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ソニーが車を本気で開発? 「ビジョンS」テストの目的とは 市販化は「ファブレス化」が鍵を握る?

くるまのニュース / 2021年1月24日 18時10分

ソニーは試作車「ビジョンS」の公道テスト走行を欧州で開始したと、家電・ITの世界最大級見本市「CES2021」で発表しました。自動車メーカーではないソニーがクルマを本気で開発する狙いはいったいなんでしょうか。また、量産化の可能性はあるのでしょうか。

■ソニーのクルマが量産される可能性はある?

 ソニーが開発したドローン「Airpeak」で撮影したテストコース上空からの映像。そこに、欧州オーストリアのナンバープレートを付けたソニーのクルマ「VISION-S」(ビジョンS)の姿が見えます。

 その後、ビジョンSは工業団地の敷地内を通り、雪深い山間部のワインディング路へと進んでいくというストーリーが展開されます。

 これは、ソニーが米ラスベガスで開催された家電・ITの世界最大級見本市「CES2021」(2021年1月)のオンライン会見で紹介した、ビジョンSの実車が公道を走行する模様です。CG映像ではなく、リアルワールドでの出来事です。

 ビジョンSは、1年前に開催されたCES2020で世界初公開され、その後に日本でも報道陣向けに実車が公開されましたが、公道を走行する様子が確認できたのは、今回の映像が初めてとなります。

 ソニーとしては、自動運転レベル2による高度な運転支援システムに不可欠なイメージセンサーを量産しており、その技術を活用したEVの実験車両としてビジョンSを位置付けてきました。

 ただ、直近では米アップルが韓国ヒュンダイに対して自動運転EVの生産を依頼することが決まったという一部報道があり、またグーグルのグーグルカーによるロボットタクシー事業の本格始動に向けた準備段階にあるなど、IT大手の自動車産業への参入が大きな話題となっています。

 そうしたなかで、ソニーのクルマに量産の可能性はあるのか、気になるところです。

 まずはビジョンSに対するソニーの狙いについて、CESでのプレゼンテーション、決算報告書、また投資家向けの事業計画書など、ソニーがこれまで公開している内容をまとめてみます。第一の狙いは、イメージセンサー事業の「見える化」です。

 2020年10月時点での、ソニーのセグメント別の2020年度売上見通しは次の通りです。

・ゲーム&ネットワークサービス:2兆6000億円
・音楽:8500億円
・映画:7600億円
・エレクトロニクス・プロダクト&ソリューション:1兆8700億円
・イメージング&センシング・ソリューション:9600億円
・金融:1兆4600億円

 売上高は連結で8兆5000億円となります。

 このうちイメージング&センシング・ソリューションでは、モバイル機器やデジタルカメラ、さらに自動車の各種センサー向けなどが含まれます。

 車載センサーについては、半導体メーカーなどによる競争が激しくなっています。

 半導体大手の米オン・セミコンダクターがスバルのアイサイトX試乗会の際に示した資料では、車載イメージセンサーではソニーのシェアは3.0%、センシングカメラでは5.1%、そしてリアビューや全周囲カメラでは2.2%にとどまっており、まだまだ伸びしろがあります。

 ただし、ゲームや家電ではソニーは有名でも自動車向けでは、最終組立をおこなうOEM(自動車メーカー)、デンソーやボッシュなどの大手部品メーカー(ティア1)に対して、ソニーの立場はティア1に部品を提供するティア2という裏方としての存在であり、一般的な認知度は高くありません。

 そこで、ソニーの得意な音響・映像のエンターテインメント機器も含めて、ソニーのクルマというショーケースとしたのがビジョンSなのです。

■量産化の鍵を握るのは「ファブレス化」?

 もうひとつの狙いは、ESG投資への対応です。経済産業省によりますと、ESG投資とは、「従来の財務情報だけではなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資」を指します。

 ソニーとしては、「センシングによる社会価値創出」としてセンシングカメラによる運転での安全への貢献、CO2排出レベル低減、また電力のスマートグリッド化などを挙げており、さらにAI(人工知能)技術を活用した環境技術事業にも積極的に取り組んでいます。

 こうした企業としての取り組みを見える化する上でも、ビジョンSは大きな存在だといえます。

 このようにソニーの事業実態を見てくると、ビジョンSは量産を考慮しないコンセプトカーである可能性が高いといえます。

ソニーが公道試乗を開始した試作車「VISION-S」(画像:ソニー公式ウェブサイトより)ソニーが公道試乗を開始した試作車「VISION-S」(画像:ソニー公式ウェブサイトより)

 一方で、ソニーがビジョンS製造のパートナーとしている、オーストリアのマグナ・シュシュタイアは、カナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルの子会社であり、マグナグループ全体として、フォード向けなどのEV委託生産で実績があります。

 またEV以外では、オーストリア国内のグラーツ工場でトヨタ「スープラ」とBMW「Z4」などを生産していることでも知られています。

 また、マグナインターナショナルはCES2021で、EV生産について韓国LG化学との業務連携を強化し、EV生産委託業務の拡大を示唆しています。

 さらに、ビジョンSの自動運転や高度運転支援システムについては、ソニーはハンガリーのAImotiveと連携しており、ソニーの自動運転EVを量産する基本的な体制はすでに整っているともいえます。

 一部報道であるように、アップルがiPhoneのように、自社で商品企画と設計のみをおこない生産を外注するファブレス企業としての特性を生かして自動運転EV量産を検討しているとすれば、ソニーとしてもアップルのようなファブレス企業の体系でソニーブランドとしての自動運転EVを量産するというシナリオが想像できます。

 果たしてソニーのクルマは量産されるのか、今後の動向を注視していきたいと思います。

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