なぜ日産 GT-Rやエルグランドは10年以上売り続ける? ご長寿モデルが増加する事情とは
くるまのニュース / 2021年3月4日 9時10分
かつての国産車は約4年ごとにフルモデルチェンジをしていましたが、いまでは10年以上も売り続けるモデルが増えました。フルモデルチェンジ周期が延びているのには、どのような事情があるのでしょうか。
■フルモデルチェンジ周期の限界はどれくらいなのか?
最近、発売されてから10年以上を経過したロングセラーモデルが増えました。
10年以上経過した車種は登場順に、2007年登場の日産「GT-R」、トヨタ「ランドクルーザー」、三菱「デリカD:5」、2008年登場の日産「フェアレディZ」、2009年登場の日産「フーガ」とトヨタ「ランドクルーザープラド」、2010年登場の日産「エルグランド」「マーチ」、三菱「RVR」、2011年登場のレクサス「CT200h」、トヨタ「アクア」という具合です。
1980年代までの日本車は、フルモデルチェンジの周期が約4年で、2年後にマイナーチェンジを挟むパターンが一般的でした。初回車検も2年後だったからです。
4年ごとにフルモデルチェンジすれば、2回目の車検を受ける前に売却すると、常に新しいクルマに乗り替えられました。
しかし1983年に初回車検が3年後になった影響もあり、4年の周期が次第に延びていき、1990年以降は5年以上の車種が増えましたが、それでも10年を経過することはほとんどなかったです。
なぜ最近は長年にわたりフルモデルチェンジされない車種が増えたのでしょうか。
先に挙げた長寿モデルのなかで、フェアレディZは次期型のデザインなどを2020年9月に公表しました。ランドクルーザーも2021年にフルモデルチェンジを控えています。
スポーツカーや悪路向けのSUV、商用バンなどは、生産台数が少ないこともあってフルモデルチェンジの周期が長くなり、10年以上の車種もあります。
その一方で、軽自動車やコンパクトカー、ミニバン、セダンなどの周期は6年から7年が多いです。
これらのカテゴリは、スポーツカーや悪路向けのSUVに比べて売れ行きが好調で、ライバル車同士の競争も激しいからです。販売面で優位を保つには10年以上では長すぎるのです。
たとえばトヨタ「ヤリス」は2020年に発売されましたが、その前身となる「ヴィッツ」は2010年に登場しています。10年ぶりのフルモデルチェンジで、これが周期の限界でしょう。
すでに販売を終えた最終型のトヨタ「エスティマ」は2006年に発売。2016年にはフルモデルチェンジではなくマイナーチェンジを受け、この3年後の2019年に廃止されています。
発売の10年後にマイナーチェンジをしたのでは、その後のフルモデルチェンジは難しいわけです。
冒頭で取り上げた車種の場合はどうでしょうか。
ミニバンのエルグランドとデリカD:5、ハッチバックのマーチとレクサスCT200hについて、フルモデルチェンジするかどうかはわかりません。
ミニバンは少子高齢化の影響で、今後の需要が下がる可能性があります。いまでは3列シートのSUVも選べ、海外のニーズも見込みにくいです。
また、ハッチバックの需要も世界的に先細りしており、ボルボ「V40」は終了しました。その代わりコンパクトSUVの「XC40」が用意されています。
そうなるとレクサスCT200hも、コンパクトSUVのUXに統合される可能性があります。
マーチも同様で、2020年12月にフルモデルチェンジした日産新型「ノート」は国内専用車なので販売に力を入れることから、相対的にマーチのニーズは下がります。
RVRは、以前の三菱の経営計画にフルモデルチェンジをおこなう記載がありましたが、いまは消滅しています。
RVRはクロスオーバーSUVの「エクリプスクロス」とプラットフォームが共通で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値も等しいです。
全長はRVRのほうが180mm短いのでコンパクトですが、三菱のSUVには「アウトランダー」もあります。大/中/小と3車種をそろえる必要があるか疑問でしょう。
コンパクトなハイブリッド専用車のアクアもニーズが薄れています。アクアが登場した2011年には、コンパクトな5ナンバーサイズのハイブリッドモデルは珍しかったのですが、いまではヤリス、「ヤリスクロス」、「シエンタ」など、トヨタは複数のコンパクトモデルにもハイブリッドを用意しています。
アクアの役目は終わったと見ることもできますが、アクアはコンパクトなハイブリッドのイメージリーダーとして次期型の開発が進んでいるという話もあります。
■マイチェンでも大幅進化が可能になったのはなぜ?
このように見てくると、車種によって事情の違いはあるものの、基本的にはフルモデルチェンジの限界はいまのところ約10年と考えられます。
衝突安全性能や衝突被害軽減ブレーキを大幅に進化させて性能を高めたり、軽量化を実施するにはフルモデルチェンジが必要で、10年を超えると古さも目立つからです。
マイナーチェンジで大きく進化したレクサス「IS」
とくにいまは、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能の採用などにより、車両重量が増える傾向にあります。
そのままでは環境/燃費性能を悪化させるので、軽量化もセットで実施しなければなりません。プラットフォームの刷新を含めて、フルモデルチェンジのニーズは依然として高いです。
ただし昨今は、膨大なコストを費やしてプラットフォームを刷新するなら、電動化(ハイブリッドやプラグインハイブリッドを含む)への対応が不可欠になりました。
電動化に対応した新しいプラットフォームを使ってフルモデルチェンジするため、車種によってはタイミングを調節しています。
たとえば「マツダ6(旧アテンザ)」は2012年に発売されましたが、2018年にはインパネやタイヤまで刷新する規模の大きなマイナーチェンジを実施しました。
レクサス「IS」も2013年に発売され、2020年に大幅なマイナーチェンジを実施。走行安定性と乗り心地を大幅に向上させています。高コストなフルモデルチェンジするにはタイミングが良くないためです。
マイナーチェンジで済ませた背景には、ボディやプラットフォームに関する解析能力の向上もあります。
「どの部分に手を加えると、いかなる効果が得られるのか」という知見が高まり、以前に比べるとマイナーチェンジで進化する度合いが大きくなったというわけです。
外観などのデザインが安定成長期に入ったことも、フルモデルチェンジの周期が長引いた理由です。
日産「スカイライン」の場合、2代目(発売は1963年)、3代目(1968年)、4代目(1972年)の外観は、フルモデルチェンジの度に急速にカッコ良くなりました。4代目は2代目の9年後に登場しましたが、外観はまったく違うクルマに見えます。
これに比べて、11代目(2001年)、12代目(2006年)、13代目(2013年)は、あまり代り映えがしません。1960年代に比べて2000年以降は、外観デザインの進化が穏やかになったからです。
これは外観を刷新するフルモデルチェンジのニーズが薄れたことも意味します。
さらにミニバンは、車内を広く確保する必要があるため天井の高さやピラー(柱)の角度がある程度決まってしまいます。
トヨタ「アルファード」の初代(2002年)と2代目(2008年)は違いが分かりにいのですが、3代目(2015年)は印象を変えました。主に変化したのはフロントマスクで、ボディの基本デザインはあまり変化していません。
いまはマイナーチェンジによる進化が大きくなり、なおかつデザインは安定成長期に入りました。
さらに環境性能や自動運転といった開発コストも大幅に増えたので、車両開発の投資は相対的に下がりました。
その結果、フルモデルチェンジの周期が長引いています。ただし限界もあり、それは約10年といえるでしょう。
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