「GT」グレードだけど違和感アリ? なぜかGTの名を冠した車5選
くるまのニュース / 2021年3月29日 6時10分
ひとつの車種にはエンジンや装備の違いによって、複数のグレードが設定されるのが一般的です。なかでも高性能なグレードには特別な名が与えられ、代表的なものとして「GT」が挙げられます。しかし、なぜGTが付けられたのか理解が難しいモデルも存在。そこで、GTグレードだけど違和感のあるモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
■GTグレードだけど疑問が残るクルマを振り返る
なかには例外もありますが、1車種には装備やエンジンの違いによって複数のグレードが設定されるのが一般的です。
また、グレードによっては価格が異なり、ユーザーの使用目的や予算、好みで選ぶことができます。
一部の車種では高性能モデルに特別なグレード名が与えられており、たとえば日産「スカイライン」ならば「GT-R」、ホンダ「シビック」では「タイプR」、マツダ「ロードスター」は「RS」などが挙げられますが、もっとも広く使われてきたのが「GT」ではないでしょうか。
GTは「グランツーリスモ」や「グランドツーリングカー」の略で、古くから高性能グレードを示しており、特別なエンジンやチューニングされた足まわりを採用されたモデルといえます。
一方で、GTという名が与えられながらもそれほど高性能ではないモデルや、特別ではないモデル、どう考えても似合わないというようなモデルも存在。そこで、GTグレードだけど違和感のあるモデル5車種をピックアップして紹介します。
●日産「ラングレー GT」
まさにミニ「スカイライン」といったユニークなモデルの3代目「ラングレー」
日産は1980年に、スカイラインのイメージを投影した安価なエントリーモデルとして初代「ラングレー」を発売。
ラングレーは当時販売していたコンパクトカー「パルサー」とプラットフォームや主要なコンポーネンツを共用したFF3ドアハッチバックで、発売当初は1.4リッター直列4気筒OHVエンジンを搭載し、FFならではの広い室内空間が特徴でした。
ラングレーは、広告のキャッチコピーもスカイラインを模しており、初代が「愛のラングレー」、1982年登場の2代目では「ポールとポーラの新ラングレー」と非常にユニークです。
また、1986年に発売された3代目では、レーシングドライバーでスカイラインのCMにも出演していた鈴木亜久里選手を起用し、「スカイラインズ・ミニ」のキャッチコピーで若者に訴求。
この3代目で追加された4ドアセダンには、完全に7代目スカイラインに寄せたであろう丸型4灯テールライトを採用し、さらに3ドアハッチバック、セダンともにGTグレードが設定されました。
当時、日産車でGTを名乗れたのは直列6気筒エンジンを搭載したモデルといわれていましたが、3代目ラングレーは直列4気筒エンジンながらGTを冠するという特異なケースでした。
●三菱「ブラボー GT」
軽1BOXワゴンながらとんでもないエンジンを搭載した「ブラボー」(画像は前期型の「MZ-G」)
現在、日本でもっとも売れているクルマといえば軽ハイトワゴンですが、かつて軽自動車のワゴンといえば1BOXタイプの商用バンをベースにしたモデルが主流でした。
1BOXタイプのモデルはリアにスライドドアを備えて荷室も広く、使い勝手の良さから人気があり、各メーカーともラインナップしていましたが、なかでも非常に高性能なグレードを設定したモデルとして1991年に誕生した三菱2代目「ブラボー」が挙げられます。
トップグレードの「MZ-G」には、64馬力を発揮する660cc直列3気筒DOHC15バルブターボエンジンを搭載。このエンジンは「ミニカ ダンガンZZ」にも搭載されたユニットで、1気筒あたり吸気バルブを3本、排気バルブを2本の5バルブを採用して高回転化にも有効でした。
なぜ軽1BOXワゴンにレーシングカーのようなエンジンが搭載されたかというと理由は単純で、当時の三菱は軽自動車用高性能エンジンが5バルブのみだったということです。
その後、1994年のマイナーチェンジでは、さらにアップグレードした660cc直列4気筒DOHC20バルブターボエンジンを搭載するGTシリーズが登場。
たしかにGTを名乗るのに相応しいエンジンでしたが、軽1BOXでGTの名を冠するとは、かなり大胆な発想といえます。
ちなみに同じエンジンを搭載してよりスポーティなミニカはGTではなく、引き続きダンガンの名を継続していました。
●マツダ「ファミリア GT」
GTグレードでもパンチ力を失ってしまった7代目「ファミリア」
現行モデルのマツダ「マツダ3」の源流にあたるモデルとして「ファミリア」があり、かつては同社を代表する大衆車で長く主力車種として販売されていました。
1985年に発売された6代目ファミリアには、140馬力を誇る1.6リッター直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載したスポーティグレードの「GT」シリーズが設定され、日本初のフルタイム4WD車も追加されます。
さらに、1989年に登場した7代目では、トップグレードに最高出力180馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載した「GT-X」をラインナップ。
一方で、GTグレードも設定されましたが、こちらは「ロードスター」にも搭載された「B6型」1.6リッター直列4気筒DOHC自然吸気エンジンで最高出力130馬力と、6代目のスペックからダウングレードされています。
当時、ホンダは1.6リッターで160馬力に到達していましたから、ファミリア GTの物足りなさは否めませんでした。
■まるで「GT」がデフレ状態のようなモデルとは!?
●日産「エクストレイル 20GT」
パワフルなディーゼルエンジンながら切れ味は鋭くなかった「エクストレイル 20GT」
2000年に誕生した日産初代「エクストレイル」は、クロカン車寄りながら都会派のユーザーも満足させるミドルサイズのSUVで、日本国内だけでなく海外でもヒットしました。
そして2001年には、専用のフロントバンパーと大型フロントグリルを装着し、2リッター直列4気筒ターボ「SR20VET型」エンジンを搭載する「エクストレイル GT」が国内専用車として追加ラインナップ。
最高出力はSR型エンジンで唯一の280馬力を誇り、トランスミッションは4速ATのみでしたがアクセルを踏み込んでターボの過給圧が高まると豪快な加速が味わえる、まさにGTを名乗るにふさわしいスペックでした。
そして、2007年に2代目が登場し、2008年には初のクリーンディーゼルダーボエンジンを搭載した「20GT」が登場。
2リッター直列4気筒DOHCコモンレールディーゼルターボは最高出力173馬力を発揮し、トランスミッションは6速MTのみ(後に6速ATを追加)と硬派な印象です。
実際にパワフルなエンジンでしたが、1.6トンを超える車重に加え過給圧がかからないとトルクもそれほどでもなく、初代のGTのような豪快なフィーリングには到達していませんでした。
●スバル「レヴォーグ」
スポーティなデザインと高い安全性が評価されている新型「レヴォーグ」
スバルは1989年に初代「レガシィ」を発売し、高性能なエンジンとフルタイム4WDを組み合わせたセダン/ステーションワゴンのラインナップを設定して大ヒットを記録。
なかでも「レガシィ ツーリングワゴン 」はスキーブームという背景からとくに人気となり、ステーションワゴンブームをけん引した存在でした。
その後、レガシィ ツーリングワゴンは代を重ねましたが、2014年に国内販売を終了。同年には後継車の初代「レヴォーグ」が発売されました。
そして、2020年10月に外観は初代からキープコンセプトとし、新開発の1.8リッター水平対向4気筒DOHC直噴ターボエンジンを搭載した2代目がデビュー。
先進安全技術も最新の「アイサイトX」を設定するなど、すべてが進化しました。
グレード構成は伝統のスポーツモデル「STIスポーツ」系以外はすべてGTが冠されています。エントリーグレードが「GT」で、アイサイトXを搭載したハイグレードモデルが「GT-H EX」といった具合で、まさにGTのデフレ状態です。
さらにエンジンスペックはSTIスポーツも含め全グレード共通で最高出力177馬力、トランスミッションも全車CVTとされ、差別化はおこなわれていません。
実は初代レヴォーグも全グレードがGTの名を冠しており、全車パワフルな1.6リッターと2リッターターボエンジンを搭載するなど、レヴォーグはすべてがスポーティで、レガシィから受け継いだGTを名乗るのに相応しいモデルということなのかもしれません。
※ ※ ※
前述にあるとおり、かつて日産は直列6気筒エンジンがGTの条件だったといわれ、トヨタはDOHCエンジンがGTグレードの必須条件でした。
後に日産は直列4気筒エンジン車でもGTを冠しましたが、現在スカイライン以外で使われていません。
また、トヨタも1980年代の終わり頃からDOHCエンジンの拡充を進めたことから、あくまでも高スペックなモデルにGTの名を与え、現在は「86」以外で使われていません。
スカイラインも86も伝統を引き継いだかたちでGTが使われていると思われますが、実は両社にとってGTグレードは昔以上に特別なものなったといえます。
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