なぜ「ホコ天」であえて車を運用? キャンピングカーや輸入バスを活用する理由とは
くるまのニュース / 2021年3月20日 9時30分
日本有数の大企業が集まる東京の大手町、丸の内、有楽町周辺では、歩行者天国がおこなわれる空間であるにも関わらず、キャンピングカーや自動運転バスが運用されるという新しい街づくりが進められています。本来クルマがいてはいけない空間にクルマを配する取り組みとは、いったいどのような狙いがあるのでしょうか。
■「大丸有」ってなに?
JR東京駅周辺の大手町、丸の内、有楽町には、大手商社や銀行・証券、新聞社など日本有数の大企業の本社が集まっています。
この3地域は南北方向でつながっていて、人やクルマの流れも一体化しているように動くため、地域の企業や自治体ではこれまで、大丸有(だいまるゆう)と呼んでさまざまな街づくりをおこなってきました。
そのなかで、大丸有の象徴的な場所が、高級ブティックなども店を連ねている「丸の内仲通り」(まるのうちなかどおり)なのですが、2021年3月に入り、新たな動きが出てきました。いったいどのような状況なのでしょうか。
時刻が2021年3月9日午前11時になると、丸の内仲通りに「歩行者の皆様、丸の内仲通りは歩行者のために開放されました。自転車をご利用の皆さんは歩行者に十分注意して走行してください」というアナウンスが流れ、自動車やオートバイの通行を禁止したいわゆる歩行者天国がいつものように始まりました。
平日では、午前11時から午後3時、また週末は午前11時から午後5時まで実施されている交通規制です。
こうして車両通行止めになっても、丸の内仲通りには許可を受けたクルマが数台、駐車していました。
そのうちの2台はキッチンカーで、テイクアウトのランチメニューや、コーヒーやデザートを提供しているのですが、もう1台はちょっと場違いな感じでビルの前に止まっている、マツダ「ボンゴ」をベースとしたキャンピングカーです。
なにか物販をしているのかとおもいきや、後ろのドアが開いたまま、階段には靴が二揃い置いてあります。車内をのぞくと、男性ふたりが何やら話している様子が見えます。
これは、キャンピングカーなどを共同使用契約する「バン・シェアリング」のプラットフォームを提供するCarstayと三菱地所が連携したもの。
三菱地所が展開するワーキングプレイスをマッチングする支援アプリサービス「NINJA SPACE(忍者スペース)」を通じて予約します。
コロナ禍でさまざまな場所でのリモートワークが注目され、キャンピングカーにも関心が高まっているなかで、丸の内で第一弾を打って出て全国に向けた情報発信となっています。
■車両通行止めの空間を走る「ARMA」(アルマ)とは
丸の内仲通りでは、もうひとつ珍しいクルマがいました。今度は駐車ではなく、車両通行止めの空間を走行しているのです。
車両は、フランスのNAVYA(ナビヤ)が販売する「ARMA」(アルマ)です。
日本への輸入と車両メインテナンスは半導体関連事業等を手掛けるマクニカがおこない、現在日本には合計10台あります。
これらをソフトバンクグループのBOLDLY(ボードリー・2020年4月にSBドライブから改名)が運用しています。
現在のところ、茨城県境町(3台)や羽田空港のHICityなどで運用されています。
こうした事例ではBOLDLYが提供する遠隔操作支援システム「ディスパッチャー」を活用していますが、今回の丸の内実証では、車内にドライバーと運行管理者が2人乗車する自動運転レベル2での運航で、ディスパッチャーは使用していません。
走行の方法としては、「事前にこの地区での3D地図を生成し、ライダー(レーザーレーダー)などのセンサーによって障害物を検知することを主体に走行しています」(BOLDLY関係者)といいます。
今回の実証は、国土交通省のスマートシティやMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)に関する支援事業として、2021年3月8日から14日までおこなうものです。
ホコ天を走行する「ARMA」(アルマ)
大丸有地区まちづくり協議会(大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会)では、2020年3月に「大丸有スマートシティビジョン」を策定しており、このなかで、誰もが快適、安心、安全に、街の魅力を連続的に体験できる、「スマート&ウォーカブル(歩ける)」という道路空間の形成を目指しています。
こうした発想に加えて、コロナ禍での在宅勤務が日常化したことで、大丸有における働き方改革が一気に進みそうです。
自動運転車の本格導入について、協議会の関係者は「現在、運航している無料の大型バスは企業の協賛によって無料乗車できており、自動運転とアプリで乗り換え情報を連携しています。将来的には、自動運転でも企業協賛のかたちなどが考えされると思います」と説明しました。
自動運転に関しては全国各地で実証や社会実装が徐々に進んでいるものの、車両の購入コストや日常的な運用コストに見合う十分な収益性を保つことが難しいという指摘が多くあります。
そうしたなかで、大企業が集約する大丸有ならではの、さまざまな企業による協賛によって自動運転の定常的な運航や、これと連動したオフィスやお店のさまざまな使い方が実現するのかもしれません。今後の展開に注目したいと思います。
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