ドレスアップか性能アップか? 昭和のエアロパーツ車5選
くるまのニュース / 2021年3月22日 6時10分
レーシングカーがより速く走るために開発された「空力付加物」、いわゆるエアロパーツは、1970年代の初頭に公道を走るクルマにも普及が始まりました。しかし、日本では一旦消滅し、1980年代に復活。そこで、昭和の時代に進化した国産エアロパーツ車を、5車種ピックアップして紹介します。
■普及が始まった頃のエアロパーツを振り返る
見るからに速そうな高性能車の外装には、エアロパーツが装着されています。一般的にはフロントスポイラーやスポイラー形状のバンパー、サイドステップ、リアスポイラーやリアウイングなどが代表的な存在です。
こうしたエアロパーツはレーシングカーがより速く走るために開発され、国産車でも1970年代の始めには普及が始まりました。
エアロパーツは文字どおり空気力学に基づいた部品で、空気抵抗を低減したり空気の流れを整え、車体を地面に押し付ける力「ダウンフォース」を高めるなどの作用が期待できるというものです。
一方で、レーシングカーのイメージに寄せるドレスアップの要素もあり、1970年代初頭の国産車の高性能化に合わせて取り付けるようになったといえます。
しかし、1970年代中頃には暴走族や交通事故の増加という背景から、エアロパーツの装着は運輸省(現在の国土交通省)が認可しなくなり、一旦は消滅の危機にありました。
ところが、1980年代になるとエアロパーツが再び認可されるようになり、急速に普及しつつ進化していきました。
そこで、昭和の時代に繁栄した国産エアロパーツ車を、5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「TE27型 カローラレビン/スプリンタートレノ」
旧車のなかで今も高い人気を誇っている「TE27型 カローラレビン」
1969年に東名高速道路が全面開通し、国産車も高性能化が始まりました。また、鈴鹿サーキットや富士スピードウェイを舞台に、モータースポーツも盛んになっていきます。
そうした背景からスポーツモデルに熱い視線が集まり、大衆車にも魅力溢れるスポーツカーを求める声が出始めました。
そこで、トヨタは1972年3月に初代「カローラレビン/スプリンタートレノ」を発売。「TE27型」という型式から、後に「ニーナナ レビン/トレノ」の愛称で呼ばれました。
ボディは2代目カローラ/スプリンターのクーペをベースとし、リベット留めのオーバーフェンダーを前後に装着。まさにレーシングカーからのフィードバックです。
搭載されたエンジンは、トヨタ初代「セリカ」のために開発された、1.6リッター直列4気筒DOHC「2T-G型」と、1.6リッターOHVの「2T-B型」で、OHV車は廉価版として「レビンJ/トレノJ」の名前でしたが、外観はエンブレム以外ほとんど変わらずオーバーフェンダーも装着されていました。
当時、日産「フェアレディ240ZG」や「スカイラインGT-R」はオーバーフェンダーに加えリアスポイラーも装着されましたが、レビン/トレノのオーバーフェンダーだけでもかなり迫力が増したといえます。
その後1974年頃から、国産エアロパーツ車は姿を消していきます。
●ダイハツ「シャレード デ・トマソターボ」
イタリアブランドの逸品をふんだんに搭載した「シャレード デ・トマソターボ」
ダイハツは1977年に新世代のFFコンパクトカー、初代「シャレード」を発売。
1980年代になるとターボエンジンの普及によって国産車の高性能化が加速したことを受け、ダイハツも1981年に開催された東京モーターショーに、イタリアのデ・トマソがチューニングした「シャレード デ・トマソターボ」を参考出品しました。
この初代ベースのシャレード デ・トマソターボは市販化されませんでしたが、1983年に2代目となったシャレードをベースにしたモデルの発売が決定。
1984年に登場したシャレード デ・トマソターボは、最高出力80馬力(グロス)を誇る1リッター直列3気筒ターボエンジンを搭載し、600kg台の軽量なボディと相まって、クラスを超えた優れた走りを実現しました。
外装にはデ・トマソが監修した専用デザインのエアロパーツが装着され、スポイラー形状の前後バンパー、サイドステップ、リアゲートの外周を一周するように装着されたリアスポイラーで構成され、まだ派手さは控えめでしたが、シャレードのホットハッチ化に成功。
さらにカンパニョーロ製マグネシウムホイールにピレリ製タイヤ、MOMO製ステアリングといった、人気のイタリアブランドのパーツが純正装着されているなど、若い世代のクルマ好きの心を掴みました。
●日産「オースター ユーロフォルマ」
流行りのホワイトのボディがイチオシだった「オースター ユーロフォルマ」
国産車の高性能化とともにエアロパーツが解禁されると、当時最先端だったのが、フロントスポイラー、サイドステップ、リアアンダースポイラー、リアスポイラーと、クルマの周囲を一周してエアロパーツが装着されることで、「フルエアロ」と呼ばれました。
このフルエアロを純正装着するクルマが次々と登場し、日産も1985年に発売された3代目「オースター」で実現。
オースターは同時期にFF化された「ブルーバード」と主要なコンポーネンツを共有した4ドアセダンで、欧米でも販売された世界戦略車です。
3代目は直線基調のデザインで、一見するとなんの変哲もないセダンでした。
しかし、フルエアロが装備された「1.8Siユーロフォルマ」と「1.8Rttユーロフォルマ TWINCAM TURBO」のふたつのモデルは、ヨーロピアンな華麗なボディに変身。
こうしたフルエアロはアフターマーケットでも人気があり、とくにホワイトのボディカラーに装着するのが流行していたことから、各メーカーともホワイトのカラーリングに力を入れていました。
■時代の流れに乗って進化したエアロパーツ車とは
●ホンダ「シティ ターボII」
迫力がありながらスマートに処理されたエアロの「シティ ターボII」
ホンダは初代「シビック」に代わるエントリーモデルとして、1981年に初代「シティ」を発売。
シティはそれまでのコンパクトカーの概念を覆したデザインで、全高を高くするとともに極端なショートノーズを採用し、広い室内空間を実現したコンセプトがユーザーに受け入れられ、大ヒットを記録しました。
1982年にはターボ化の波に乗って、最高出力100馬力(グロス)の1.2リッター直列4気筒SOHCターボエンジンを搭載した「シティ ターボ」が登場。
さらに1983年にはシティターボのエンジンにインタークーラーを追加した「シティ ターボII」が発売され、1.2リッターエンジンは最高出力110馬力(グロス)まで高められました。
外観もハイパワーなエンジンにふさわしく、パワーバルジ付きボンネットや、スポイラー形状の前後バンパーが装着され、もっとも特徴的だったのがトレッドを拡大してブリスターフェンダーを採用したことです。
当時は規制が緩和されたとはいえ、前述のレビン/トレノのような後付けのオーバーフェンダーが認可されることが難しく、フェンダー自体を膨らませたブリスターフェンダーがトレッドを拡大するモデルの主流となっていきましたが、シティ ターボIIは国産車では先駆けです。
まさに「ブルドッグ」という愛称にふさわしく、シティ ターボIIは迫力あるボディとなっていました。
●三菱「ミラージュ サイボーグ 16V-T セダン」
ウイング形状に移行した初期のモデルだった三菱「ミラージュ サイボーグ 16V-T セダン」
1978年に発売された三菱初代「ミラージュ」は同社初のFF車であり、コンパクトなサイズながら広い室内と欧州テイストのスタイリッシュな外観で、ライバルよりも後発ながらヒット作となりました。
そして1982年にはクラス初のターボエンジンを搭載した「ミラージュIIターボ」が登場し、コンパクトカーの高性能化をけん引します。
その後ミラージュは代を重ね、1987年に3代目がデビュー。ボディは3ドアハッチバックと4ドアセダンが設定されました。
トップグレードには1.6リッター直列4気筒DOHCターボエンジン「4G61型」を搭載。最高出力145馬力を誇るスポーティモデル「サイボーグ 16V-T」がハッチバック/セダンともにラインナップされます。
さらに1989年のマイナーチェンジでは最高出力160馬力までパワーアップされ、ハイパワーな2WD/4WD車として一時代を築きました。
サイボーグの外観ではハッチバック専用にリアゲート中央へスポイラーが装着されたのが斬新で、さらにセダンでは小ぶりながらウイングタイプのリアスポイラーが装着されました。
まだ派手さはありませんが、支柱が2本あって両端がボディに接していない、紛れもなくウイングと呼べるものでした。
そして、平成になるとリアスポイラーはより高い位置へと上がっていき、レーシングカーに近いウイングへと進化していきました。
※ ※ ※
レビン/トレノにも装着されたリベット留めのオーバーフェンダーについてですが、1973年に登場したBMW「2002ターボ」にも装着されていました。
輸入車でオーバーフェンダーは非常に珍しかったのですが、この2002ターボは日本に輸入される際に運輸省の指導によって、オーバーフェンダーの継ぎ目をパテ埋めする必要があったという逸話が残っています。
ボディと一体化することでフェンダーの一部に改められ、輸入が認められたという今では考えられないような時代でした。
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