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補助金や税制面で優遇も日本はなぜ「次世代車」人気ない? EVや燃料電池車が普及しない理由とは

くるまのニュース / 2021年2月9日 9時10分

菅総理大臣は2021年1月の通常国会・施政方針演説で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と表明。前後して、ハイブリッド車だけでなくEV、PHEV、FCVといった次世代車が国内外で多数発売されています。しかし、こうした次世代車は補助金や税制面で優遇を受けているにも関わらず、国内新車市場ではまだシェアが低いままです。いったいなぜなのでしょうか。

■普及が進まない理由はやはり価格面か?

 近年、環境に配慮したさまざまな次世代車が登場していますが、こうした次世代車は補助金や税制面で大きな優遇を受けています。しかし直近の販売状況を見ると、その市場規模はまだまだ小さいことが分かります。いったいなぜなのでしょうか。

 直近で登場した、あるいはまもなく登場する次世代車の例を挙げると、ホンダ初の量産型EV「ホンダe」や、日産が2020年に発表し2021年発売予定としている「アリア」があります。

 またトヨタは2代目「MIRAI」(FCV)と「RAV4 PHV」(PHEV)、レクサス初EVの「UX300e」。三菱は「エクリプスクロスPHEV」。年が明けてマツダが「MX-30 EVモデル」など、このところ日本車では本格的な電動車が目白押しです。

 輸入車でも、テスラを筆頭に、ジャーマンスリー(メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲングループ)、ボルボ、そしてグループPSAとFCA(ともに現ステランティス)などから、EVやPHEVが続々と日本上陸を果たしています。

 こうして次世代車のモデル数は増加傾向なのですが、直近2021年1月の販売実績を見てみると、国内乗用車販売総数(10万9166台)のうち、パワートレイン別のシェアは、ガソリン車の52.4%、ハイブリッド車の40.2%、ディーゼル車の6%に対して、PHEVは0.7%、EVは0.5%、そしてFCVは0.2%(日本自動車販売協力連合会調べ)。ハイブリッド車よりさらに環境に優しいPHEV、EV、FCVといった本格的な電動車(次世代車)は、新車市場においてはまだまだ少数派なのです。

 なぜ、本格的な電動車の普及スピードが遅いのでしょうか?

 EVについては、以前から3つの課題が指摘されてきました。

 それは、【1】電池価格が高く車両全体の価格が高いこと、【2】充電インフラが少ないこと、そして【3】満充電での航続距離が短いこと、という3点です。

 車両価格については、構成部品のなかでコストが高い電池について、中国や欧州で事実上のCO2総量規制によって生産台数が増えていることで、電池の量産効果、また電池内部構造や製造工程での工夫などにより、EV車両価格が下がる方向が少しづつ見えてきたように思えます。

 国や地方自治体からの購入補助金や税制優遇なども継続されています。

 次に充電インフラについては、直流急速充電器のCHAdeMOが7700か所、公の場での100V/200V交流充電器が1万4004か所、そしてテスラが191か所と全国各地で増えてきました(2021年2月4日時点、充電情報サイトGoGoEVより)。

 そして航続距離は、テスラのように搭載電池容量が大きいモデルではガソリン車と同等か、それ以上を確保しているモデルもあります。

 また、PHEV車の充電は、自宅や会社でおこなうことが多いというメーカー側の想定ですし、航続距離はガソリン車を凌ぐほどです。ネックとなるのは、ガソリン車やハイブリッド車に対する価格差があることでしょう。

 FCVについては、航続距離は長く、水素の充填時間はガソリン車並みで短いのですが、水素ステーションの数がまだ少なく、価格も2代目MIRAIでかなり下がった印象はありますがまだまだ高級車の域を出ません。

 今後のトヨタを中心とした多モデル化による市場拡大を期待したいところです。

■本格的電動車の普及に向けて必要な意識改革とは

 ではもう一歩ユーザー寄りの視点で、PHEV、EV、FCVといった次世代車の普及がなぜ遅いのかを考えてみましょう。

 ユーザーが電動車を選ぶ大きな理由は、やはり燃費の良さでしょう。

 たとえばRAV4では、2リッターガソリン車(2WD)がWLTCモードで15.8km/Lなのに対して、2.5リッターハイブリッド車(2WD)が21.4km/Lと、エンジン排気量が上がっても燃費は走行距離で1.35倍も改善する一方で、価格は1.22倍の334万3000円(消費税込、以下同様)となります。

 価格差はあっても下取り価格の優位性なども考慮し、ユーザーの間では「ハイブリッド車はもはや常識」という価値観が浸透してきました。それが、前述のような国内ハイブリッド車シェア4割という数字として現われています。

 使い勝手についてもガソリン車と基本的に何も変わらないところがハイブリッド車の魅力です。

 それが一歩進んで、外部から充電する(プラグイン)する行為が増えると、確かにEVモードでの走行距離は増えるものの、RAV4 PHVはエントリーモデルでも469万円となり、ハイブリッドの1.4倍とかなり高価です。

 後輪もモーター駆動となる四輪駆動車であることも魅力で、現在(2021年2月上旬)は「新規搭載のバッテリーの生産能力を大幅に上回る注文があり注文の一時停止」(トヨタ)が続くほどの人気ですが、例え購入補助金や税制優遇があっても、庶民の車としてはかなり高価なプレミアムカーというイメージが先行します。

 RAV4に限らず、多くのユーザーはまだPHEVまで手を伸ばさず「ハイブリッド車で満足するお客様が多い」(複数ブランドのディーラー関係者)といいます。

 このプレミアム性という観点では、輸入車の場合「実際はプラグイン機能をほとんど使わず、あくまでも最新型の最上級グレードという位置付けで購入するお客様が多い」(欧州系メーカー関係者)という声もあります。

 つまり、庶民の日常生活においては、高価格なPHEVに対する必要性や必然性がまだ弱いのだと思います。

 こうしたなかで注目されるのが、PHEVをキャンプや災害時の電源として活用する動きです。エクリプスクロスPHEVのテレビCMでも、その冒頭に100V/1500W外部給電を強調しています。

トヨタ「MIRAI」トヨタ「MIRAI」

 また、トヨタはプリウスPHVやMIRAI、日産は「リーフ」を活用して、災害時に各地ディーラーが連携して給電支援をおこなう活動を全国に広げています。

 もしもの時の非常用電源として、本格的な電動車に対する庶民の必要性が今後、さらに高まる可能性があると感じます。

 次に、ディーラー目線でEVを考えてみます。

 リーフや三菱「i-MiEV」など、ユーザー側がEVという商品に対する認識をしっかり持って、自分の生活スタイルをEVに合わせることができる、いわゆるコアユーザーに対しては、ディーラーとしても対応しやすいというのが実情です。

 一方で、こうしたコア層からさらにユーザーの輪を広げようとすると、ユーザーだけではなくディーラー側も新たなる対応が求められます。

 そうしたなかで、マツダがMX-30 EVモデルの日本導入を機に新しい営業体制を敷きます。

 マツダの国内営業担当執行役員の田中浩憲氏はオンラインでのメディア向け商品発表会で、ユーザーのEVに対する現状について、「充電に不安がある」「バッテリの性能的に、まだまだ不安」「まだ車種数、魅力的な選択肢が少ない」「値段はまだ高いんじゃないの?」、そして「今、EVを買ってもいいのかな…?」といったユーザー目線での言葉を引用しました。

 こうした不安を解消するため、マツダは1DAYモニター試乗、購入前購入後のEV専用ダイヤル(デスク)、そして車載のマツダコネクテッドサービスを活用したバッテリーの優しい使い方のアドバイス「バッテリーケアアドバイス」(2021年秋導入予定)を実施します。

 さらに、購入3年後の残存価値を55%とする残価設定ローン・マツダスカイプランを用意したと、田中氏はマツダのEV参入に対する意気込みを強調しました。

 メーカーが用意した、このような各種販売ツールをディーラーがいかに使いこなすのか。EVを含めた本格的な電動車をさらに普及させるには、ユーザーとの直接的な接点であるディーラーの、本格的な電動車に対する意識改革が求められます。

 菅総理は2021年1月、通常国会・施政方針演説で「2035年電動車100%」を明言しました。日本市場の本格的な電動化は今度どのように進むのか、各地の現場の声を引き続き拾っていきたいと思います。

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