってしまったモデルが多かったです。狼なら狼らしい見た目のほうがユーザーにはわかりやすく、ユーザーも狼らしいデザインを求めているからかもしれません。
羊の皮を被った狼と呼ばれるモデルは市場での注目度が低く、中古では比較的リーズナブルに購入することができることが多いです。
そこであえて“羊の皮を被った狼”なクルマに注目して、走りが力強くてもお得な中古車選びをしてみるのもよいでしょう。
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