いまプジョー/ルノー/シトロエンが絶好調! フランスブランドに人気が集まる理由とは
くるまのニュース / 2021年5月9日 11時10分
いま、フランスブランドが人気だ。新型コロナウイルス感染拡大による影響もあってか、2020年度の外国メーカー車の輸入車登録台数は前年度比で87.5%と厳しい数字だったのに対し、プジョーは前年度比116.2%、シトロエンは同127.2%とプラス成長となっている。ルノーやDSもほぼ前年度と同じ登録台数で、フランスブランドの好調ぶりが数字にも表れている。その理由はなんなのだろうか。
■プジョー・シトロエン・DSは魅力ある新型車の導入が好調の要因
日本自動車輸入組合(JAIA)が、2020年度(2020年4月~2021年3月)の新規登録台数を発表した。
コロナ禍で揺れた2020年度の輸入車の販売実績となる。それを見ると、輸入車全体の前年比は99%。なんと、ほとんど前年と同じだけ売れているのだ。
しかし、これには裏がある。輸入車には外国メーカー車以外も含まれるのだ。つまり、海外で生産された日本車がある。その数字は前年比169.9%。とくに前年比503%と日産が数字を伸ばした。内訳はハッキリしないが、2020年6月に発売となった新型キックスがタイで生産されており、その販売分が輸入車としてカウントされているのが大きいだろう。
そうした日本メーカーの分を抜いた、外国車ブランドの2020年度の新規登録台数は25万5518台で、前年比は87.5%となる。やはりコロナ禍の影響もあってか、販売を12%ほども落としているのだ。ちなみに2020年1~12月の統計では、前年比85.5%。2021年になって、状況はほんの少しは上向きになっているようだ。
とはいえ、発表された数字を見ると、すべての外国車ブランドが苦戦しているわけではないことに気づく。
目立つのは苦戦するドイツ勢に対して、フランス勢が堅調であること。プジョーは、1万2010台で前年度比116.2%。ルノーは6295台の同99%。シトロエンは5612台で同127.2%。DSは951台で同103%。外国メーカーで平均マイナス12%なところ、ほぼ前年以上の売り上げを確保できているのだ。
では、なぜ、フランスブランドは堅調なのだろうか。まずはプジョー、シトロエン、DSを販売するグループPSAジャパンの広報担当者に話を聞いてみた。
すると、回答一番が「クルマの出来が良かったことですね」という。
2020年にプジョー・シトロエン・DSは、数多くの新型モデルを日本に投入していたのだ。その筆頭が、プジョー新型「208」と、そのSUV派生モデルである「2008」だ。この2台のBセグメントモデルは欧州でも人気が高く、2021年2月までの2か月で、208が販売台数1位、2008が4位に入っている。
2020年7月に日本に上陸したプジョー新型「208」
もちろん日本での人気も好調で、プジョーの販売を牽引する存在だという。また、ミニバンのプジョー「リフター」と、その兄弟車となるシトロエン「ベルランゴ」を導入した効果も大きいという。
「じつはベルランゴをきっかけに、初めてシトロエンというブランドを知った方が非常に多かったんです。なんと7割が新規客でした。しかも、その方がディーラーに来て初めて、ベルランゴが3列シートじゃないことに気づくことも多かったようです。でも、横を見ると、3列シートのグランドC4スペースツアラーがあると。“あ、それならこちらでいいか”と、グランドC4スペースツアラーを買うというケースも多いようです。ベルランゴの登場で売れなくなると覚悟していたら、逆に両方が売れるようになっています」とグループPSAジャパンの広報担当者は説明する。
2020年8月にカタログモデルを発表したシトロエン「ベルランゴ」
ちなみにDSブランドには、2020年7月にコンパクトSUVタイプのEV「DS3 CROSSBACK E-TENSE(DS3クロスバック Eテンス)」を投入した以外はニューモデルはなかったが、「これまで地道なコミュニケーションやマーケティング活動が実を結んだと思います」とか。
出来の良い新型車を投入したことで、ブランドの知名度が高まり、全体としての販売がアップしたというのがプジョー、シトロエンの成功の理由だというのだ。
■ルノーはモデル末期の「カングー」が販売台数を後押しした
では、ルノーはどうであろうか。
こちらも2020年秋に新型「ルーテシア」、2021年2月にSUVの新型「キャプチャー」を投入している。
2021年2月に日本上陸を果たしたルノー新型「キャプチャー」
「ルーテシアとキャプチャーの2モデルは、確かに新型車ならではのインパクトがありました。ただ、日本市場向けに潤沢な数が用意できたわけではありません」とはルノー・ジャポンの広報担当者のコメントだ。
数多くの注文はあったけれど、それが新車登録台数に反映できずに、多くがバックオーダーになってしまったというのだ。
さらに新型2モデルの導入は、ルーテシアは2020年10月、キャプチャーは2021年2月と年度の後半だった。ニューモデルの投入はあったけれど、年間の販売台数への貢献は、それほど大きくなかったようだ。
では、何がルノーの2020年の販売を支えたのか。
それは意外な答えだった。「カングーが、よく売れました」とルノー・ジャポンの広報担当者は語る。しかも「コロナがなければ、もっと数多く売れていたはずです。2020年は夏にフランスの工場が停止していたので、注文された数ほど新車登録できませんでした。カングーもバックオーダーを抱えています」ともいう。
ちなみにカングーはルノーの人気モデルだが、現行モデルが登場したのは10年以上も前の2009年のこと。モデル末期もよいところで、フランス本国では次世代モデルも発表されている。
普通、新型モデルの登場が予告されると、現行モデルの販売は悪くなるものだ。しかしカングーは、それが反対になるようなのだ。
「どうも、新型が出ることで、現行モデルが買えるのは今しかないと、販売が伸びているようです。じつは初代モデルから、現行型の2代目モデルに変わるときも同じことがありました」とルノー・ジャポン広報氏。また、最近のキャンプ人気の高まりも、カングーの人気を後押ししているかもしれない。さらに、数多く用意されたカングーの限定車も貢献しているといえるだろう。
2021年3月31日に欧州で世界初公開されたルノー新型「カングー」。全長4486mm×全幅1919mm×全高1838mm、ホイールベースは2716mmというボディサイズだ
* * *
PSAは魅力ある新型車が投入されたのが好調さの理由であったが、ルノーは新型車の「情報」だけで販売が伸びたというから驚くばかりだ。
情報だけでなく、本当の新型モデルが投入されれば、さらにルノーの販売も上向きになるはず。2021年もフランスブランドは期待できるのではないだろうか。
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