電動SUVとは対極の存在? アナログすぎるクロカン名車3選
くるまのニュース / 2021年4月20日 16時20分
2021年4月19日に中国で「上海モーターショー2021」が開幕しました。中国は重要な市場なため、各メーカーとも売れ筋のSUV、しかも電動車を数多く出展。一方で、昭和の時代に誕生した本格的なクロカン車は、電子制御など一切無く、アナログな魅力が満載です。そこで、純粋な機械だった頃のクロカン名車を、3車種ピックアップして紹介します。
■メカと対話していたころのクロカン車を振り返る
2021年4月19日に中国の上海市で開幕した「上海モーターショー2021」では、世界的にも人気沸騰中のSUVを中心に各メーカーが新型車を発表しました。
とくに中国は2035年までに、純粋に内燃機関だけを動力とするクルマからの脱却、いわゆる「脱ガソリン車」を宣言していることから、公開されたSUVの新型車とコンセプトカーのほとんどがEVやPHEVとなっています。
脱ガソリン車という政策は中国だけでなく欧州や日本なども進めているので、こうした流れは自然といえるでしょう。
一方で、SUVの先祖であるクロスカントリー4WD車(以下、クロカン車)のなかでも昭和の時代に誕生したモデルは、駆動系やエンジンの電子制御など無く、純粋にドライバーが機械を操るアナログなモデルとして今のクルマにはない魅力があります。
そこで、往年のアナログなクロカン車を3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「ジープ」
国産クロカン車の元祖といえる存在の「ジープ」
クロカン車のルーツといえば第二次世界大戦で使用された軍用車にたどり着きますが、その代表的な存在なのが三菱「ジープ」です。
ジープは米軍の軍用車として開発され、第二次世界大戦後の1953年に三菱がノックダウン生産を開始。その後、1956年には完全に国産化し、民生用にも発売されました。
ボディバリエーションはホイールベースによってショート、ミドル、ロングに分かれ、キャビンも幌タイプやバンタイプを設定。
縦格子のフロントグリルに丸目2灯ヘッドライトの特徴的なフロントフェイスは、シリーズ共通となっています。
シャシはトラックと同様な頑丈なラダーフレームで、別体のボディを架装する構造を採用。
足まわりはストロークを長くとった前後リーフスプリングのリジッドアクスルとすることによって、高い耐久性と悪路での優れた路面追従性を発揮しました。
搭載されたエンジンは直列4気筒のガソリンとディーゼルが設定され、歴代モデルではさまざまな排気量が用意されるなど使用状況によって選択が可能で、最終型では2.7リッター直列4気筒のインタークーラー付きターボディーゼルを搭載。
また、装備は必要最低限のものだけで快適装備というとヒーターとラジオくらいで、当然、パワーステアリングも設定されておらず、乗り心地や高速性能も考慮されていないため普段使いには適していませんでした。
1990年代の終わりに、排出ガス規制や衝突安全基準の強化への対応が困難なことから生産終了が決定され、1998年にベージュ色のボディカラーに専用幌生地の採用や、シャシの防錆強化が図られた「最終生産記念車」を発売し、三菱ジープは長い歴史に幕を閉じました。
●日産初代「サファリ」
質実剛健なイメージがまさにクロカン車といえる初代「サファリ」
1951年に誕生した日産「パトロール」は、前述のジープに酷似したデザインとコンセプトのモデルです。1960年には2代目が登場し、1980年まで20年間も生産されたロングセラーで、3代目にあたるモデルから車名を「サファリ」に改められました。
初代サファリはパトロールで培った悪路走破性はそのままに普段使いも考慮されて大幅な進化を果たし、ボディタイプは4ドアのロングボディと2ドアのショートボディを設定し、ハイルーフ仕様や、バックドアが観音開きと上下開きが選べるなど、幅広いニーズに対応したバリエーションを展開。
発売当初に搭載されたエンジンは3.3リッター直列6気筒ディーゼルのみでしたが、1983年にはターボディーゼルが追加されました。
クロカン車としては定番の堅牢なラダーフレームにボディを架装する構造で、足まわりは前後リーフリジッドアクスルを採用。悪路走破性の高さだけでなく耐久性も高く、国内では山間部や積雪地帯でサファリをベースとした消防車も活躍したほどです。
1985年のマイナーチェンジではヘッドライトが角型となり、4ドアのロングホイールベース車にオーバーフェンダーと大径ワイドタイヤ、電動ウインチと背面スペアタイヤキャリアを装着した「グランロード」をラインナップして、迫力ある外観から人気を獲得。
その後、1990年代初頭に起こった「RVブーム」では2代目がヒットしましたが、ブームの終焉によって国内での販売が低迷したことで、2007年に3代目をもってサファリの歴史に幕が閉じられました。
なお、海外では後継車がパトロールの名で販売を続けており、インフィニティブランドでも「QX80」として展開されるなど、ラグジュアリーなクロカン車として人気となっています。
■トヨタの窮地を救ったクロカン車とは?
●トヨタ「40系ランドクルーザー」
今もクラシックSUVとして世界中で人気の「40系ランドクルーザー」
長い歴史を持つトヨタ「ランドクルーザー」シリーズは、現在も日本を代表するクロカン車です。
これまで販売されたランドクルーザーのラインナップは「ヘビーデューティ」「ライトデューティ」「ステーションワゴン」の3タイプに大別されますが、なかでも1960年に誕生した「40系ランドクルーザー」は、ヘビーデューティの代表的な存在として世界中で人気となりました。
ボディバリエーションはホイールベースによってショート、ミドル、4ドアロングに分けられ、幌ボディとメタルトップを設定する商用車の扱いで、海外ではさらにロングホイールベース化されたピックアップトラックなどもラインナップ。
ボディ構造はラダーフレームにボディを架装して、高い強度と耐久性を誇っています。
外観では大きく張り出した左右のフロントフェンダーが特徴的で、本格的なクロカン車では定番のデザインとなっていたことから、ランドクルーザーの車名が浸透する前は「トヨタのジープ」と呼ばれていたほどです。
搭載されたエンジンは、発売当初は3.9リッター直列6気筒ガソリンのみで、1973年に3.6リッター直列6気筒ディーゼルエンジン、1974年には3リッター4気筒ディーゼルエンジンを追加し、幅広いニーズに対応。
40系ランドクルーザーは1984年まで24年間も生産され、今も「ヨンマル」や「Forty(フォーティー)」のニックネームで呼ばれるほど愛されています。
なお、トヨタは1957年に初代「トヨペット クラウン」をアメリカで発売しましたが、品質や性能に問題があり、1960年には輸出を停止。
その代わりに輸出された40系ランドクルーザーがアメリカで大ヒットしたことで、トヨタの危機的状況を救い、後の世界進出への足がかりとなりました。
※ ※ ※
上海モーターショーで数多く出展された電動SUVは、環境性能の観点から歓迎すべきことでしょう。また、駆動系やエンジンを高度に電子制御化することで、安全性や走行性能も飛躍的に向上しました。
一方で、電子制御化されたクルマでは修理できないという国や地域も存在し、最後に紹介した40系ランドクルーザーなどは今も世界で活躍しています。
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