人気低迷のワゴンが再び高い評価? オーナーが語る「あえてワゴンに乗る理由」
くるまのニュース / 2021年2月14日 18時10分
SUVやミニバンが売れ筋となり、数を減らしているのがステーションワゴンです。しかし最近では、走行性能と積載能力を兼ね備えていることで、再評価されています。そこでステーションワゴンのオーナーにワゴンを選んだ理由を聞いてみました。
■高い走行性能と積載能力でワゴンの価値が見直されている?
日本自動車販売協会と全国軽自動車協会連合会が毎月公表している販売台数ランキングでは、依然として上位をSUVやミニバン、コンパクトカーなどが占めています。
その一方で、かつて1990年代から2000年代初頭に全盛を誇ったステーションワゴンは車種自体が減少しており、とくに国産車は数えるほどしかなくなってしまいました。
最新の国産車販売台数ランキング(2021年1月)を見てみると、トップはトヨタ「ヤリス」で1万8516台。2位以下は「ルーミー」「アルファード」「ハリアー」「カローラ」とトヨタ車が続き、日産「ノート」が6位にランクインしました。
それ以降もSUVやコンパクトカー、ミニバンなどが上位30位まで並ぶなか、ステーションワゴン専用車として唯一14位にランクインしているのがスバル「レヴォーグ」です。
2020年10月に2代目へとフルモデルチェンジした新型レヴォーグは、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど高く評価されており、現在のステーションワゴンが置かれた状況を考えるとかなり健闘しているといえます。
もっとも現在の国産車のラインナップではステーションワゴン自体が少なく、レヴォーグのほかには、トヨタは「カローラツーリング」など、ホンダは「シャトル」、マツダは「マツダ6ワゴン」といった程度。
しかし、輸入車に目をうつすと、メルセデス・ベンツにはコンパクトな「CLA」にも「シューティングブレーク」なるワゴンがあり、「Cクラス」「Eクラス」もワゴンをラインナップ。
フォルクスワーゲンには「ゴルフ」と「パサート」、アウディは「A4」「A6」、BMWは「3シリーズ」「5シリーズ」、ボルボには「V60」「V90」といった具合に、ワゴンが現在もラインナップされており、高いステータスと人気を保っていることがわかります。
そんな現在、ワゴンが持つ高い走行性能と積載性の良さが再評価され、とくに中古車市場ではジワジワと人気が復活してきているようです。
都内で輸入車・国産車を問わず販売している中古車店のオーナーが、ワゴン人気の傾向を教えてくれました。
「とくに中古の輸入車を選ぶ人は、同じ車種でもセダンよりワゴンのほうが問い合わせも多く売れています。昔から輸入ワゴンが持つ雰囲気や高い実用性、ステータスは健在だと思います。
現在の国産車は、それほどワゴンの車種が多くないため中古車の数も多くはありませんが、程度のいい中古車はすぐに売れてしまいます。しかもSUVから乗り換える人が多いです」
いま大人気のSUVからワゴンに乗り換える理由は何なのでしょうか。
「考えられるのは、SUVより高い積載性です。基本的に舗装路しか走らないユーザーにとっては、悪路走破性より広いラゲッジスペースのほうが実用性は高いですから。また、重心も低くなり走りも楽しみやすいと感じる人が多いのでしょう」(中古車店オーナー)
さらに、緊急事態宣言による自粛生活において、いわゆる「巣ごもり生活」もワゴン人気を後押ししている側面があるといいます。
「自宅で過ごす時間が長くなったことから、食材や日用品をまとめ買いする人が増加し、より多くの積載量を求めてワゴンに乗り換えたいと相談されるケースが増えています。SUVも人気は高いのですが、セダン感覚で乗れるワゴンは違和感が少なく感じるようです。
また、レヴォーグなども含めて、ワゴンのほうがスポーティなイメージが強いのも人気の理由のひとつです。
ミニバンの快適性や利便性とスポーツカーやセダンの運転する楽しさのどちらを取るかを考えたとき、落とし所としてワゴンを検討する人が増えていると思います」(中古車店オーナー)
■あえてワゴンを選んだ理由とは? オーナーに直撃!
国産車ではめっきり車種が少なくなり、ワゴン不遇の時代となっていますが、あえてワゴンを選ぶ理由にはどのようなことがあるのでしょうか。
ワゴンのオーナーに聞いてみると、そこには仕事とライフスタイルでの利便性、また駐車場問題が大きく関わっているようです。
まずは、ホンダ「シャトル」に乗っている男性(50代)に聞いてみました。
コンパクトながら積載性に優れたホンダ「シャトル」
釣り具メーカーで商品開発を担当していることから、週末はテストを兼ねて釣りに出かける機会が多く、長距離移動もひんぱんで、さまざまな釣具を積み込むためワゴンを選択したといいます。
「自分にとっては、排気量やパワーより、たくさんの荷物が積めることと維持がしやすい経済性があることを優先しました。仕事柄クルマでの長距離移動が多いので、安全運転支援システムが装備されていることもポイントでした。
また自宅の駐車場が立体式なので、車高が高過ぎないことも重要で、こういった条件をすべてクリアしていたのがシャトルでした」
荷物や人を大量に運ぶならミニバンのほうが有利なような気もしますが、立体式駐車場という住環境問題がクルマ選びに大きく影響していたそうです。
「実際、長い釣竿も問題なく車内に積載でき、釣りのポイントによっては低い高架下などを通ることがあっても、シャトルは車高が1545mmと低く設定されていることからルーフをぶつける心配も少ないです。
私の場合、雪道や山岳路の悪路走破性より、高速道路でいかに楽に走れて荷物が積めるかを重視しており、さらにハイブリッドのおかげで燃費も良好ですし、まったく不満を感じていません」
スバル「レガシィツーリングワゴン(5代目)」に乗っている会社員の男性(40代)は、通勤や趣味のスノーボードでクルマを使っているといいます。
「以前はラージサイズのミニバンに乗っていましたが、子供たちが大きくなってきてスライドドアのクルマが必要なくなったことと、スノーボードをするので荷室が広いステーションワゴンに乗り換えました。
レガシィツーリングワゴンは四駆なので、雪道でも安定して走ることができます。以前乗っていたミニバンも二駆と四駆を切り替えられたのですが、車高が高くて車両重量も重いことから、ワインディングが苦手でした。
その点、レガシィツーリングワゴンは重心も低く、しかも私が所有するモデルはターボエンジンを搭載しているので、上り坂でも力不足を感じることなくパワフルに走行できるのが魅力です。
ミニバンは室内高も高いので、その分高さのある荷物を積むことができますが、ステーションワゴンでもスノーボード3枚程度ならラゲッジスペースに積み込めます。
レガシィは安全装備も充実しているので、スノーボードの行き帰りの高速道路で渋滞にはまってもあまりストレスを感じることがなく、ずいぶんと楽になりました」
ミニバンからステーションワゴンに乗り換えた人にとっては、ワゴンの視界はずいぶん低く感じるようですが、低重心による優れた走行性能もメリットのひとつだといえそうです。
また、ワゴンを選ぶオーナーには、機材を大量に積み込む必要があるカメラマンが多いといわれています。
サッカーなどのスポーツをメインに撮影するカメラマン(60代・男性)も、ボルボをはじめ複数台ワゴンを乗り継ぎ、現在ではBMWの「5シリーズツーリング」に乗っているそうです。
「仕事柄たくさんの機材を積み込むのですが、大きなレフ板(光を反射させる板)なども5シリーズツーリングなら折り曲げずに積載できます。
全国の競技場に出かける機会が多いこともあり、高速巡航でストレスのない速いワゴンを選びました。
ワゴンの場合、荷物を積まなければセダンと同じようなフィーリングで走行できるので、軽快感やスポーティさも感じることができます。ミニバンのメリットである多人数乗車の機会がほとんどないので、ミニバンは選択肢には上がりませんでした。
その点、ひとりで乗っても違和感はなく、それどころか高級感を感じさせるプレミアムワゴンは、弱点らしい弱点がないと思います」
※ ※ ※
SUV人気は依然として続いていくものと思われますが、自粛生活や「ニューノーマル」と呼ばれる、新たな生活様式のなかで、ひとりでも楽しめる趣味にも人気が集まっています。
高い積載能力とセダンのような走行性能を持ち、立体式駐車場にも入る高さは、広い駐車場を確保しにくい人にとっては、SUVよりワゴンのほうが使い勝手が良いといえます。
世にSUVやミニバンが増えているからこそ、あえてワゴンを選ぶという人が増えれば、さらに魅力的な新型ワゴンが登場するかもしれません。
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