お金のかけ方に違いはあるけど、どれもユニーク! 一風変わった派生車5選
くるまのニュース / 2021年1月29日 6時10分
新型車の開発には莫大な費用がかかりますから、メーカーは常に合理的な開発手法を模索しています。その手法のひとつに「派生車」というクルマがあり、既存のクルマをベースに異なる外観を与えることで、開発費を抑えつつもラインナップの拡充を図るというものです。一方で、完全に別車種といえるほど変貌したモデルや、ユニークな外観となった派生車も存在。そこで、一風変わった派生車を5車種ピックアップして紹介します。
■ユニークな派生車を振り返る
1台の新型車を開発するには、膨大な時間と労力、そして莫大な費用がかかります。そのため、各自動車メーカーは同じシャシを使って複数の車種を開発したり、既存の車種をベースに外観を変える派生車をつくることで、ラインナップの拡充をしつつコスト削減をするのが一般的です。
とくに派生車はベースとなるデザインが確立していることから、比較的簡単に開発できるとあって、これまでも数多くのモデルが誕生しました。
一方で、車名は既存のモデルながら完全に別の車種といえるほど変貌したモデルや、ユニークな発想でつくられた派生車も存在。
そこで、一風変わった派生車を5車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「ファミリア アスティナ」
斬新かつスタイリッシュなフォルムが特徴の「ファミリア アスティナ」
現在、マツダのラインナップで、Cセグメントを担っているモデルが「マツダ3」です。その歴史を遡ると先代の「アクセラ」、そして2004年まで生産されていた「ファミリア」へと辿りつきます。
ファミリアはマツダ初の小型乗用車として1963年に誕生。それから代を重ねると同社の主力車種になり、ヒット作にも恵まれました。
そして、1989年に7代目が発売されると、ボディタイプは3ドアハッチバックと4ドアセダンをラインナップし、6代目まであった5ドアハッチバックは設定されませんでしたが、7代目ファミリア発売から少し遅れて、クーペスタイルの5ドアハッチバック、「ファミリア アスティナ」が登場します。
ファミリア アスティナは主要なコンポーネンツをファミリアと共有しながら、外観は完全に別物で、最大の特徴はリトラクタブルヘッドライトを採用したクサビ型のフロントノーズです。
当時はリトラクタブルヘッドライト=スポーツカーというイメージが色濃く、ファミリア アスティナもスポーティ路線を狙っていました。
ちなみファミリア アスティナは、当時展開していたユーノスブランドでも「ユーノス100」として販売されていました。
その後、1994年に8代目ファミリアのデビューと同時に、ファミリア アスティナは一代限りで消滅。実質的な後継車は「ランティス」です。
●三菱「ギャランスポーツ」
使い勝手が良く走りも優れていたものの売れなかった「ギャランスポーツ」
1969年に初代が誕生し、2005年まで販売されていた三菱「ギャラン」は、同社を代表するセダンです。発売当初は2ドアクーペやライトバンも設定されていましたが、代を重ねるとボディタイプは整理され、セダンに一本化されました。
そして、1987年に登場した6代目では高性能モデルの「VR-4」がラインナップされ、スポーツセダンという一面が定着。1992年発売の7代目もスポーツ路線を受け継いでいました。
この7代目で1994年に追加ラインナップされたのが、ギャラン史上でももっとも異色なモデルである「ギャランスポーツ」です。
ギャランスポーツは欧州仕様の5ドアハッチバック車をベースに、フロントに小ぶりなバンパーガードとルーフレールを装着した、現在のクロスオーバーSUVにあたるモデルで、当時のRVブームという背景から誕生。
三菱はギャランスポーツを「GT」と「RV」を融合した「GTRV」という新ジャンルのクルマに位置づけており、実際にトップグレードのエンジンは、最高出力240馬力(5速MT)を誇る2リッターV型6気筒DOHCツインターボを搭載してフルタイム4WDシステムを組み合わせるなど、まさにGTにふさわしい走行性能を持っていました。
ステーションワゴンに匹敵する使い勝手の良さがある高性能な4WD車という、オールマイティに使えるクルマでしたが、1996年に8代目ギャランの登場で消滅。
ちなみ、6代目でも5ドアハッチバックの姉妹車「エテルナ」がありましたが、こちらも一代限りでセダンとなるなど、当時は5ドアハッチバック不遇の時代でした。
●ホンダ「プレリュード inx」
落ち着いた雰囲気でユーザー層の拡大を狙った「プレリュード inx」
ホンダは1972年に新世代の大衆車として初代「シビック」を発売し、1976年には上位モデルの初代「アコード」が登場して、ラインナップを拡充します。
そして、1978年には次の一手としてスペシャルティカーの初代「プレリュード」がデビュー。1982年発売の2代目ではリトラクタブルヘッドライトを採用して、より洗練されたスタイリングに変貌し、高性能なエンジンを搭載したことで若者を中心に人気となり、「デートカー」としてヒットを記録。
1987年に登場した3代目は2代目からキープコンセプトとしながらも、より低いボンネットラインのシャープなデザインとなり、4WS(4輪操舵)の搭載や4輪ダブルウイッシュボーン・サスペンションの採用によって走りも大きく進化し、先代以上のヒット作になりました。
この3代目で1989年に追加された派生車が、「プレリュード inx(インクス)」です。
プレリュードはデートカーとしてポジションを不動のものにしており、若い世代から高い支持を得ていましたが、ホンダはさらに幅広いユーザーの獲得のためプレリュード inxを発売。
フロントフェイスはプレリュードのリトラクタブルヘッドライトに対して、固定式の薄型異型ヘッドライトに変更され、それに合わせてフロントグリルの追加や、フロントバンパー、ボンネット、フロントフェンダーの造形も一新しています。
また、内装ではシックな印象のモケット表皮のシートや、全グレードが本革巻ステアリングを標準装備するなど、落ち着いた雰囲気と高級感を演出。
なお、エンジンなどメカニズムは基本的にはプレリュードと同一です。
こうして、より高い年齢層をターゲットとしたプレリュード inxでしたが、販売的には標準モデルほどはヒットせず、この代限りで消滅してしまいました。
■かなりお金がかかった派生車と、安くつくれた派生車。どちらもユニーク!?
●トヨタ「bB オープンデッキ」
派生車というものの大規模な変更がおこなわれた「bB オープンデッキ」
トヨタは大ヒットした初代「ヴィッツ」のコンポーネントを流用することで、複数の車種を展開しましたが、そのなかの1台が若い世代をターゲットとした小型トールワゴンの初代「bB」です。
2000年に発売されたbBはアメリカのカスタムカーをイメージさせるボクシーな外観と、内装もヴィッツとは大きく異なるポップな印象のデザインで、トールワゴンとしての使い勝手の良さも相まってbBはヒットします。
そして、2001年には大胆に手が加えられた異色の派生車、「bB オープンデッキ」が発売されました。
bB オープンデッキはその名のとおり、荷室がピックアップトラックと同様な荷台となっており、キャビンの荷室部分の上半分を切り取るかたちで製作。
なお、荷台を持っていますが商用車ではなくの5ナンバー登録の乗用車です。
荷台は決して大きくないため、キャビンと荷台を隔てるドアを開けると室内と荷台がつながり、長尺な荷物も収納できる工夫が施されています。
また、bBが一般的な4ドアだったのに対し、bB オープンデッキでは右側がワンドア、左側はセンターピラーレスの観音開きドアを採用するなど、乗降性も考慮されていました。
bB オープンデッキはフロント部分以外のボディパネルがほぼすべて新作されたことで、派生車ながらかなりのコストがかかっていたと思われますが、販売は低迷し、登場からわずか2年後の2003年に生産を終了。
現在は中古車の物件数も少なく、滅多に走っている姿を拝めないかなりのレア車です。
●スズキ「ジムニー ライトコマーシャル・ビークル」
日本でも需要がありそうな2シーターの「ジムニー ライトコマーシャル・ビークル」
現行モデルのスズキ「ジムニー」は開発当初からグローバルでの展開を想定しており、日本における「ジムニー シエラ」は左ハンドルも設定され、すでに欧州や中南米、中東、アフリカなどで発売されています。
ジムニーは唯一無二の超小型クロスカントリー4WD車として海外でも注目を集めていますが、欧州では2020年9月に、日本では販売されていない派生車が登場。それが「ジムニー ライトコマーシャル・ビークル」です。
その名のとおり商用車として開発されたモデルで、室内は2シーター化され、後席部分はすべて荷室に変更しています。
また、前席の後ろには格子状のパーテーションを設置し、荷室は863リッターの大容量で、フラットな床面を採用するなど、ライトバンとしての実用性を向上。
外観はジムニーシエラの廉価グレード「JL」に準じており、エンジンや駆動系も基本的に変わっておらず、先進安全技術も標準装備されています。
日本でもひとりかふたりで行くキャンプに最適と思われ、軽自動車のジムニーならば2シーターモデルの需要がありそうです。
※ ※ ※
近年は派生車というよりも、外観の意匠を少し変更するレベルのクルマが主流となっています。
たとえば、SUVのイメージを取り入れたモデルは、前後バンパーやフェンダーまわりを変え、最低地上高を少し上げるなどドレスアップに近く、一方で、大規模な変更がおこなわれる際は別車種として展開されるケースが増えています。
前述のbB オープンデッキのように、ボディの改修に相当なお金をかけるなら、別車種として販売した方が合理的だということでしょう。
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