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なぜスバル車は雪国で選ばれる?四駆性能が圧倒的に支持されるワケ

くるまのニュース / 2021年2月11日 18時10分

「四駆(AWD)」のイメージが強いスバル車は、雪国で高い評価を得ています。かつて、さまざまな駆動方式を模索していたスバルが、どのような経緯で四駆に力をいれるようになったのでしょうか。

■なぜスバルは四駆に力を入れているのか?

 スバルと「四輪駆動(AWD)」は、いまでは切っても切れない関係となり、その販売比率何と9割を超える状況です。

 とくに雪国においてスバル車のシェアが高く、その四駆性能が豪雪地帯で信頼されているといいます。

 しかしスバルは、黎明期にさまざまな駆動方式を模索していました。

 検討と試作の結果、設計統括をおこなっていた伝説のエンジニア・百瀬晋六氏の結論は「フロントエンジン・フロントドライブ(FF駆動)」と「水平対向エンジン」という組み合わせでした。その組み合わせで誕生したのが、1966年に登場した「スバル1000」です。

 では、そこから四輪駆動はどのようにして生まれたのでしょうか。

 そのキッカケは1968年、「山間部の総電線の点検用に『ジープ並みの積雪地での走破性(=四輪駆動)』と『乗用車の快適性』を両立したクルマが欲しい」という東北電力からのあるお願いでした。

 当時、東北電力の用途に合った四輪駆動は三菱「ジープ」くらいでしたが、「燃費が悪い」、「幌なので暖房も効かず寒い」、「運転し辛い」など、走破性以外の部分は問題点ばかりだったのです。

 そこで東北電力が相談したのは富士重工業(当時)の販売店である「宮城スバル」でした。その理由は新車開発ではなく、「既存のモデルを改造してほしい」という依頼だったためです。

 宮城スバルにとって東北電力は大手客のひとつであり、「できる限り要望に応えてあげたい」という想いが強かったようですが、誰もやったことのない事例です。

 しかし、メカに詳しい整備課長が「やってみましょう」ということでプロジェクトがスタートしたといいます。

 スバル 1000をベースとし、FF駆動やエンジン/トランスミッションは縦置きというレイアウトを活かし、トランスミッションの後端にプロペラシャフトを繋ぎリアアクスルを介して後輪を駆動させることで四輪駆動化するという発想です。

 宮城スバルのメカニックは他社のパーツ(日産車の駆動系とサスペンション)を流用して試作をおこない、1台の試作車を完成させました。

 この試作車は豪雪地で知られる山形県の月山やスキー場で試験を実施。ジープとの比較もおこなわれましたが、東北電力のオーダー通りの仕上がりだったといいます。

 その後、この試作車は富士重工に持ち込まれ、プロジェクトを引き継ぐ形で開発が本格化。そして第18回東京モーターショーで「スバルff-1 1300バン4WD」として発表されました。

 しかし、ff-1はモデル末期だったこともあり、試作車が8台作られたのみ。5台はオーダーした東北電力、残りの3台は長野県白馬村役場、長野県飯山農業協同組合、防衛庁に納入されました。

 その後、ff-1の後継モデルとして登場したレオーネの追加モデル「レオーネ4WDエステートバン(1971年)」が「量産4WD」という意味では初となります。

 面白いのは、当時はメーカー自身も「作ってみたものの、乗用4WDの需要は本当にあるのか?」と懐疑的だったことです。

 それはユーザーも同じで「なぜ、乗用車に四輪駆動が必要なのか?」という人がほとんどで、「積雪地で乗るクルマ」というイメージばかりが先行して、販売は厳しかったといわれています。

 ちなみに、レース/ラリーとモータースポーツに世界で初めて4WDを導入したのはスバルで、とくにラリーでは1980年のサファリラリーに参戦していきなりクラス優勝を果たすなど4WDの優位性をアピールしました。

 1980年代は排ガス規制を乗り越えた日本車が大きく成長を遂げた時期ですが、スバルだけではその流れに乗ることができませんでした。いや、むしろ厳しい局面に立たされていたのが事実かもしれません。

 その一方で4WDにも変化が生まれました。当時の4WDといえば「切り替え式」が当たり前でしたが、1980年にアウディがフルタイム4WD(常時四駆)を導入し、そこから流れが大きく変わります。

 それは「悪路走行のためではなく、舗装路のための4WD」です。

 日本でもマツダ「ファミリア4WD(1985年)」を皮切りにトヨタ「セリカGT-FOUR(1986年)」、三菱「ギャランVR-4(1987年)」とオンロード向けの4WDが次々に登場しました。

 スバルもその流れに沿って1986年にレオーネ(3代目)にフルタイム4WDを追加しましたが、ライバルには全く歯が立たず。

 200馬力近いスペックを誇るライバルに対し、レオーネは1.8リッターターボでわずか135馬力。当時のエンジニアは「シャシのポテンシャルを考えると、135馬力以上に上げられなかった」と語っています。

 3代目レオーネは見た目こそ当時のトレンド合わせた物でしたが、中身はスバル 1000から基本設計が変わらないエンジン/プラットフォームで、設計の旧態化が上記のような問題を起こしていたのです。

 その結果、富士重工は他社による買収や倒産の危機まで報道されるほど厳しい局面に立たされていました。

■雪道でも安心して走るために必要なこととは

 そんなピンチのなか「このままでは技術のスバルとはいえない」、「クルマで勝負する」、「本気のクルマを造りたい」との想いが全社的に上がり、起死回生の想いで開発されたのが1989年に登場した「レガシィ」です。

 そのコンセプトは単純明快で「日本で一番いいセダンとワゴンを作る」でした。

 その実現のために、プラットフォームはスバル 1000以来となる全面新設計でサスペンションは4輪ストラットを採用。

 エンジンはレオーネと同じ水平対向ながらも完全新設計の「EJ」を新開発。トップモデル「RS」には220馬力のターボエンジンも設定されました。

スバル初代「レガシィツーリングワゴン」スバル初代「レガシィツーリングワゴン」

 また、開発手法も従来の縦割り&技術主導からプロジェクトチーム制へと変更。評価を一人の実験担当者に託しました。

このように社運をかけて開発したレガシィは高く評価されました。当時を知る同業者に話を聞くと、「驚くほど軽快な動きとアンダーステアが少ないハンドリングに、四駆とは思えないコーナリングマシンだった」と語っています。

 また、当時ドイツ・ニュルブルクリンクでのテスト終了後に、各社のクルマを交換して乗り合いすることがあったそうですが、ポルシェのテストドライバーにレガシィに乗せてみると「こんなに良くできているとは思わなかった!」と褒められたそうです。

 レガシィの成功によって、スバルは「積雪地域で乗るクルマ」から「走りにこだわるブランド」へと変貌を遂げ、いつからか四輪駆動のパイオニアと呼ばれるようになりました。

 9割以上という現在の高いAWD販売比率を当時の開発陣が見たら驚く一方で、先見の明があったことを誇りに思っていることでしょう。

 降雪などで走行環境が悪くなっていくにつれてドライバーの緊張感は高まっていきますが、なぜかスバル車に乗っていると「絶対に大丈夫」と確信できる“何か”を感じます。

 その要因は伝家の宝刀である「四輪駆動」とレガシィ以降磨き抜いてきた「基本性能」の高さ、さらにスバル 360時代から独自に研究を続けてきた「衝突安全性能」へのこだわり、そしてアイサイトをはじめとする「運転支援システム」の挑戦などが注目されがちですが、実はそれ以外にもあります。

 そのひとつが「視界性能」です。スバル車は前後左右どの窓からも1m程度の高さの物が視認できるよう、設計視界を妨げない位置にピラーを配置するだけでなく、内側から見たときに実際よりも細く見えるように設計されています。

 また、装備に関しても、ワイパー払拭面積の広さやワイパーデアイサー(寒冷地でのワイパーの張り付き/ワイパー下に雪が溜まるのを防ぐ)などは、クリーンな視界確保に一役買っています。

 最近では視界をサポートする運転支援システムも存在し、当然最新のスバル車にも採用済みですが、やはり“直接視界”に勝るものはありません。

 非常に地味な部分ですが、「周りの状況がわかりやすい」、「クルマの四隅が把握しやすい」ということは非常に重要な性能のひとつで、スバルはドライバーが安心・集中して運転できる環境を「0次安全」と呼んでいます。

 ただし、そのためにエクステリアデザインが少々犠牲になっている部分がありましたが、最近はそれも両立できています。

 また、細かい部分を見ていくと「空調性能」も見逃せません。足元を均等に素早く暖める吹き出し口のレイアウトやシートヒーター、ステアリングヒーターは面積拡大と即時に温かくする工夫などが施され、通常使用では当たり前すぎて気がつきませんが、これも過酷な条件になればなるほど他社との差は明確です。

 スバルは古くから「グランドツーリング性能」にこだわっていますが、それを要約すると「より遠くに」、「より安全に」、「より快適に」、「より速く」ということです。

 つまり、総合性能が重要となりますが、これは飛び道具ではなく細かい部分まで徹底したこだわりの積み重ねが生み出していると筆者(山本シンヤ)は考えています。

「スバル車に乗ると安心する」、それは気のせいではなく、シッカリと技術の裏付けがあるのです。

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