産学官連携でどう進む? 自動運転推進の国家プロジェクト「SIP-adus」の現状とは?
くるまのニュース / 2021年3月31日 18時40分
ホンダが2021年3月に自動運転レベル3を実用化した新型「レジェンド」を発売するなど、自動運転技術の進化が進むなか、東京都内で「SIP 第2期 自動運転 中間成果発表会」が2021年3月25日・26日に開催されました。いったい、どんな内容が発表されたのでしょうか。
■SIP第2期の4つの重点テーマとは
2021年3月25日から26日にかけて、東京都内で「未来を変える自動運転ショーケース」と題し「SIP 第2期 自動運転 中間成果発表会」が開催された。
昨今、自動運転の実証実験が全国各地でおこなわれ、ホンダからは自動運転レベル3の新型「レジェンド」が発売されるなど、自動運転への関心も高まりつつある。
じつは、自動運転の社会実装に向けて、2014年に府省が分野の枠を超えて連携し、産学官体制が発足。自動運転の基礎研究から実用化、事業化までを見据えた取り組みを「SIP-adus」という名のもと、国家プロジェクトとしてスタートした。
SIP-adus(Automated Driving for Universal Services)は、自動車メーカーをはじめ、内閣官房、警察庁、総務省、国土交通省、経済産業省など関係省庁が参加。
第1期では、自動運転に必要な高精度3D地図の構築と配信や、車両のサイバーセキュリティ評価手法の確立などを実施。
2018年に始まったSIP第2期では、テーマ名を「SIP自動運転(システムとサービスの拡張)」に改め、技術開発中心のフェーズから自動運転の実用化に向けたシステムの進化とサービス拡張のフェーズに移行。
東京臨海部及び中山間地域でさまざまな事業者や自治体等参加による実証実験などを重ね、社会実装に向け取り組んでいる。
2020年度を実用化、事業化に向けた重要なマイルストーンと位置づけ、中間成果発表会が実施されたというわけだ。
第2期では以下の4つの重点テーマが掲げられている。
1.交通環境情報の構築と発信
2.仮想空間での安全性評価環境の構築
3. サイバーセキュリティ(侵入検知システム)の評価手法の確立
4.地理系データの流通ポータルの構築
高度な自動運転は、カメラ、ミリ波レーダー、LiDARなど、車両に搭載されたセンサーから得られる情報とインフラなどの車両外部から得られる情報、そして高精度3D地図情報を用いて自車位置を推定することで走行経路を計画する。
SIP自動運転では静的情報である高精度3D地図情報と、さまざまな機関が所有し時間とともに変化する位置特定可能な動的データ(動的情報、準動的情報、準静的情報)とを紐づけたデータベースを“ダイナミックマップ”と呼び、その構築と配信、ならびに流通促進に取り組んでいる。
現在のカーナビシステムよりも高度で情報量が多く、道路交通インフラなどさまざまな方法で得られる情報をダイナミックマップに反映させることで、自車の位置や周囲の状況を、高精度で切れ目なく把握することが可能になる。
ふたつめの仮想空間での安全性評価に向けては、システムの外界との接点となるカメラ、ミリ波レーダー、LiDAR等の各種センサ ーを同時に評価ができるシミュレーション評価基盤(DIVP:Driving Intelligence Validation Platform)の構築が実施されている。
これはシミュレーションに係るツールとインターフェースなどを自動車メーカー、サプライヤー間で共通化することにより、業界全体としてレベルアップを図り、産業競争力の向上を目指すもの。
研究開発には専門的な知見を有す12のエキスパート団体が参加。物理現象に基づきセンサー原理をシミュレーションモデル化し、現実世界に対して高度な一致性を有するシミュレーション評価環境を実現した。
今後はシミュレーション評価基盤の性能向上とプロセス化を進めると共に、2021年度からはデータベースの構築に着手。2022年の社会実装を目指している。
■クルマに向けたサイバー攻撃への対応策は?
CASE戦略のC(コネクテッド)が進むにつれ、車両に対するサイバー攻撃が予想される。
これに対し、個社での対策や国連、国レベルでの法整備が進められているのが現状だ。
2015年には、米国で自動車関連情報に対するサイバー攻撃の脅威や潜在的な脆弱性に関する知見を共有し、分析するための安全なプラットフォームを確立することを目的として、Auto ISAC (The Automotive Information Sharing and Analysis Center)が設立されている。
日本国内でも2019年の道路交通法および道路運送車両法の改正によって通信によるソフトウェアの大規模なアップデートが可能になるなど、サイバーセキュリティに対する情報共有の重要性や性能評価手法のガイドラインが求められるようになってきた。
SIP-adus では、ファーストステップとして、JASPAR(Japan Automotive Software Platform and Architecture)と連携して、サイバーセキュリティの評価手法の確立に着手。
サイバーセキュリティ機器 ※フォト:SIP cafe
その後、2021年2月には、日本自動車工業会(JAMA)に所属する自動車メーカー全14社と日本部品工業会に所属する主要サプライヤー7社が発起人となり、一般社団法人Japan Automotive ISAC(J Auto ISAC)を設立。
SIP-adusではサイバー攻撃検知技術である車載IDSの評価方法を調査研究し、J Auto ISACで情報共有し防御防災する体制づくりを進めている。
また、過疎化が進むなか、山間地域における自動運転移動サービスの社会実装に向けた実証実験と持続可能なビジネスモデルの検討が進められており、また自動運転の普及拡大を見据え、交通環境に関する地理系データを多用途に展開するためのポータルサイト「MD communet」が構築された。
このMD communetは、交通環境情報の活用によって社会課題の解決や新たな価値の創造を目的としたもので、データ提供者と利用者との情報交換の場を提供し、世の中に埋もれているデータを利活用するための仕組みづくりを目指すものだ。
そしていま、29の国内外の企業・学術組織などが参加し、マッチングファンド形式で大規模な自動運転実証実験を実施中だ。
自律走行可能な自動運転車が、臨海副都心地域、羽田空港と臨海副都心などを結ぶ首都高速道路、羽田空港地域で、信号機や車線など、道路インフラからの必要な交通環境情報を活用して6万4591km(2021年2月末)の走行を重ね、安全な自動運転を実現に向けた有効性やそのために必要な情報の要件などを獲得している。
SIP自動運転は、今後、自動運転を利用するために必要な知識を明確にして、教育すべき内容を整理するとともに、効果的な教育方法を開発。
そして人文、社会科学の視点も含む総合知をフル活用し、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会「Society5.0」を具現化したものとして自動運転社会の実現を目指していく。
SIP第2期自動運転中間成果発表会は、リアルとオンラインのハイブリッドで開催され、2021年4月30日まで展示ホームページで、その内容を見ることができる。
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